あれから主人は、ゴージャスボールをミロカロスに使い。
 そのままミロカロスはおとなしく、そのボールの中に納まった。
 無事だったのはブラッキーとエーフィ。そしてグレイシアとなったボクの3匹。

 ブースター。シャワーズ。サンダース…そしてリーフィアはもう戻ってこない。
 みんな、ミロカロスに食べられたまま…もう戻ってはこなかった。

 ボクは分かっているんだ。
 食べられたら、お腹の中で、溶けて。死んじゃうんだって事を。
 だからもうミロカロスのお腹のナカには誰も居ないんだ。
 みんなが食べられた時のあのお腹の膨らみも、今はもう無くなっている。
 エーフィもブラッキーも、なんであんなにも…平然としていられるのか分からない。


 ブラッキーが助かったのもご主人が体を張ってミロカロスのナカから引き抜きだしたおかげだったし。
 エーフィだって、ブラッキーの事が好きだって事ぐらいボクは分かっている。
 あのまま他のみんなと同じく消化されて死んじゃったりなんてしたら哀しんでいたはずだ。
 もしかするとご主人も、ミロカロスの体のナカから出られなくなっていたかもしれない。

 だけど、こうして一月が経ち。もはや、ミロカロスはボク達と一緒に旅をする仲間だった。
 ボク一人だけが文句を言える立場ではないにしろ、他のみんなを食べてしまったミロカロスと一緒に…
 みんなして楽しげに肩を並べて居られるのが…ボクには分からないんだ。


 エーフィは、姉さんはこう言っていた。
 ワタシも食べられたかったなぁ。
 ブラッキーも気持ち良さそうだったし。
 でもそのまんま消化されて死んじゃうのも嫌だし。
 どうしようもなく、人生に疲れて、死にたくなった時にでも頼もうかしら。

 ブラッキーも、また食べられたいとか。
 あんなめにあったのに、また同じようなめにあいたいらしい。
 ブースターもシャワーズも、サンダースにリーフィアも戻ってこなかったというのに。
 だけど、一番ミロカロスと仲が良さそうなのはブラッキーだった。
 暇さえあれば、あのミロカロスと一緒になって昼寝をしていて。
 体中ぬるぬるになって帰ってくるんだから大変だ。

 そしてブラッキーもエーフィもこう言っていた。
 もし自分達が旅の途中に死んじゃうような目にあっても。
 ミロカロスが食べてくれるなら。自分達はそれもいいなとか。
 ボクには全然わからなかった。そういう事を考えたことが無いから。


 マスターもミロカロスと二人っきりでどこかに出かけてしまう事も多くて。
 2度と戻ってこないんじゃないかと心配になる。
 恋人同志のように、イチャイチャと毎日を過ごし。腹を膨らませたミロカロスが帰ってくるから何をしているのか想像に難くない。
 ブラッキーもエーフィも、ミロカロスの事を気に入っているらしく。
 ボクだけが、のけものにされているような感じで寂しくなってくる。
 そう…ボクだけだった。
 あのミロカロスがどうしようもなく怖くて、みんなの輪に入っていけないんだ。

 もう駄目だ。こんな事では、自分の居場所がなくなってしまう。
 勇気を出して、こう言うべきなんだろうか。

 ミロカロスさんに、ボクも食べてください………と。
 でも、そのまま消化されるのは嫌だし。
 吐き出して貰えるように頼めるかな、ちゃんと生きて出られればいいな。
 どうなるんだろうな…ボク。

 やっぱり姉さんに相談するのが…そうだね。
 まずはそうするのが………

 そうしてボクは考えを終わらせたところで。
 ふと辺りが暗くなっている事に気づいた。

 あれ、夜には早いような。


 ―――ぴちゃり


 それはボクの頭の上に降ってきた。
 雨にしてはやけにねっとりと。それはまるで…

「ミロカロス……さん?」
 ボクは恐る恐る頭上を見上げた。

「話はエーフィから聞かせてもらったわ!」
「ちょっと…ま―――」
 あまりに突然の出来事にボクは何もできなかった。
 一方的に舐めまわせて、お尻の方から咥えこまれ。
 ただただボクは…姉さん…助けてー……と頭の中で叫んでいた。

 

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