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偽りの日 − 旧・小説投稿所A
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偽りの日
− No.3 −
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僕はその柔らかい物腰に、不思議と恐怖は消え去ってしまった。

僕が見たもの、それは…

大型トラックほどはありそうな、巨大な白狼がうずくまっていた。
ふわっとした純白の体毛が身体を覆い、僕を見下ろす目は、透き通るようなエメラルドグリーンの色をしていた。
時折尻尾がゆらゆらと、退屈そうに揺らされる。


『…何かボクの身体に付いてるの?』

白狼が自分の身体を見回しながら、そう言った。
僕はずいぶんと白狼の身体を舐めまわすように見ていたようだ、結構失礼な事をしてしまった。

僕は立ち上がって、目の前の白狼に謝る。

『ん…いいよいいよ、そんなに堅苦しくしなくても』

案外あっさりとした性格なのかもしれない、僕はそう思った。



ふと、僕は名前が気になった、聞こうかどうか迷っていると…

『…ボクの名前はエイプリルだよ』


なるほど…そう言えば今日は4月1日だったっけ…

僕はそう思いながらも、とりあえず自己紹介を済ませた。

エイプリルが言うには


ここは夢の中の世界で、普通は入ってくる事は出来ないらしい。
エイプリル自身が人を引き寄せるか、もしくは人自身が深い眠りのままになると、この世界にトリップするのだとか。
一度入ってしまうと、出るにはエイプリルがその人を喰わなくてはならない。
もし、このまま夢の中だと、現実ではそのまま死んでしまう。
『嘘だよ』

エイプリルは嗤いながら言った。

『死ぬ事は無いけど、年とかを取らない、その人だけ、時間が止まった状態になるんだ』

それはそれで怖い、僕はそう思った。


僕の顔に、エイプリルの鼻先が近づけられた、吐息が僕の身体に吹き付けられ、独特な獣臭さが漂った。

『さて…君もこんな所はすぐに帰りたいでしょ?』

僕は頷く。

『じゃあ…すぐに噛み砕いてあげるからね』

相当痛いだろうが…夢を覚ませる事が出来るのなら…
『嘘だよ』

エイプリルはまたも嗤いながら言った、どうやら口癖らしい。

僕は嫌そうな顔をしながらエイプリルを睨んだ。

『痛くないようにしてあげるから大丈夫だよ…』

慌ててエイプリルはそう言う。


僕は納得し、身体をエイプリルに預ける事にした。


<2012/04/01 01:19 ラギア>消しゴム
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