グジュル…ゴポォ…ジュウゥゥゥゥ… (…オイラは、何をやってきたんだ? いつの日にか敵討ちを果たすと意気込んで、 新しい出会いに、その後の目標も見えてきて…それで…) 胃液が無慈悲に体を焦がしていく、それと同時に自分の過去も何もかもが失われていく ような気分にさせられる。 ジュウゥゥゥ…! ジュブッジュブッ…!! …コツン… 「?!」 何かが頭にぶつかる、腫れ上がるような痛みの中でそれに目を向ける。 「……………」 「…どうしてだ、どうしてお前はこんなになってまで…! オイラに…!!」 (出会い…? それって私達のこと?!) 「もう…口を交わすことさえ叶わないような状態なのに…!! どうして…?!!」 (お願い…、私にもその手伝いをさせて…! 貴方を独りのままにしたくない…!) 「自分が寂しいのを我慢してるくせに、オイラのことばかり心配しやがって…!!」 (私は…、この三人の出会いを大切にしたい、この出会いは更に多くの人との出会いが 訪れそうな気がするから…) 『ダ カ ラ … オ キ ナ サ イ』 綺麗だった髪はバサバサに抜け落ち、体のあちこちが爛れても尚、ゴルダックに死ぬな、と 声にならない言葉を発するサンダース、それが最期の気力だったのか、ゆっくりと 瞳が落ちていく…。 「許さない…、この娘の幸せを奪う奴…、…俺から全てを奪う奴…!! 憎い…憎い憎い憎い憎いぃぃぃぃっ…!!!!」 ドクン!! ドクン!!! ドクン!!!! ビクッ!! ブルブルブルブル…! 「な、なんだ?! 急にアンノーンが震えだしたぞ?!」 スゥゥゥゥ… 「?! アンノーンが私への拘束を解き放った?! しかし、何故あのように震えて…」 ブブブブブ!! WARNING!! WARNING!! VORACIOUS BLACK SPOT OUTBREAK!! ドゴォォォォッ!! 「…ふんん…?!!! が、がばぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 突然フシギバナの腹が内側から強い衝撃を受けたかのような変形をする、 あまりの衝撃だったのか、フシギバナの瞳からは涙ではなく、血が流れ出し、 胃で起こる症状特有の吐血はどす黒く、彼の口から滝のように流れ出す、 そして、その中にはゴルダックとサンダースらしき人影が… 「さ、サンダース!! ゴルダック…!! 無事……?!」 言葉をなくしてしまう、それはサンダースの見るも無惨な姿を眼前にしたのもあるが、 血にまみれながらサンダースを背負うゴルダックの目は、昨日見た恐ろしい目など ただの睨みに思えてしまうほど狂気の瞳を血走らせていたことに…、 ただ見つめることしかできない。 スッ…ポコ…、ポコポコポコ…ジュウゥッ!! ゴルダックが片手で双剣をかざすと、地面から黒い斑点が音を立てて刃に浸透していき、 刃の部分が真っ黒に染まった双剣が赤いオーラを不気味に放っている。 「さぁ…食事の時間だ…」 フッ…ザシュッ!! 「ぎっ?!」 影のような霧に消えたゴルダック、次に視界に入ったのは横たわるフシギバナに刃を立てている時だった。 ボコボコボコボコ…!! ゴバァァァァッ!! ドプゥゥゥンッ!! 「ひ、ひいぃっ?! た、助けてくれぇぇぇぇぇ!!」 切り付けた瞬間、刃から先程の斑点が沸きあがり、一つの大きな黒点になってフシギバナに覆いかぶさる。 ゴキッ!! メキョッ!! ブシュッブシュッ!! ジュルルルル…! 「あごっ?! ぎひっ?!! ぉ…が……」 黒点が収縮するたびに骨の砕ける鈍い音と、噴出す体液を啜る嫌な音が響き渡る、 そして獲物が反応しなくなった時、黒点は手のひらに乗る大きさまで縮む。 (…この不気味な斑点は何なんだ?! そしてゴルダックのあの豹変ぶり…、 まさか、これがこの遺跡に隠されていた力なのか…?!) ウインディは地面に横たわらせているサンダースの介抱に向かいながらもゴルダックの 降りかかった狂気の出来事を必死に分析していた。 「サンダース…!! …くっ…、心臓が止まっている…! これでは…助けることが……!」 「…退け…」 「?!」 先程まで少し遠くにいたゴルダックはいつの間にか後ろに来ている、強引にウインディを手で払うと 体中から光を放ち、その光をサンダースに当て、傷を修復していく。 ヒィィィィィン……ブシッブシィッ!! 「?!」 光はサンダースを修復していくが、その代償のようにゴルダックの肩や腕、腹や足から血が噴き出す、 それでも痛みを訴えることなくその光を行使続けるゴルダック。 「止めるんだ!! 君が死んでしまう!!」 なんとかサンダースの前からゴルダックを引き剥がすウインディ、気がつくとゴルダックは血を流しながら 荒い息を上げ、舌打ち混じりにこう呟く。 「まだ…まだ足りない…、彼女を治すためには、もっと多くの血と肉が…」 そう言って手をかざすと先程の黒点がゴルダックの手に吸い込まれていく、 すると噴き出していた血が止まり、傷は塞がれていくがその傷のあった場所は 黒い影の刻印が刻まれ、瞳もどす黒く染まっていく…。 「ぅ…うぅ…ぁ…うあぁ…」 「?! サンダース…?」 傷が塞がり、目を覚ましたサンダースにウインディは少し希望を感じるが、 よく見ると、目は虚ろで焦点は定まっておらず、呻き声しか上げていない。 「…ゴルダック!! お前は、人形のようなこの娘を甦らせて、満足なのか?! これでは楽にさせてやったほうが…!!」 「……いずれ、バンギラスと合間見えることになる、奴の血肉を喰らえば、彼女の 怨嗟は晴れ、俺の復讐も成就する…、だから…その道を邪魔する者は 例えアンタだろうと食い殺してやる!!!」 信念にしていたものを全て棄て去り、救済のハンターは貪欲なる捕食者へと変貌する、 所持していたサンドパンの爪の欠片は禍々しい黒点の圧力に負け、粉々に砕け散ってしまう、 その狂気の波の誕生を、静かに双剣と彼に纏わり尽く残影が嘲笑うのだった……。 To Be Continue |
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