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「「マスター!!」」

ロケット団員に囲まれ、まさに多勢に無勢のロンギヌス達。その包囲網を力づくで破って来たのは、ラティオスとレムリアだった。彼らの後ろには、アクア団らしき者達がついてきている。


ロンギ「おっ…お前らアクア団まで連れてくるなよ！！」

レム「あら…命懸けで抜け出して来たのにそれはないんじゃない？」

ラティ「素直に殺されてた方がよかったですか？ 僕たち。」

「い、いや…別にそういう意味じゃ…」


何はともあれ、仲間の二匹が（まだ）無事だった事に、ロンギヌスは感謝した。あとはバビロンだが…なぜか彼に対しては心配の気持ちが湧いてこなかった。むしろ彼の相手をしているらしいマグマ団の連中の方が、可哀想に思えてくる。

カイオ「ラティオスー…君が無事なのは嬉しいんだけど、この人数どうしてくれるのさ。」

カイオーガの淡々とした質問に、ラティオスは答えが出ない。何しろアクア団を丸ごと連れてきてしまったのだ。今彼らの周りには、ロケット団とアクア団…総勢200名近くが壁をつくっている。


ラティ「…僕はバビロンさんみたいな正確な計算はできないけど…勝算はあります。マスター、メモリ何本持ってますか？」

ロンギ「こんな事が起きるなんて予想してなかったからな…メモリケース置いてきたよ。今は二本だけ。」

ロンギヌスは黒いポーチに手を突っ込み、常備用のメモリを取り出して見せた。ピンク、紫のそれらが、月明かりに照らされてキラッと光る。だがその鏡のようなメモリの片隅に、ロンギヌスは不吉な赤い目が映ったような気がした。


ロンギ「（何だ…今の…）」

ラティ「マスター!! 来ますよ！」

ラティオスのその一言が無ければ、ロンギヌスは蟻のように踏み潰されていただろう。敵側のドサイドンが、馬鹿でかい拳を地面に叩きつけてきたのだ。ロンギヌスは間一髪で横に飛び、難を逃れる。地面には、ぽっかりと綺麗な穴が開いていた。


ラティ「容赦なしですね…マスター!! あのメモリを兄さんに…」

ロンギ「分かってるよ…！！」

ロンギヌスはピンクのメモリを掴み、カイオーガに狙いを定めて投げ付けた。クルクルと放物線を描いて飛んでいくそれを、カイオーガは逃さずキャッチする。そして邪魔をしようと群がる団員をなぎ払い、メモリを自分の頭に差し込んだ。


ニュゥン…
キチッ…『MUSIC（音楽）!!』



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GOOD MUSIC：『LMFAO shots』or『Bad Apple』
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カイオ「にひひ…♪ 何かきたね…」

カイオーガの瞳の奥に、一瞬で妖しい『何か』が生まれる。それは彼の目を血を思わせる紅から、活発そうなエメラルドグリーンへと変身させた。それ以外にたいした変化は無いものの、カイオーガの体は縦に小刻みに揺れていた。いや…リズムに乗っていると言った方が正しい。

メモリが及ぼした影響は、それだけではない。
辺りに突然リズミカルな音楽が鳴り響き、カイオーガはそれに操られるように動き出したのだ。


サカキ「何だ…？ やれ！」

七人の団員が刀を構え、彼を束になって襲った。しかしカイオーガはダンスを踊る感覚でそれを跳ねのけ、無我夢中で踊り狂った。近づいた者はヒレで弾き、二人がかりで向かおうものなら、持ち上げられて顔を正面衝突させられる。もはやストッパーが壊れた彼の心には、理性も我慢も吹っ切れていた。


ラティ「うわ…兄さん凄い…」

ロンギ「ヒレに血を付けて踊るなよ…まさに悪魔の舞いだな。」

もはやロンギヌス達は必要なかった。踊り始めて二分足らずで、カイオーガは団員の半数をなぎ倒していた。わざわざ喰らおうとはしてないが、不運にも口に触れた者は舌で体内に引き込んでいる。ふとロンギヌスは、授けるならエターナルメモリよりこちらの方が良かったんじゃないかと後悔した。


そして曲が中盤に差しかかった頃には、団員はほぼ全員、芝生に顔を突っ伏して倒れていた。とうとうサカキに目をつけたカイオーガは、軽やかなステップを踏みながら飛び掛かっていった。


サカキ「やはり素晴らしい…!! カイオーガ君、少し落ち着きたまえ…」

キチッ…『ATOM（原子）!!』

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