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稲光と氷雪 − 旧・小説投稿所A

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稲光と氷雪

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「ユーリィ」
「あ……約束だったね」

小一時間が過ぎた頃にユーリィが目を覚ました。
数秒置いてカヅチがベッドの下方よりぬっ、と現れた。
項から触手を展開し、既に構えていた。
未だにはっきりと覚醒していない意識の中、一時間前のやり取りを思い出す。
そうであった事が脳裏に過ると、ユーリィは溜息をつき上体を起こした。

「あんまり取らないでよ? 動けなくなるんだから……」
「ククッ、それはどうかなぁ?」

邪な笑みを表情一杯に浮べ、触手がユーリィの右腕を掴んだ。

「っぁ……」

パリッ、と静電気が走った際によく似た破裂音が部屋に谺する。
それに連動するようにカヅチの体毛が逆立ち始める。
ユーリィから奪っている生体電気がカヅチの体内に餌として蓄積され、体毛同士が帯電
反発している為だった。
活性化するカヅチに対し、ユーリィは……

「やっぱり、お前の電気は格別に美味い♪」

痛覚に反応した表情のまま、顔が固まりベッドに伏したまま呻き声を上げていた。
人が体を動かす際の命令の伝達は電気を用いている。
その電気をカヅチは好き好んで補食するのだ。
体を動かそうにも、表情を変えようにも。
そうする意思はあっても体、筋肉への命令が伝達されない。
道のない所を車がどうやって奔る? それと同じである。

「そだ、”お前”も一緒に喰ってもいいか?」
「ぁ……っ……ア」

恐らく”ダメだ”と答えたいのだろうが、それは叶わない。
当の本人もその事を知った上で問いかけたのだろう。
にたにた、と満面の笑みを浮かべて舌舐めずりまでしていた。

「そこまでにしておきなさい、カヅチ」
「もう少しだけ喰わせてくれ」
「忘れたの? 私達は彼に無理を言って一緒にいるんだから」

リオートの言い分は正しい。
ユーリィを気に入ったのはあくまでこちら側。
それに加え多忙という理由で断られたのだが、無理を通したのだ。
”あまり面倒を看れないよ?”と言う約束まであるのだ。

「っ……お前だって腹減ってるだろ?」
「勿論。だからってユーリィの熱はあまり貰いたくない。それに、カヅチの後なんて……下手したらユーリィが死んでしまう」

あまり過激に電気を喰らうような事さえしなければ、カヅチの電気捕食では人を殺すのは難しい。
しかし、リオートの生体熱捕食は簡単に生物を殺せる。
生命活動を停止するまで熱を奪えば良いだけなのだから。
まして、空腹だからと言いたった今からユーリィの熱を補食すれば
体温を下げられて、身動きが出来ないのだから雪山で遭難するようなものだ。
「でも、俺らのお陰でこいつだってー」
「”だって”じゃない。それ以上、補食するなら……貴方の”熱”を貰う!」

リオートが半歩下がり、前半身を低く構えた。
喉を鳴らし、牙を剥き、紫の眼から殺気を滾らせ、捕食者のオーラを放出する。

「……分かった」

パチン……シュルルル……

右腕を掴む双方の触手が外れ、項に収納されていく。
ベッドから少し離れるとふて腐れた様子で丸くなり、何も離さなくなった。
リオートは軽快に飛び上がり、ベッドに音もなく着地するとユーリィと目を合わせた。
ユーリィの右手首には出血こそしていないものの、6カ所に穴があいていた。
触手の鉤爪。ここから体内に侵入し電気を奪うのだ。

「ごめんなさいね、ユーリィ。無理させちゃって……大丈夫?」
「……ぅ……ん」

個人差があるが、比較的ユーリィは電気捕食の後の回復が早かった。
大きな動きは出来ないが、喋ったり、頷く程度の動きはすぐにできるようになる。
上手く呂律の廻らない状態で返事を返し、頷いた。

「無理させたくないから、触れないけど……看病してあげる」
「ありがと……」
「ユーリィ!?」

ユーリィはリオートに微笑むとその首に左手を絡ませた。
リオートが慌てた様子で迅速にその腕を振りほどき、首を横に振った。

「ダメ……ユーリィが死んでしまう」
「……明日はリオートの番だからね……覚えておいてよ?」

まるで病床の人間かのような言動でリオートに喋りかける。
リオートは密かに願う。
せめて、カヅチのように自らの意思で捕食を行う事が出来ればと。
触れるだけで命を奪うような事が無くなればいいとー



<2012/10/02 19:28 セイル>消しゴム
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