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バベルの塔 − 旧・小説投稿所A

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バベルの塔
− 箱庭の住人、踊る −
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「…先ほど社長警備の者から連絡が……レ、レヴァ社長が暗殺され
たそうです…」

「ほう…そいつは好都合だな。次期トップの座は、必然的に副社長
の私となるワケだ」

「お、おめでとうございます…」

「フフ…どうも」


ワインを片手に微笑んでいるのは、ブース=ジャイロ。
バイオリック本社の、最高幹部No.2として畏れられた人物だ。
しかし社長であるレヴァが殺された今では、失脚した彼の後釜、
すなわち、新社長としてその名を掲げることとなった。

彼がたった今座っている席も、社員なら誰もが夢見るフカフカ
の社長椅子だった。



「し…新社長。あの…社内に現在、危険ウィルスが蔓延しておりまして…」

「ウィルス? ああ….昨日からうちを騒がせているアレか。その作用
は分かっているのか?」

「は、はい。コンピュータウィルスなのですが、どうも社員や人工竜
にも影響があるようでして….数名が発狂、窓から飛び降りました…..」

「…伝染するのか?」

「ええ….調査報告によれば、汚染物に触れただけで感染すると…」

「…ほう、ならばやる事は一つだな。
おい、この社長室、副社長室、幹部室へと続く廊下を全て封鎖しろ!
下級社員は誰一人として、上層部に近づけるな」

「え…ええっ!!?」


秘書が驚きを隠せないのも無理はない。
上層部へと繋がっている廊下や階段を全て塞ぐということは、
500名以上が働いている一般社員の階と隔離する、ということ
だ。つまりそれは……



「み、見捨てるのですか!!? ここの…ほとんどの社員を…」

「おいおい君、人聞きの悪いことを言わんでくれ。ウィルスを送られ
た以上、犠牲は最小限に抑えなければならない。幹部クラス以上は君
も含めて全員助かるのだから、文句はなかろう?」


保身を考えるあまり、常軌を逸した命令だ。



「し…しかしワクチンを作れば….」

「はぁ…君も分からん男だな。ワクチンをこれから精製するとなれ
ば大赤字。時間も金ももったいないではないか。新社長として初の
年度を、赤字で終わらせたくはないのでね」









「…それに、君はもう胸に付けているじゃないか。奇跡のワクチンを」

「し、しかしこれは….幹部クラス以下には与えられておらず….」


ブースは勿論、この秘書の胸にも付いている金色の星型のバッジ。
実はこれ、ウィルスと名の付いたものを一切跳ね除け、装着
者の身を守る、取り付け型のワクチンなのだ。社内
を騒がせ
ているバビロンの自信作ウィルスでさえ、この
星の前で
は意味をなさない。

ブースが余裕の表情で指揮を取っているのは、万能の盾を身に
付けている、そういった安心感からなのかもしれない。



「『星』ひとつにつき、億単位という金で海外から特注したのだ。
それを努力している上層部の者にならまだしも、まだまだ未熟な
下級社員にまで与えろと?ハハ…寝言は寝て言いたまえ」


ブースは「星」がキラッと煌めいている胸ポケットから、高級葉巻
を取り出した。絶対的な安心感、優越感に浸りながら、ハァァと煙
を吹かす。



「はっきり言おうか? 構わんよ、何人死者が出ようとも。
たとえ幹部級に満たない者が全滅したとしても、社は何度
でも立て直せる。ウィルスを殺すワクチンは、そのうち低
予算で作ればいい」

「は…はぁ……」

「フフ….まあそう悲しい溜め息をつくな。一週間もすれば、マスコ
ミが堂々と報じてくれるだろう。『バイオリック社、サイバー攻
撃から奇跡の復活!』とな」


大衆は情報に流されて、考えがコロコロと変わる。
その代わり、窮地をくぐり抜け、見事復活を遂げたものに
は良いイメージを持つ。ブースはこの危機を、逆にイメー
ジアップに利用しようと考えていた。



「フハハ…倒れんよ我が社は。永遠にまわり続ける…独楽のようにな」





ーーーーーーーーー




「ほう…これはすごい」


透明化、幽霊化のメモリを駆使して、何とか社内への侵入を果たし
たバビロン。一応、空気に紛れて姿は消しているものの、目の前の
光景には流石の彼も圧巻された。



ーー自分からエレベーターのドアに挟まれにいく男。
ーー陽気にヘラヘラと笑いながら、七階の窓から飛び降りるOL社員。
ーー狂気に満ちた眼で、次々に社員を呑み込んでいる白い人工竜達。


バビロンは自分が開発したウィルスの効果を、たった今目の当た
りにしている。廊下という廊下が、クレイジーなオーラに包ま
れていた。


「フフ…これはまた壮絶じゃないか….」


何より自分よりずっと高性能な人工竜たちが、奇々怪々に暴れ
まわっているのが面白い。その中の一匹が、虚ろな眼をして飛
び掛かってきた。バビロンは間髪いれずに、そのちょっと膨
らみ気味のお腹にパンチを喰らわす。


「ぐ…グフぉ…!!!」

「騒がず寝てるんだな、69号」


腕に『69』の番号が振られた人工竜は、泡を吹きながらドサッと
バビロンの前に倒れた。改めて自分の右肩を見てみると、そこに
はかなり掠れた『3』の番号が。



「…フフ…何が3号だって? 私はお前達とは違う。
自分で考え…行動できる」


実は人工竜(バビロンシリーズ)には1〜3号までのテストモデルと、
4号以降の実用モデルがあるのだ。

バビロンはその中の3号、しかし1号と2号は死滅したため、現存
している唯一の試作機となる。




「さぁて….解体作業、始めますか」


ウィルスの宝庫となった廊下を駆け抜けて、既に閉鎖されたであろ
う上層階へと向かう。しかしその動きがブースやその秘書、幹部ク
ラスの社員には筒抜けであることを、バビロンは計算していなかった。





<2011/10/14 22:03 ロンギヌス>消しゴム
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