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カードに溺れろ 〜Dead or Money〜 − 旧・小説投稿所A

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カードに溺れろ 〜Dead or Money〜
− 名残 −
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「ば…馬鹿げてる….こんな、ありえない…!!」

「あ? お前ルールを聞いてなかったのか?
1/5の確率で、この状況はありえるんだぜ」


ゾロアークの赤い口元が、ニヤっと勝利の笑みに曲がる。
テーブルの上に置かれた【皇帝】の向かい側には、エンペ
ルトを嘲笑うかのように、彼の【奴隷】が叩きつけられていた。


「私が…ま、負けた….のか…」

「フフ….権力に溺れるだけの皇帝じゃ、失う
物が何もない奴隷には勝てねーよ」


待ってましたと言わんばかりにエンペルトを拘束する係員。
せっかく獲得した財産も全て奪い取られ、エンペルトは四つ
のドアの前に立たされた。


「さあ選べ。制限時間は五秒だ」

「死ねと…喰われろというのか、皇帝に」

「貴様は皇帝などではない。金の魅力に取り憑
かれた、ただのペンギンだ」


負けた自分がますます惨めに見えてくる言葉を吐かれ、
エンペルトは俯いた。カーペットの鮮やかな模様を睨みつ
けながら、じわっと眼に涙を浮かべる。

そして金のクラブが彫り込まれたドアに手を掛ける。



「私の….馬鹿野郎……………」


バタンッ!!









==================



「今ドアが閉まる音が聞こえたね〜? あのペン
ギンさんも負けちゃったのかな」

「随分と余裕じゃないか….状況は理解しているのか?」

「知ってるさ。しっかりとね」


自分より何倍も大きなバビロンを見上げ、ジラーチはク
スリと微笑んでいた。これから彼の胃袋行きとなる運命な
どはどこ吹く風。恐怖というオーラが、彼からは微塵も出
ていなかった。





「…いったい誰だ、お前」

「政府直属バイオリック工業社、本部第一諜報
部員。エクセロン=ジラーチ」


警察手帳のような物を取り出し、身分を見せつけるジラーチ。
そこにはバビロンの肩に刻まれた印と同じ….バイオリック社
のロゴマークが描いてあった。



「今さら何をしに来た。帰還命令でも出たのか?」

「フフ…君みたいな試作機、もう必要ないよ。
本部は君よりもずっと優秀な人工竜を、とっくに開発してるしね」

「…ほう、そりゃありがたい」


ゲームの処刑人としてではない。かつての仲間として、バビ
ロンは牙を剥いた。しかしそれでも、ジラーチは平静を崩さ
ない。


「じゃあ何が狙いだ。この旧式をとっ捕まえる気か?」

「とっ捕まえるも何も、社を裏切った君とはもう無縁だよ。
僕は社長から、その後の様子を調べてこいって言われただけ」


無縁・・・・バビロンには願ってもない事だった。よう
やく手に入れた「居場所」を、親と呼びたくもない親に
奪われる気はない。だがバイオリック社に育てられた過
去は、肉体の至る所に記されていた。



ーーー『BABYLON TEST TYPE 03』(バビロン テスト三号機)
ーーー『MADE BY BIORICK COMPANY』(バイオリック社製)



「生物ですらない….人形か、私は」

「そっ♪ 生きてるふりをしてる、ただの機械だよ」


流石の彼もイラッときたのか、右腕にバチバチと電流がほと
ばしる。ポケモン技の10万ボルトを、右手を突き出して走
らせた。ジラーチの頭上を通りすぎたそれは、コンクリート
の壁に焼け焦げ穴をつくる。


「お〜こわいこわい。旧式でも威力は抜群だね」

「だろう? ジラーチだって焼けるぞ」

「そりゃすごい♪」


今度は左腕を、メラメラと燃え盛る炎が包み込んだ。バビ
ロンは床を蹴って前に跳び出すと、ジラーチを狙って鉄拳
を喰らわせた。しかしジラーチは遊戯を楽しむかのように、
ひょいとそれを避ける。


「おいおい…本部のエリートさんが逃げてばかりでいいのか?」

「いやァー、本社の戦闘員を倒した君の力が見てみたくってねぇ…」

「それで罰ゲームを逃れるつもりか?」

「逃れるだなんてとんでもない! 喰いたいん
なら早速どうぞ? 丸呑みでも噛み潰してくれ
てもOKだよ?」


これは予想外だった。ジラーチは両手を広げ、ふわふわと
自分の目の前まで寄ってきたのだ。今すぐ、喰ってくだ
さいと言わんばかりに・・・いや既に言っているが。



「…うっ……」

「ねーぇ? 早く食べてよぉ〜」


ジラーチは笑みを絶やさずバビロンの腕に抱きついた。彼の
肩から手の甲にまで走っている白いラインを、ゾゾゾッと撫
で上げるように舐める。


「はーやーく〜♪」

「・・・・・」


食欲が、一瞬にして波のように引いていった。いや、む
しろ恐怖を感じているのは、バビロンの方かもしれない。
自分の方が圧倒的に有利な上に、相手は食われる覚悟ま
でできているのに・・






「・・・・帰れ」

「えっ…?」

「逃がしてやるから早く本部に戻れ。社長には適当に伝えるんだな」


ピシャッと言いつけられ、戸惑いを隠せないジラーチ。今度
は彼にとって計算外だったようだ。


「ぼくを逃がしちゃっていいの? 始末すれば社長に
一泡吹かせられるのに」

「フフ…吹かせたいのか? いいから出ていけ。そこの扉
から外に出られる」


バビロンの指さした先には、ゴルダックの出ようとしていた
扉があった。裏口に通じているらしい。



「ふぅーん…っじゃあお言葉に甘えて♪」


もちろん遠慮などする訳はない。ジラーチは背後を気にも
しない様子で、るんるんと鼻歌交じりにドアを開けた。
振り向きざま、「じゃあね」とウィンクすると、扉はギ
チギチ唸りながら閉まった。





「臆病者は….どこまで行っても臆病者か…」





<2011/08/19 19:38 ロンギヌス>消しゴム
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