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草の根かきわけてU − 旧・小説投稿所A

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草の根かきわけてU
− 命の輪 −
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 淀んだ風。いつもとは違う、張りつめた空気。一匹のリスは本能的に危険を察知した。

 どんぐりを拾うのに夢中になっていたのか、いつのまにか仲間の姿が見当たらなくなっている。

 この森で、一匹でいるのは自殺行為だ。ここ最近で今まではいなかったはずの肉食動物が姿を現すようになっていたからだ。

 早く仲間の元へ。そう思った矢先の事だ。



 「グルルルルルル!」



 恐ろしい唸り声と共に、視界が180度回転した。訳も分からずに下へ落ちていくリス。その先の運命は、とても話すに堪えない。

 もしもあなたに続きを聞く勇気があるのならば・・・・・







(この先、消化描写および被食者を痛めつける描写があります。)







 「ぐえっ」



 地面に叩きつけられたリスはうめき声をあげる。それから間髪を入れずに、後ろから次の衝撃が襲いかかった。



 「んっ・・・」



 恐る恐る目を開けると、そこは真っ暗闇だった。訳も分からずに辺りをきょろきょろと見回すリス。すると、頭上から生温かくねばねばとした不快な液体が落ちてきた。



 ここにきてリスはようやく理解した。

 自分は、捕食されたのだと。



 「ひいっ!」



 捕食者の舌がまとわりつき、身動きが取れない。そしてそれは、焦らす様にじわじわと体に唾液を塗りつけていく。

 味を楽しんでいるのだろうか? 口のなかをごろごろとリスが転がされていく。

 リスにとってはたまったものではない。必死に出口へ向かって進もうとするが、いくらか進んで希望がわいてきた頃にまた舌で押し戻されてしまう。

 それでも、リスは必死だ。死にたくない。その一心だけで、歩みを進めた。

 しかし

 小さな望みが叶う事はなかった。





 リスが疲れ果て、動きがにぶくなった時を狙って舌がまたしても動き出した。これまでの横へ転がしていく動きとは違い、喉の奥へと引きずり込む動きだ。



 「やだ・・・やだ・・・止めて・・・」



 リスは必死に助けを乞うが、無論肉食獣が聞き入れるはずもない。いや、そもそも聞こえなかったのかも知れない。それほどにまでリスの存在はちっぽけなものだった。



 「い・・・や・・・」



 ゴクリ



 妙に静かな世界に、その音だけが生々しく響いた。





 暑く、全身を圧迫されるような空間をリスは地獄へ向かって落ちていく。もう二度と昇る事はないであろう。

 やがて幾分開けた場所へたどりついたリスは、締め付けられてできなかった息をしようと大きく周りの空気を吸い込むが



 「げほっ、げほっ」



 淀み強い酸の匂いがする空気にむせかえり、それは叶わなかった。

 涙を流すリスは獲物、ただの食物。胃袋へ落ちた食物にもはや光明はない。



 「ひゃっ・・・痛い!」



 ジュワリと湧き出てきた胃液が降り掛かると、リスは悲鳴を上げた。

 リスの柔らかい皮膚に穴が空き、その傷口に悶える暇もなく次の胃液によって傷は広がって行く。

 リスは再び逃げ出そうと試みるが、ここはもう肉食獣の腹の中。出口なんてどこにもありはしない。脱出するにはドロドロに消化されて、腸に送られる他なかった。



 「うわ・・・あああ・・・あ・・・あ・・・・・」



 胃液はリスの体くらいならば簡単に溶かしてしまう事ができるらしい。体全体がほぐされ、崩れやすくなっていく。それらがリスに激痛を与える。リスはなす術無く、吸収されやすい形へ変化するしかなかった。



 「う・・・うぐ・・・」



 すでに半分ほど消化され、胃液にも溶けたリスの体が混じり始めていた。例え今救い出されたとしても、命を取り留める事は不可能だろう。

 時間が経過するにつれて痛みが広がっていく事に、そしてその後に待っている死にリスは怯える。その恐怖も、すぐに激痛にかき消された。





 リスはもはや原型を留めてはいない。気持ちの悪いドロドロとした半固体の肉塊となっていた。すうっと目の前が暗くなる感覚を覚えると、激しい断末魔と共にリスは短い生涯を最悪の形で終える事となった。



 ついさっきまで動いていたリスだったものは、肉食獣の栄養となり血肉となるだろう。

 それでも、リスが苦しみ抜き命を落として与えたものは、数日ばかりだけ捕食者が生き延びる術に過ぎなかった。





<2013/02/16 12:26 ぶちマーブル模様>消しゴム
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