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狼と狐のち日常 − 旧・小説投稿所A

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狼と狐のち日常

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擦れ違い様に右手首を取られ、フラウと目が合う。
その青い筈の頬はほんのり赤くなり、目は真剣そのもの。
断る理由はないだろう。
「ゆっくり浸かりたいんじゃないの?」
「あ、いえ……我儘言って申し訳ありません……」
「ごめん、ごめん。僕でいいなら」
「あ……有り難う御座います……」
恥ずかしそうに俯いて小さく答えてくれた。
フラウは身を翻し、僕を引っ張る。
露天風呂まではそう距離はない。
無言のまま、歩を進める。
彼女の表情は分からないまま。
そのまま、僕と一緒に湯船に浸かる。
「フラウ……体は大丈夫なの?」
「いつも通りです。ご心配には及びません」
普遍の解答。表情一つ崩さずに言葉が返ってくる。
やはり、予想したままだった。
こういう面で、フラウはかなり頑固だ。
一回環境の変化に耐えれず、体調を崩した時があった。
その時も激しく咳き込みながらも、’大丈夫です’の一点張りだった。
流石にその時はベッドに縛り付けるかの勢いでどうにか言い包めたけど。
皆ともようやく分かり合えてきたんだから、そういう所は素直になって欲しいな。
「……無理はしないで、ちゃんと言ってね?」
「はい……肝に銘じておきます」
一問一答。フラウはそれが多く、それ以上を語ろうとはしない。
ヘルパーとして想像以上の仕事ぶりだが、知らない事は多い。
「ボク……あ、私は////」
「ボク?」
「ななな何でもありませんっ!」
聴き間違いがなければ確かにフラウは’ボク’と言って
私と言い直した筈……
それに言葉は調子はいたって普通……
と言う事はあっちの世界ではそれが普通だったのでは?
追求しようとすると、かなり狼狽した様子で
頬までを湯船に沈めてしまう。
……聴かない事にしよう。



<2012/03/19 01:46 セイル>消しゴム
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