ある晴れた日。
オレはいつものように喉の渇きを癒しに水場へと向かう。
いつもの様な。変わらない日々。
気の向くままな毎日を過ごし。なんら変わらぬ毎日が続く。

偶に気に入らないハブネークの奴が偶に襲い掛かってくるが
面と向かって相手をすれば特に脅威でもない相手だし
そいつが持っている毒というのもどうやらオレには効かないらしい。

一体何をしたいのか。
ソイツはオレを執拗に狙ってくる訳だが。
恨みを買った覚えも無ければ、特にオレの方もそういう類の感情は一切無い。
ただ、アイツを見ると妙な昂りを得て。
叩き潰してやりたいという衝動に駆られるのだ。

正直後腐れ無くヤってしまおうかと思いもしたが。
別にソイツを食いたい訳でもなく
ある程度ぶちのめしてやれば尻尾を巻いて逃げやがるものだから
特に追ってまでどうにかしてやるつもりも起きない訳だ。

それに此方にとっては良い暇つぶし。
思う存分、叩きのめせる奴が居るというのもなんとも良いものだ。

ふと、アイツはオレ事をどう思っているんだろうか。
何度も何度もぼろぼろに負けては逃げ帰り、懲りずにそのうちまたやってくる。

アイツはオレをどうしたいのか。
もしオレが負けたとしたらアイツはオレどうしたいのか。
例えば逆の立場になったところでアイツはオレを逃がすのだろうか。

単にオレに勝ちたいだけなのか。
オレを食べるつもりで襲ってくるのか。
後者なら。オレは要するに食い殺される訳だな。

………

うつらうつらと…
そんな事を考えていたら眠くなって来た。

正直不意でもうたれない限り負ける気はしないんだ。
水場へ向かうのは軽く昼寝してからでも良いだろう。

眠気をそのままにしておくのが一番危険なのだから。
不要な思考を取り払い、手ごろな木に背を預け、浅く睡眠を取り始める。

………

ふと。気配を感じる。
視界の端から黒いモノが横切った。
アイツか。

思えば、そろそろ会う頃合かなと思っていたが。
此方に気づく事もなくソレは水場にしている泉の方へと向かっていく。

なんだ、つまらん。
軽く寝起きの運動にでも付き合ってもらおうかと思ったんだがな。

………

そう考えると再び眠気が襲ってくる。
もう暫く眠ろうかとも思ったが、これ以上眠ると今度は深く寝入りすぎてしまうかもしれない。

偶には、此方からアイツと遊んで貰いに行くのも良いだろう。
そしてオレは水場へと向かい始める。


   *   *   *


いつもと変わらぬ水場。
特に変わらず、ただ広く。綺麗で。日が暮れる頃なんかは特に良い景色が見られる場所。
だが何かがおかしかった。


誰も居ない。
アイツも居ない。
何かがおかしかった。



……
………
一体今日はどうしたのだろうか。

ポチエナ一匹の姿すらも見えない。
何か嫌な予感がするものの、特に何の危機感も感じない。

そもそも、アイツの姿すら無いのがおかしい。
ここまで来ておいて何の音沙汰も無いのが分からない。

が、考えていても仕方がない。
ここへ来たのは水を飲むためだ。
ただ…水を飲みに来ただけだ。
アイツの事なんて別にどうだって…

…いつもどおり。
手に水を救い顔に浴びる。
冷たく、気持ちよく、肌にピリっと…

いつもと変わらず。
いつもと変わ………った感じがした。
いつもと何かが違う。

何かが違う。
知っている感覚。

ふと…黒いモノが傍に浮いていた。
否…浮き上がってきた。
オレはコレを知っている。
アイツが武器の一つとしてオレに振るってきたその尻尾。


違うのは…その先が無かった。
いや、これがその先っぽの方だった。
オレはそれを拾い上げ良く見定めてみる。

噛み千切られたのか。
力任せに千切られたのか。
判断は出来なかったが。

もし、これがアイツのモノだったとしたら。
この泉で何が起こったのか。
何かが住みついているのか。
今の今までこんなコトは無かった。

ギャラドスか?…違う。
アイツはオレはともかくハブネークに喧嘩を売るようなヤツでは無い筈だ。
ハブネークはオレ以外の相手には滅法強かった筈。

アリゲイツか、それともオーダイルか?
そんな奴はこの泉では見た事が無い。
なんだかキモイのなら居たような気がしないでもないが。
余所者が入り込むような余地はそんなに無い筈だ。

そもそも、あのハブネークがそう簡単に負けるのだろうか。
その気になれば火だって噴けるような奴だったから相手がハガネタイプだろうがヤれる奴だった。
半端な奴があいてなら逆に食ってしまいそうな奴なんだが。

もし、オレの想像もつかないような相手がこの泉に潜んでいるとしたら。
オレの身も危ないのでは?

だが、逆にそう考えれば考えるほどにオレはそいつが見てみたくなった。
そうしてやや毒の混じった泉の水で渇きを癒し。
ハブネークのモノだろう、尻尾を手に取り立ち上がる。
こんなモノ一つで泉は汚れないだろうが。
折角だ。

コイツは夕飯だな―――

 

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