何処にあるのか分からない森の中……
その森の中を弱々しく歩いている一匹の生き物がいた。
何故かフラフラとあっちに行ったり、こっちに行ったりと
見ている方も危なっかしいぐらいで、このままだと……

「キャウッ!」

案の定、木の根に足を引っかけて、
ビックリしたような悲鳴をあげながら転んでしまった。
さらに、そのままコロコロと転がっていく……


ゴーン!!!!


大きな木に頭からぶつかって、いい音を奏でた。

「ハニュ!! ……いったーい。」

目から火花を散らすような衝撃に悲痛な声を漏らす。
痛みのせいで、目からウルウルと涙が浮いているのが分かる。
しばらく手で頭を押さえていると……


キュルルルル!


可愛い音を立てて、倒れている生き物の腹の鳴き声がなった。
ちょっと顔を赤くなると、キョロキョロと周りを見渡して、
スクッと立ち上がろうとするが、フニャと再びその場に座り込んでしまった。

「はふ……頭も痛いけど。
 お腹も空きすぎてもう……動けないよ……」

実のところ彼は迷子になっていた……
広いこの森を一週間もさまよっている内に
手持ちの木の実も食べ尽くしてしまい、今日で3日……何も食べていなかった。

「はれー……なんだか周りがグニャグニャになってきたー」

空腹の限界を超えてしまったのか……
彼の目には、周りの風景がグニャグニャとゆがんで見え始めていた。
それに伴って、頭も左右にフラフラと動きだし……

「もう〜 ……だめ……だ。」

その言葉を最後に彼の意識は闇に飲まれ……途絶えてしまった。


ガサガサ


意識を失って倒れている彼のそばの草藪が不自然に揺れた。

「誰か……そこにいるの……?」

不安そうに震える声と一緒に、小さな女の子が草藪から頭をのぞかせた。
この辺の森はこの女の子の遊び場で、
今日も一人で遊んでいるときに大きな音に気が付いて、
怖い物見たさに音の正体を突き止めようとやって来たのだった。

誰も答えない森の中で、女の子は不安そうにキョロキョロ……

「あっ! あの子は!」

倒れている彼を見つけ、急いで駆け寄った。
心配そうに見つめる女の子……
彼の口にてを当てると……かすかに呼吸をしているのを確かめると、
安心したのかホッと手を胸に当てて軽く深呼吸をする。

だが、直ぐに彼を抱きかかえると……ちょっと重さに負けてふらつくが、

「もう、大丈夫よ。 君は私が助けるから」

そう言って、女の子は少しふらつきながらも自分の村に急いで帰っていった。






……数時間後

彼が目を覚ますと、自分が何か暖かい物に包まれていることに気が付いた。
この暖かさが気持ちよくてトローンとした目で、
周りをゆっくりと見渡していくと、目の前に自分を心配そうに見つめている女の子の姿が見えた。

「君は……誰なの……」
「ああ……気が付いたのね! 良かった……
 ずっと目を覚まさないから……もう駄目なのかと思っちゃって……」

目を覚ました彼を見て、女の子が手を顔に当てて小さく顔をうずめた。
彼の顔に何かがポタポタと数滴当たる……

なんだろと彼は上を見上げと……
女の子のその小さな手から水がポロポロとこぼれ落ちていて、

「ねえ……どうしたの? 何で泣いてるの……」
「……なんでもないのよ。 ただ嬉しかったから……」

女の子は笑顔で涙をぬぐい、その笑みを彼に向けた。

「……ありがとう。」

仲間から鈍感とよく言われていた彼でも……
ここまでくればこの女の子が、自分を助けてくれた事に気が付いていた。
……彼は、その笑顔の女の子に何かお礼をしたかった……
でも、彼は何もあげる物がなかった……だから、今の彼に出来ることをする。


ペロ……


女の子の体によじ登り……
頬に残っている涙が流れた後を小さな舌で優しく舐めた。

「きゃっ! くすっぐたい。 んも〜」
「あっ……ごめんなさい。 でも、僕には……こんな事しか出来ないから。」
「いいのよ。 ……ありがとう、嬉しいわ。」

シュンとしょげかえった彼の様子に慌てて元気づける女の子。
お返しとばかりに彼のフワフワとした毛皮の生えた首筋を優しく撫でると、
それがとっても気持ちよいのか、彼はふわ〜と欠伸をしてウトウトしだした。


キュルルルル!


再び彼のお腹が可愛く音をたてた。
あの時以上にボッと顔が赤くなっていくのを感じて、キュウっと体を縮めて小さくなる。 

そんな彼を見て女の子は……クスッと含み笑いをした。

「ふふふ、お腹が空いていたのね。 はい、これあげる。」
「いいの……ありがとうお姉ちゃん……」

何処に閉まっていたのか、木の実を取り出して彼に差し出す。
受け取った木の実と女の子をすまなさそうに交互に見て、一言お礼を言った後……
カプッと小さな口で、ちょっと大きめな木の実を囓った。
口に含んだ果肉から甘酸っぱい味が口いっぱいに広がっていく。

「おいしい。 ……これ美味しいよ。」
「そう。 気に入ってくれて嬉しいわ。」

笑顔で微笑む女の子にお礼を言うのも忘れて、彼は夢中で木の実を食べる。
シャクシャクと一生懸命に木の実を食べている彼を楽しそうに見つめる女の子。

「ご馳走様……ふわー……なんだかもう……眠い……」
「いいのよ……お休みなさい。 ……ねぇ、私達……もう友達だよね?」

眠そうに欠伸をして彼は女の子の腕の中でうずくまり、
……眠そうに目をショボショボさせる。
そんな彼に微笑んで……でも、どこか寂しそうな表情で問いかける。

「……うん。 当たり前……だよ。 お姉……ちゃ……」
「……ありがとう。 私……君のこと大好きだよ。」

今にも閉じてしまいそうになっている彼の目に写る女の子の表情は
……今日の中で一番嬉しそうだった。
そして、自分も女の子に微笑み返して、再び眠りの世界に旅立っていった。

気持ちよく眠っているのを起こさないように彼を毛布の上に下ろす。
それから、懐から赤い輪っかを取り出して眠っている彼のそばに並べた。

「気に入ってくれるかな? 私のプレゼント……」

喜ぶ彼の姿を想像して、女の子は少し照れたように笑みを浮かべる。

……その時、女の子の家の戸口がドンドンと大きな音を立てながら叩かれた。
ハッと不安そうに顔を上げる女の子……眠っている彼を見下ろし……

「絶対……私が守るから。」

女の子の言葉の真意はいったい……

そして、時が過ぎていった。

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