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バベルの塔 − 旧・小説投稿所A

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バベルの塔
− 砕ける玉のように −
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まだ最後の仕事が残っていた。40階のVIPルームに、気絶したロンギヌスを放置したままだ。
間一髪で助けてくれたカイオーガに礼を言い、疲弊しきった翼をはばたかせる。体力も限界を迎えようとしていた。
しかし、出来るだけ急ぐ必要があった。
会長が鬱憤を晴らすために、ロンギヌスを射殺する可能性がある。
どれだけ疲れ果てようとも、それだけは絶対に避けなければならない。

ヒュウッ….!!!

割れたガラス窓の横にまで上昇すると、巣に戻るツバメのように部屋に飛びこんだ。とっさに気圧から解放されるのを感じる。
VIPルームでは、しまった、という表情のウォリアが、ロンギヌスの額に銃を向けた状態で固まっていた。
どうやら予想は的中していたらしい。


…ヴヴンッ…!!

爪先に搭載された小型のレーザーで、ウォリアの銃を持った右手を狙撃する。
肌に風穴を開けられた痛みにうめき、ウォリアは銃を取り落とした。
バビロンを憤怒の形相で睨みつけた後、叫ぶ。


「な…何をボサッとしておる!!! 殺せ、殺せ、殺せぇ!!!!」


ヤケクソじみた命令だったが、バビロンは一歩後ずさった。
先ほどラファエルを突き落とした5人組が、揃って銃をこちらに向けている。
正直、全員の相手をする気力も体力も無かった。
そもそもラファエルですら敵わなかったのだから、取り押さえられるのも時間の問題だった。

・・・・その時。



ーーーバビロンさん!!!!

聴き覚えのある声が、重厚な木製のドアの向こうで響いた。
次の瞬間、鼓膜を破るような轟音とともに、ドアは粉々に吹き飛ぶ。
モクモクと立ち込める爆煙の中、ラティオス、ギラティナ、ルギアが姿を現した。
社員らの銃口の向きが、一斉にそちらへ切り替わる。


「だ、誰だ…!!」
「今すぐ、手を頭の後ろへ持っていけ!!! さもないと…」

「あらら….今日だけで6回は聞きましたね、その台詞」


ラティオスは呑気に呟いた。頬には銃弾が掠めたような傷を作っている。
ギラティナは普段と異なった形態で、プカプカと巨体を宙に浮かせていた。
見間違いかもしれないが、目がグリーンに煌めいた気がする。彼の瞳は赤色だったはずだ。

しかし、バビロンが掌握できたのはそこまでだった。
なぜ面識もないルギアを、ラティオスが引き連れているのだろうか。
その疑問は解決することなく、ラティオスの鋭い声が飛んできた。


「……バビロンさん、これは貸しですよ!!」

「…!! ああ…..」


彼らの登場によって戦況は急転直下、バビロンへと傾いた。
人数では差があるものの、個々の戦闘力の高さがそれを物語っていた。
5人いたはずの社員の内、二人はラティオスにあっさり首をへし折られ、残る三人はギラティナとルギアの腹の膨らみとなって消えた。



「フフッ…ギラティナ、何人目だ?」

「….七人目。最初の二人ぐらいはもういないかもねぇ…♪」

中は満員御礼であろう胃の辺りを床に押し付け、ギラティナは冷笑を浮かべた。
明らかにいつものギラティナとは何かが違う。まるで別のゴーストに取り憑かれたかのようだ。


「さぁ….残るは……」

「グッ……ば、馬鹿な……」

ウォリアは悪態を漏らすと、貪欲に濁った目でラティオスを睨む。
この数十分で、彼が失ったものは計り知れない。
メモリーキューブを筆頭に、財産、権力、社員...
側近のラファエルに関しては、あろうことか自らの手で落とし前を付けてしまった。
せめて突き落とすのを思い留まっていれば、彼が最後の砦になったかもしれないのに。


「……最後は貴方の番ですよ。元・会長さん。
八つ裂きと三枚に下ろされるのと…どちらが好みですか?」

「黙れ……!!!」


ウォリアは出口がひとつしか無いことも忘れ、彼に背を向けて逃走を図った。
しかし踵を返して立ち上がった瞬間、背後に立ち尽くしていたバビロンの腹部に衝突する。
獲物が掛かった、というような表情で、バビロンは彼を両腕で抱きしめた。
無論、それは愛のスキンシップなどではない。


「……ラティオス、マスターを頼む。先に地上に降りてろ」

「え、でも……」

「心配は不要だ。こいつは私の手で罰してやる」


不敵にそう告げられ、ラティオスはやれやれと肩をすくめた。
意識のないロンギヌスを抱きかかえ、全壊して使い物にならなくなった扉から出ていく。ギラティナとルギアも、すかさず後に続いた。

二人きりとなったVIPルームに、三度目の沈黙が訪れた。





「…私も早く帰りたいんでね。さっさと終わらせようじゃないか」

バビロンが天井に頭を擦らせて言った。
その姿を見上げるようにして、ウォリアは茫然自失としていた。
ぴちゃぴちゃと降ってきた涎を額に受けても、それを拭き取ろうとする動きさえない。

「フフ……頭と足、どっちからが良い?」

「ふ、ふざけるな!!!」

現実を拒む子供のようにウォリアは怒号を飛ばした。
身体をくねらせて逃げ出そうとするが、竜とヒトでは力の差は歴然だった。
たださっきまで100匹を超えるコラッタを宿していたバビロンの腹部が、彼の顔を覆うように押し付けられる。
散々バビロンを苦しめたコラッタの大群は、既に肉厚な彼の胃壁に埋もれ、天に昇っていた。


「うぶぁ……ぐぉ…ぅ…」

「フフ……今になって思えば、なかなか美味かった。
もっと頂けるならそうしたいが、ただどういう訳か今は人肉を味わいたい気分でねぇ……」


5回連続の大富豪ともなれば、心理戦と同時に体力勝負でもある。
そんな修羅場を越えてきたバビロンにとって、目の前に佇むかよわい老人など、一端の『獲物』でしかない。

粘着質な涎を降らせながら、バビロンは乾いた血の跡が付いた口元を近づけた。
疲労と興奮に息を荒げ、ウォリアの年老いた肩まですっぽりと咥える。
彼のくぐもった呻き声が、儚く部屋の空気を震わせた。


「すぐに呑み込んでもらえる…なんて期待しちゃいないだろうな。
私が言うのも何だが、嘘つきにはそれなりの罰が下るものだ」

「ぶっ……ぼ、ぼぉ…!!」

その「罰」が何であるかを、ウォリアは顔面をもって痛感した。重厚かつ悪臭に満ちた舌を顔に押さえつけられ、苦悶の雄叫びを舌に向かって吐き出す。
老衰しきった五感には、まるで拷問のような刑だった。
さらに獲物の存在を感じた舌の表明かドプドプと唾液が溢れ、ウォリアを窒息へと手招く。

「ん……むぅぅぉ…ぅ…ンンぅ……!!」

「ほう、流石はかの『有名だった』バイオリック社の『会長だった』男だ。頑張れ頑張れ」

『だった』を強調した彼の言い方にイラッときたのか、ウォリアは視界を覆い尽くす舌に、入れ歯で全力で噛みついた。
だがそれも、所詮はもろい老人の顎だった。


「フフ……それでは早速」

「ぐ…やめろ、やめんか……!!」

ウォリアの懸命な抵抗は、残念ながらその存在すら気づかれることは無かった。
バビロンは顔を天井に向けると、彼の老体を持ち上げて真っ逆さまに落とした。
肉質が窮屈そうに唸っている喉に、首から上はもちろん、肩や胸回りまでがずっぽりと呑み込まれる。
そのまま重力に逆らうことなく、ウォリアの四肢はついに見えなくなった。


===========


「何故こんなことになるかって? さぁ……私も知りたいところだな」

「き、貴様っ……むグゥ…出せ、さもないと…!!」

「フフ、貴方の権力欲にも困ったもんだ。時と場所をわきまえて物を言うのが、健全なる社会のマナーだと思わないか?」

相手を体内という絶対的な監獄に収めたせいか、バビロン口調はやけに爽やかだった。
反対に、時間に比例してウォリアの罵倒の声は薄れていった。
バビロンの腹が膨らんだ頃には、ゼェゼェという喘ぐような息遣いだけが胃壁を叩く。


「……安心しろ、今日はもう誰も死なせない。勿論、どこかの元気な成金の爺さんも含めて、な」

「な、ならばなぜこんな…ッ……だ、出せ、死んでしまう…!!」

「ほう、それは大変だな」

バビロンは眉を吊り上げて笑った。明らかに、ウォリアの反応を楽しんでいる様子だ。
胃袋内の猛烈な腐臭に顔を歪めながら、ウォリアは叫んだ。


「こ、これで夢が叶ったなどと思うでない!! 貴様のような下衆……またいつでも捕らえてや…」

「フフ…その下衆の親が誰だか分かっているのか?
まあ、私に復讐心を燃やすのは大いに結構だ。ただ、ひとつ訂正させてもらおう」

「て、訂正……?」

「いつかなんて、そんな曖昧な日付設定はご免だ。いっそのこと….今すぐでいい。
これから私とお前で、また別のギャンブルをしよう。種目はお前の好きな大富豪でも、麻雀でも、ポーカーでも何でもいい。

私が負けたら土下座どころじゃない、この命が果てるまで、バイオリック社の再建のための奴隷になってやる。お望みなら、ポケモンリーグにスパイとして潜り込んでやってもいい。
だが万が一、何かの間違いで私が勝ってしまった暁には……」








「……お前の葬式に、遺骨が残ると思うな」

「い、いこt……」

「いいや、骨どころじゃない。霊魂は食事としてギラティナに引き渡してやる。
魂を冥土に送ることなく吸収できたら、さぞかし奴もご満悦だろうさ」

返す言葉もないまま、ウォリアは小刻みに身を震わせていた。
筋一本まで食い尽くされた自分の末路を思い浮かべた途端に、顔がカイオーガ並に青ざめる。



「し……ぃ……」

「何だって?」

「し、しない……」

「ククッ….ならここに誓え。今後一切、バイオリック社のような会社を建てることはしない、と。
ついでに言うなら、社内に保有している全ての人工竜も解放して戴こうか」

「…分かっ……た…」

「結構」

バビロンは牙を見せて微笑んだ。
菓子を手にした子供のような満足顔で、こんもりと膨らんだ腹を撫でる。
それを受けてか、ウォリアに張り付いていた胃壁が波打つように蠢きだした。
弱々しく枯れた彼の肌を、胃粘液を織り交ぜながらじっくりと揉みほぐす。

「命は助けてやるが……フフ、ある程度は遊ばせてもらおうか。折角の機会を無駄にするのも勿体ないんでねぇ…フフ……」

「ギッ……が、ガハッ!! ぐぅッ…ハ…!!」

ウォリアにしてみれば、まさに地獄の釜の底で煮られるのと同等の苦痛だった。
生肉が溶けたような悪臭を放つ胃壁が、もこもこと膨らんで密着してくる。
おまけに粘液とのダブル攻撃で、より一層体力を蝕まれていく。

ニュチュ……プゥ…ぬちゅぅ……

揉みほぐされるうちに、次第に上下の感覚は薄れていった。
肉壁を押そうが蹴ろうが、そのあまりに執拗な動きは収まるところを知らない。
まるでメビウスの輪の上を、際限なく走らされているような感覚だった。


「フフ……さぁて次だが…」

「・・・・・・・」

「……何だ、気絶してやがる。マスターでも数十分は耐えるんだがな」

異臭と、眠気を誘うような肉質マッサージに耐えかね、とうとうウォリアの意識は飛んでいった。
バビロンはつまらなさそうに、天井を仰いで大きく伸びをする。
こんもり膨れ上がった腹がわずかに揺れた。





ごめんなさいorz 新作と同時進行なんで大幅に遅れてしまいましたw
毎度毎度閲覧ありがとうございますo(^▽^)o
<2012/02/15 23:46 ロンギヌス>
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