楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル
光を広げる輝き − 旧・小説投稿所A

RSS | 感想 | TOP
光を広げる輝き

|<< < 3 / 6 >>|

「――っ! 染みる……」

「ちょっと我慢してね」

消毒液を浸した綿を傷口に当てながら、イーブイは優しく語りかけた。
なんだか、いつにもなくイーブイがお兄さんのように見える。

「また旨そうな奴を拾ってきたなイーブイは」

「しっ! イーブイが怒るぞ」

何気ないバンギラスを、バクフーンがなだめている。
こちらも兄弟に見えなくもない。仲は最悪なのが玉に傷だが。

「はい、おしまい。そういえば名前を聞いてなかったね」

「……ゾロア」

「助けられておいて、そんな態度かよ」

いつまでも顔を伏せたままの狐に痺れを切らしたのか、バンギラスがそう言った。

「バンギラス、そう言わないで。きっと緊張してるんだよ」

イーブイの言葉に、バンギラスはつまらなさそうに鼻息をあげる。

「ゾロア、だっけ。なんであそこに倒れていたんだ?」

「別に。ただ激しく転んだだけだよ」

ぶっきらぼうに言われると少し頭にくる。
見た目はイーブイと似ているが、性格は真反対だなとバクフーンは思った。

「とりあえず、しばらくはここにいなよ。他に仲間はいないの?」

その質問を聞くや、ゾロアはうつむいてしまった。

「なんだ、一匹狼か?」

「ククク」と笑うバンギラスにイーブイは鋭い視線を向けた。

イーブイも、バクフーンに見つけてもらえなかったら今のイーブイはいないだろう。
だからこそ、ゾロアの気持ちが分かるのかもしれない。

「大丈夫。なんなら一緒に暮らせばいいし」

「おっ、いいね。楽しみがひとつ増え――」

「バンギラス!」

「そのへんにしとけバンギラス。あまりイーブイをおちょくるな」

「うっ……」

二人からの挟撃にあったバンギラスは、ばつがわるそうな顔をして外に出ていってしまった。

「あいつはあんなやつだけどさ、別に悪いやつじゃないからな」

「バクフーンが言っても説得力ない」

クスクスと笑いながらイーブイが言うと、バクフーンは照れくさそうに頭を掻いた。








月が夜空のちょうど真ん中についた真夜中。
綺麗な満月が森を照らすその様子を、ゾロアは見ていた。

なんだか今日は眠れない。
そう思っていたのは、どうやらゾロアだけではなかったようだ。

「なんだ、お前もか」

不意にかけられた声に、方をびくりとすくませて後ろを振り向けば、そこにはバンギラスがいた。

「まぁそんなに堅くなるな。俺もなんか寝れなくてな」

よっこらせとゾロアの隣に腰を下ろし、ため息をつく。

「……綺麗な月だな」

黙ったままなのも何なので、とりあえずそんなことを言ってみる。
あまり話が得意ではないバンギラスには上出来だろう。

「……月は、苦手なんだ」

「ん?」

ずっと黙ったままのゾロアが初めてバンギラスに口を開いた。
驚きのあまり聞き直してしまったバンギラス。

「普段見えないものまで見えちゃう気がして」

「……。分かるかもしれないな」

「え?」

「オレも小さい頃はよく思ったもんだ、邪魔な光だなって」

自分の手のひらを見つめながらバンギラスは言った。
月の光を受けて、鋭い爪が鈍く光っていた。

「自分が嫌になるんだよな。本当の自分に気づくとさ」

昔の記憶を思いだすかのように静かに語るバンギラスを、ゾロアは黙って聞いていた。

「だから、お前が月が嫌いなのは分かるかもしれない」

「オイラは……」

ゾロアは、何かを言おうとして口を紡いだ。

「無理して言わなくてもいい。……今日のことは後ろのやつには内緒だな」

二人が振り返ると、イーブイとバクフーンがお互い寄り添って眠っていた。
まったく羨ましい限りだ。

「くぁ……。なんか話してたら眠くなってきた。お前も早く寝ろよ?」

あくびで目を滲ませながらバンギラスが立ち上がる。

「あ、待って……」

「何だ?」

もじもじしながらゾロアは上目遣いでバンギラスを見上げる。

「その、今日はありがとう。それで、あの……その、よかったら、一緒に寝てくれないかな。ちょっと怖くて」

「……いっとくが、あまり寝心地はよくないと思うぞ。オレ、バクフーンと違って硬いし」

「ぷっ、なにそれ」

「あ、笑ったな」

恥ずかしげに爪で頬を引っ掻くバンギラス。
こんな気持ちにさせたのはこいつが初めてかもしれない。

「まぁ、お前がそうしたいなら嫌とは言わない。ついてきな」

バンギラスがそう言うと、ゾロアはぱあっと顔を明るくして駆け出した。

バンギラスの寝床は洞穴の上にある。イーブイに頼んで作ってもらったのだ。

散らかった藁を集め直して横になると、それに寄り添うようにしてゾロアも横になった。

(まさかオレにもこんなことをしてくれるやつがいたとはな)

いつもは少し肌寒い夜も、今日は暖かい。
それは体だけではなかった。


バンギラスの腕枕www
<2012/10/04 22:04 ミカ>
消しゴム
|<< < 3 / 6 >>|

TOP | 感想 | RSS
まろやか投稿小説すまーと Ver1.00b