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人を呪わば穴二つ − 旧・小説投稿所A

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人を呪わば穴二つ

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眼下に広がる巨大な湖。
人々はその湖を「ミズーリ」と名付けた。

湖の周りは大きな木々に囲まれており、風があまり吹かないこの場所では、水面が波打つこと事態が珍しい。

そんな、まるで凍っているかのように微動だにしなかった水面がいきなり暴れだした。

どうやら、誰かが湖に飛び込んだようだ。
いや、正確には飛び込まされたと言うべきだろうか。

「――っ! やめ……ガボッ!」

「へへっ、何だって?」

ケラケラと三匹の小さな生き物たちが笑いながら、同じく小さな生き物を水の中へと沈めていた。

誰がどう見てもいじめにしか見えない光景だ。
バチャバチャと静かなこの場所で、品のない音が響く。

しかし、そんなことなどどうでもよかった。
ただひたすらに水中から顔を出そうと必死に暴れるその生き物は、イーブイと呼ばれるポケモンだった。

「おい、やめてやれよ。ホントに死んじまうぜ?」
言葉事態は至って普通だが、当の本人はニヤニヤと笑っている。

「うるせぇなヨーギラス。今良いとこなんだよ」

「でも彼の言う通りよ。死なれたら、こっちが困るから。ラッタ、いい加減にしたら?」

気品のあるような、それでいて裏のある声の主、サニーゴはそう耳打ちをした。

「……まぁ、サニーちゃんがそこまで言うなら」

力を入れていた腕をイーブイの頭の上から離す。
待っていたとばかりに、ザバッと勢いよく顔を出すイーブイ。

ありったけの空気を貪り、ゲホゲホと咳き込む。
綺麗な茶色と首周りの真っ白な毛並みは、水でずぶ濡れになっていた。

「助かってよかったな、サニーちゃんに感謝するんだな」

「別に助けようと思った訳じゃないし」

「……早くずらかろうぜ。面倒なことはごめんだ」

ヨーギラスがそう言うと、三匹は頷いてスタスタと歩いていってしまった。

イーブイは相変わらずむせながら陸地に足を引っ掻けて、湖から這い出た。

「ハァ……ハァ。寒いよぉ」

ブルブルと震えながら、イーブイは自らの家を目指してゆっくりと歩きだしたのだった。


<2012/02/10 18:05 ミカ>消しゴム
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