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【保】ヤマタノオロチ − 旧・小説投稿所A

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【保】ヤマタノオロチ

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「……あの本……」


「あれはこの町に住んでいた者が持っていたようだ。と言っても、誰が持っていたのかは知らないが」


口調が変わってる。まるで今まで演技をしていて、それを取りやめたように。
それに心なしか、声も違う。同じ声であるけど、その声に込められたものが、明らかに違う。
僕は嫌な予感しか、いや…予感なんて遅い、もう実感しているんだ。体全体で、目の前にいる『恐怖』を…。


「本の中身は、この町で起こったある出来事について書かれていたんです。昔の話ですがね。
 いつの話かは忘れましたが、ここに襲撃者が来たのです」


「襲撃者…?」


「その者は町を襲うと、辺りを瞬く間に惨劇へと変えました。本の所持者はそんな中で書き綴っていたようです。
 しかし…時間が経てば当然人はいなくなる。襲撃者に襲われたんですからね。運が良いのか悪いのか、最後に残ったのが本の所持者。
 本を読んだ君も覚えてるでしょ?本の中間辺りに書いてあった文章を」


中間に書いてあった…そこは確か「自分は森を走ってる」という内容が書かれていたページのことだろう。
本のはっきりとした内容はあのページが最後。つまりはそれが最後のメッセージでもあったのかも。
町から離れて逃げた所持者は森の中に逃げ込み、尚も逃げ続けた。しかし襲撃者はそれを逃さず追い、最終的には…。
所持者がどうなったのかは、文面からはわからない。ただ言えることは、無事で済まなかったと言うことだ。
…ある程度は予想ついてたけど、言われたらより鮮明に確信を持てる。それと同時に、ある恐怖を持った疑問が現れる。


「覚えているのならいいんです。本の内容が途切れたということは、所持者も消え、また他に本に記すことが出来る者がいなくなった。
 つまりは…誰もいなくなった。さて、ここで君に1つ質問を…いや、クイズと言うべきか。私は今、その惨劇で誰もいなくなったと言った。
 なら…その惨劇のことを知ってる私。つまり惨劇の時、私もこの町にいたのに、どうしてここにいるんでしょうか?」


やっぱり…僕が思ってたものと同じ。いや、それしかない。それ以外に思いつかない。
そしてその答えはもう出てる。疑問が出たと同時にその答えは出てた。
だから今…確信を持った、答えを問いかける…。










「……あなたが、襲撃者だから……ですよね?」











「……ご名答。君ならわかると思ってましたよ」


表情が変わった。笑顔だ。楽しそうな笑顔をしてるのに、恐怖しか感じ取れない。
口角を上げて歯が見える。見せてるのかもしれない。どちらにしろ、目からは異様なものを感じる。まともに見ることが出来ない。
目を見たら…食われる。飲み込まれそうな気がしてならない。一瞬で自分が崩れる。そんな感覚を体が包んでる。
完全に場を支配してる。一歩、いや手を動かすことさえ困難に感じるぐらいに、圧迫されてる。どうしようも出来ない…。


「だが1つ、修正すべきことがありますね。これは私の言い方が悪かったのですが、本当は襲撃者ではなく、捕食者が襲ったんですよ」


「…捕食者…?」


「そう、捕食です。わからないなら簡潔に言うと、食事と言うべきか。聞こえはいいが、やることはそんな良いものじゃないですよ。
 私は昔、この町を襲いました。昔はそういう捕食者というのも、それなりにいたんですよ。けど、こうやって栄えたりしたことにより、
 容易に捕食をすることが出来なくなった。故にこういった田舎や辺境のような場所を襲っていたんです。このような場所なら、
 誰かに見られることなく捕食をすることが出来る。リスクが低く円滑にしやすんですよね」


「…だから、こんな辺境で起こった出来事を知られることはない。知るのは自分だけ…危険なことなんてない」


「よくわかってるじゃないですか。なら自分がどんな状況か、より鮮明に把握出来たでしょう」


どんな状況か…そんなこと、言われるまでもない。捕食者が目の前にいるのなら、僕は被食者…悪い言い方をすれば餌。
逃げることなんて到底叶わない。でも、このまま食われるの?食われたら、僕は…。


「そろそろお話をするのも飽きてきました」


そう聞いてハッとカイリューさんを見ると、大きな手を伸ばして僕を捕まえようとしてる。
本能的に逃げなきゃと思うものの、体はピクリとも動かない。まるで石になったかのように。
ただ見ることしか出来ない僕は、呆気なく捕まってしまう。その手は見たものより大きく、体がすっぽり収まりそうなぐらい。
こうなってしまってはどう足掻いても無理。このまま食われるのかな…。


「私も久しぶりに楽しめるとあって、嬉しいですね。ただこんな老いぼれであることに変わりはない。食うにしても時間をかけないといけませんね」


「…やっぱり、食うんですか…?」


「何度言わなくてもわかってるはずですよ。私は捕食者。することは決まってます」


「…………」



このあと当然バクフーンは食われます。まだ捕食じゃないのかよ、と文句を言いたくなる人もいると思いますが、次で捕食になります

<2011/07/06 22:40 ヴェラル>
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