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【保】易すぎる依頼 − 旧・小説投稿所A
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【保】易すぎる依頼

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「……なんなんだよ、これ!聞いてねぇぞ!!くそっ…あの野郎、ガセネタ掴ませやがったか!」

グルルッ……ジュルッ

「っ…やめろ、来るな……こっちに来るな!だ、誰か…助けて!誰か!!助け」


バクッ
























「…よし、これで完了、と」

「今日もこなしてきたのか。相変わらず働き者だな」

「そうでないとやってけないからな。んで、報酬は?」

どこにでもありそうな酒場のカウンターで狼獣人が酒場の主人らしき獅子獣人とカウンター越しに話をしてる。
狼獣人が「報酬」という言葉と同時に手を差し出す。それを見た獅子獣人はカウンターの下から小さな袋を出してきた。
それを差し出された手に乗せると、ジャラッという人が喜びそうな音がする。

「しっかり頂いたぜ。しかしマスターも大変だろ?こんなに多くの依頼を管理してるんだから」

「そうでもないぞ。金を狙ってくる輩もいると思ったりもしたが、案外そうもなくて、慣れてしまえば楽だ。スクル、お前と同じさ」

「俺がしてるのは簡単なことばかりだから、慣れるも何もないよ」

スクルと呼ばれた狼獣人が苦笑しながら手にある小袋を軽く上に投げる。受け止めるとまたジャラリと音がする。
この狼獣人…もといスクルは、賞金稼ぎ。日々いろいろな依頼を受け、それをこなして賞金を得てる。
しかしその賞金のほとんどは日常生活に費やすだけの生活費に過ぎない。実際受けてる依頼も内容自体は簡単なものが多い。
理由としては「生活するためにやってるから」。普通にどこかに勤めるという手もあるが、ここでは賞金稼ぎの方がいろいろと都合が良い。
様々な依頼が日々出てくるため仕事が尽きることもなく、ある程度の力があれば収入は安定する…と言えるだろう。

「それはそうと、何か良い話はないのか?」

「お前の言う良い話は幅が広いくせに厳しかったりするからな。とりあえずいくつか選んでみたぞ」

苦笑しながらも依頼書を数枚奥から取り出し、カウンターの上に並べる。
内容に目を軽く通すと、言った通り簡単なものばかり。大体は一般人にとっては特別なものや、人探しなど賞金稼ぎであれば誰にでも出来るような
依頼ばかりだ。
だからこそ俺は目をつけてるんだ。賞金稼ぎとしてレベルが低い奴は必然的にそういう依頼を選ぶが、ほとんどの賞金稼ぎはもっと難しいものを選ぶ。
そうなると依頼は早い者勝ち。数も少なくなってまともに依頼を受けられるかすら危うい。けれど、そうなればなるほど簡単なものを選ぶ
奴は少なくなる。最低限の金を稼ぐだけの俺としては依頼をゆっくりと吟味して、悠々とそれをこなせるってわけだ。
そんなこんなで次の依頼を探してる訳だが…今度はどんな依頼にするかなぁ。

「……そういえば、知ってるか?最近賞金稼ぎの間で噂になってる話を」

「ん?噂?俺はそういうのに興味ないから知らないが…何かあったのか?」

不意に話しかけられたので依頼書から目を離し、マスターへと向ける。
依頼をたくさん受け持つ場所あって、賞金稼ぎもたくさん集まるから情報も必然と耳に入るそうだ。

「詳しく聞いたわけではないから詳細は知らんが…なんでもここ最近、有名な賞金稼ぎの消息がわからなくなってるそうだ」

「それってつまり…賞金稼ぎが行方不明になってるってことか?」

「あぁ、そういうことだ。その話もあって依頼にも消えた身内の賞金稼ぎを探してくれという依頼もある」

「んで、その依頼はどうなったんだ?」

「受けた者はいたが、結局見つからず…それどころか、依頼を受けた者すら消えてしまったんだ」

「そいつは奇怪だな…と言っても、俺なんかに縁はないだろう。こんなちっぽけな依頼しかしない俺が有名なわけないし」

適当に聞き流すようにしてまた依頼書に目を落とす。
別に他の賞金稼ぎが消えたところで俺の依頼がどうこうってなるわけでもない。そいつらを探すわけでもない。
つまり生活に支障がないわけで…特に気にする必要もないんだよな。それはそうと依頼がどれも微妙だ…。

「そんなこと言ってると、案外バックリと消えるかもしれないぞ」

「おいおい冗談はよしてくれよ。こんな無名の俺なんか消して意味なんてあるのか?第一、なんで賞金稼ぎが消えてるのかすらわかってないんだろ?」

「私も耳に挟んだだけだから本当に詳しくは知らないんだ。と言っても事実…ここに来る常連の賞金稼ぎも少なからず名の知れてる者が来なくなってるのは私だけでなく、他の者も把握している。故に独自で探す者もいるようだから、いずれ情報が入り次第動きも変わるだろ」

「そうなればいいな…。とりあえず今日は引き上げるかな。依頼が微妙だし、また明日出直して来るよ」

カウンターの席を立ち、軽く手を振って別れの挨拶をしてから店の外で出ようと足を向ける。
そのまま店を出ようとしたところで、マスターから声がかかってきた。

「もう時間も遅いし、気をつけろよ?どんな形で消えてるかもわからないんだ、夜道で1人歩いてるところを…かもしれないぞ」

「はいはい、気をつけるよ。俺だってこんなことしてるけど、それなりに戦う力はあるんだから心配すんなよ」

軽く聞き流して店を出る。これでも一応賞金稼ぎだぜ?そこらのモンスターだって余裕で倒せるぐらいは出来るってんだ。
よほど馬鹿でかい奴でないと俺も怖気つかないさ。なーんて言っても、そんな機会すらあるはずないんだけどな。
時間もそれなりに遅くなってるから夜道は危ないけど、こんなとこで死んだりしないだろ。
もし仮にそうなったとしても、それが例の噂と関係あるならとっくの通りに判明してるっての。あるわけないって。
その日は気楽な気持ちで帰路につき、無事家に帰った。




「………そういえば、あいつに話し忘れていたが、少し気になる話を聞いたな…‥」



<2011/07/06 22:44 ヴェラル>消しゴム
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