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狼と狐のち日常 − 旧・小説投稿所A

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狼と狐のち日常

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「あっ、よっ、ま、待て〜」
白い塊がやや下りを下っていくボールを追いかける。
「あんまり下ると危ないぞ〜!」
「待て〜」
「あの子はいつも元気ですね……」
今日は雲一つない快晴。
フラウと一緒に庭に出て、一息。
珍しく、砂羽はソルに監禁されていない。
久しぶりに構ってやろうと言う事でボール。
初めて見るものに好奇心を剥き出しに追っかけて初めて現状。
砂羽は物心ついたころからモンスターの研究所にいて
ずっと研究に勤しみ、外出はした事なかったんだって。
そこでソルに出会い飼われる事になったらしい。
こっちの世界に来てからは広い別世界に驚愕のあまりで
頭がついていかず、気絶してしまった。
「待て待てっ〜!」
下り坂を転がっていくボールを生き生きと追いかけているようだ。
10とは思えない程の幼さと好奇心。
体は10でも、まだまだ心は幼いようだ。
「あれ? 何処行った?」
と、過去を思い出しているうちに砂羽を見失ってしまう。
ここの下りは砂羽には少々きつい。
帰ってこられない可能性が出てくる。
慌てて、腰を上げ探索に向かおうとする。
それを感じたフラウも同様の反応をするが……
「東雲、ちゃんと見張っとけ……ったく」
ボールをしっかり両手に収めた砂羽の服の襟を
咥え、面倒くさそうな表情を浮かべていた。
「あ、ありがとう、ソル」
「けっ、礼を言われる筋合いはねぇ」
……本当は嬉しいんだな。
砂羽を僕に放り投げ、身を翻す。
僕は砂羽を優しくキャッチする。
「東雲兄さん……ごめんなさい……」
「いいよ、無事だったんだから。あとでソルに礼言っておくよ」
「うん……お願いします」
僕の胸の中で悄気る砂羽。
優しく微笑んで頭に手を添えてやる。
言葉だけ見れば歳の若さを感じさせない。
小さく、膂力もないことを除けばフラウに近いものがある。
しかし、中身は繊細で非常に脆い。
そんな幼さを感じさせる。
「世界は広いんですね……」
「それは私も思います……」
「二人してどうしたの?」
砂羽は僕を見上げ、フラウは僕を見つめる。
「私は前マスターを失ってから旅をしていましたので、ある程度世界を知っていると自負していました」
「ボクはずっと研究所で過ごしてたから、自然ってこんな凄いものだって知らなかった」
正直、僕もそう思っていた。
少なくとも2人よりはこの世界を知っていると思う。
しかし、案外知っている世界と言うものは誰もが狭い。
まだ知らない文化、種族、地域。
どんな世界があるのは知らない。
勿論、それら全てを知る必要はない。
「世界は広いよね……本当にびっくりだよ」
2人から見れば先生にも近い僕の台詞に目を丸くしていた。



<2012/03/20 19:15 セイル>消しゴム
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