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草の根かきわけてV − 旧・小説投稿所A

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草の根かきわけてV
− 仲間 −
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 穴倉の外に、二匹のオオカミがいた。一匹は整った容姿の雌狼、もう一匹はあどけない顔をしたオオカミだ。ルンバとビンバの会話をこっそり聞いていたようだ。

 「なかなか感動的じゃないですか、親友同士の再会ですよ?」

 「不思議な縁もあったもんね。ちょっと羨ましいわ」

 ルンバが入った群れのオオカミのボスと、その一員のルウだ。



 ルウは真顔になって、独り言をつぶやく。

 「私ね、あなたにはどうしても帰ってきてほしかった。あなたはそれを望んではいなかったけど、自分の心に嘘はつけなかったの。ごめんね、私のわがままにつき合わせちゃって。今度こそ、絶対に幸せにするから」





 「そういやよ、ビンバ」

 「ん? なんだい?」

 「お前、ルウを知っているのか?」

 記憶の中に浮かんだ光景。俺とビンバの後ろで泣いていたオオカミはルウだった。だけど、そうだとしたら話が合わない。どうしてあの日、ビンバは逃げたんだ? 知り合いなら逃げる必要は無いじゃないか。

 それに、ルウは今も俺を全く知らない風に接してきている。

 「ああ、知ってる」

 そうなのか・・・・・世の中狭いもんだな。結局、二匹とも知り合いだったのか。

 「ルンバがオオカミになった日、どうしてあの場所へ行ったのか覚えているかい?」

 「ああ、覚えているぜ。俺が誘っちまったんだよな」

 そこでルウにやられたんだよな・・・

 「俺がその前の日に危険だって教えてあげたのに」

 「うう・・・すまねぇ」

 そういう事ははっきり言ってくれよ。

 「俺な、実はルウに頼まれていたんだ。お前を取り戻すために、裏裏森へ連れて来いって」

 「な、何!?」

 ルウがそんな事を。一体なんだってんだ。

 「俺は断った。お前と今更分かれるだなんて、無理だから」

 「ビンバ、お前・・・」

 そうか、そうだったのか。

 「ルウが待っている方向へ行かなようにお前についていったんだけど、ルウは俺達の匂いを嗅ぎつけてしまったみたいだった」

 今までバラバラに分かれていた点と点が繋がって、一本の線になっていく。





 鹿のビンバ、オオカミの俺。

 お互いに憧れて、その夢は叶った。

 だけどビンバはオオカミとして暮らすことができず、俺は鹿として暮らせたけどルウを泣かせちまった。

 ビンバは鹿に戻って、俺はルウに呼ばれる。

 ビンバは止めたけど、俺は勝手に行っちまった。





 どれもこれも繋がった。記憶は戻らねえが、繋がった。

 「ビンバ、済まねえな」

 「どうして謝るんだよ?」

 そうやって、お前はきょとんととぼけやがるんだ。

 「せっかく止めてくれたのに、俺が勝手な行動をしたせいで」

 「なーに、気にすんなよ。今日ルンバにこうして会えただけで充分。怪我の手当てをしてくれたし、これで貸し借りなしさ」

 馬鹿言いやがって。お前には借りばっかりで、もう返せねえよ。だが・・・

 お前がそう言うなら、喜んで借りを踏み倒させてもらおうか?

 俺はにやりと笑う。

 「ああ、俺も充分さ」





 辺りはすっかり暗く夜がやってきた。二匹で月でも拝みたい気分が、あいにくの空模様だ。

 「ルンバはまだ帰らなくてもいいのか?」

 「別にガキじゃねえんだから、心配にはおよばねえよ。それに、怪我しているお前を放っておくわけにはいかねえだろ?」

 動けない時に俺以外のオオカミに見つかってもまずいしな。俺だって、怪我している獲物がいれば喜んで噛み殺すしよ。

 「それにしても、あのルウってオオカミ大丈夫なのかい?」

 「ん? どういう事だ?」

 いや、大丈夫・・・ではないような気もするけどよ。

 「だってよ、いくらそれしか方法が無いからってお前を狩ってしまおうとする奴だ。ちょっと過激すぎやしないか?」

 「た、確かにな」

 あの日の目は明らかに本気だった。この世の怖いものランキングでもかなり上位に入るはずだなありゃ。

 「俺も何度か話したけど、やっぱり怖い」

 「俺を狩った時も、嬉々としてたしな。あいつは絶対に性格歪んでいやがる」

 色々構ってくれるのは嬉しいんだけどよ、やっぱりあいつは苦手なんだ。



 「性格が歪んでいて悪かったわね」

 !?

 「「ル、ルウ!!!」」

 二匹同時に大声で叫んだ。

 「お、お前いつからそこに」

 「お昼過ぎからずっといましたよ」

 おいおいボスまで。盗み聞きだなんてあんまりいい趣味じゃねえぜ?

 ルウはというと・・・ああ、笑顔が眩しいぜ。

 「そうねぇ。あなたが勝手に鹿になっちゃって寂しかったの。ちょっとした仕返しよ? それに、美味しそうだったしね」

 やばい。これはやばい。本能がそう叫んでやがる。冷や汗が止まらねえ。

 「はぁ・・・ルンバ君、ご愁傷様です」



 「ル・ン・バあああああああああああああああああああああ!!!」





 「ひええええええええええ!」

 「好き勝手いって! 許さないんだから!」



 ルンバはルウに追いかけられていった。残された二匹も苦笑いだ。

 「相変わらずですね、あの二匹は」

 「昔からああだったのかい?」

 「ええ」

 ボスは思う。また、昔のように仲良くなれればいいと。

 「ルンバは、幸せにやれているのか?」

 ビンバは一番不安だった事を聞く。

 「幸せかどうかは分かりません。ルンバ君自身が決める事です。しかし、あなたの二の舞には私がさせませんのでご安心を」



 ビンバは渋い顔をする。彼がオオカミになった時には、群れの中に受け入れてくれる者は誰もいなかった。結局冬を越せなかったのだ。



 「ルンバ君は元々狩りは誰よりも上手でしたから、後は気持ちの問題だけだったんです。今は狩りに対して抵抗が無くなっただけ昔よりも状況はいいですから」

 この間の狩りでの必死さを思い出したのか、くすりと笑う。

 「最初は裏切り者だと敵意を持っていた仲間たちも、ルンバ君を受け入れてくれました」

 「ずいぶんと優しいんだね。俺の時とは大違いだ」

 ビンバは少しふてくされる。

 「ルンバ君は僕達の仲間ですよ? あなたとは違いますから」

 ボスは少しむきになって言った。



 「ルンバ君の傍にいてくれた事、感謝しますよ」

 「俺がいく方向にいつもあいつがいただけさ」

 ビンバはおかしそうに笑う。

 「感謝するなら、鹿狩りを止めてくれ」

 「ダメです。僕は鹿肉が大好きなので」

 おどけて言ったビンバに、ボスは即答する。

 「あの絶妙な肉の厚みがたまらないんですよ。油がこう、良い具合に乗っていましてね」

 「いや、そんな事熱弁しなくていいよ!」

 ビンバからすれば洒落にならない。自分の肉の味を誉められても、嬉しくなる者はいない。

 「そうでしたね。ごめんなさい。まっ、特別扱いはあなただけって事ですよ」

 ボスはぺロっと舌を出す。





 不釣り合いな者達の出会い、奇妙な関係。それがどんな運命を紡ぎ出すのか。

 今日も夜は更ける、明日の一日を迎えるために。





少し捕食少なめだったかも。

本編としてはこれで一応の最終回ですが、これからも番外編として小話を書いていこうかと思っています。

「ルンバ」の名前の由来は分かった人もいるかも知れませんね(笑)
<2013/03/06 14:59 ぶちマーブル模様>
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