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Wolves Heart 真実の心 − 旧・小説投稿所A

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Wolves Heart 真実の心

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「・・そんなこともあったな・・」
「ええ・・懐かしい・・」
俺はすっかり巨躯を誇るまで育った銀狼に振り返る。
大きな切創に潰された右目が開くことはなかった。
隻眼の銀狼の紅眼が優しく緩む。
「・・すっかり・・美人?いや、美狼か?」
「そう・・ですか?そうなら貴方のお陰ですね。」
あの頃の幼さは欠片一つ残っていない。
その紅眼ですらその美貌を引き立てる一つになってしまった。
「俺のお陰か・・ふ、あはははっ・・」
「フフ・・ははっ・・」
俺は何故が不意に笑ってしまうが、銀狼も特に怒ることなくそれに続いた。
こいつはこんなに巨躯に成ってからと言うもの怒ったときを見たことがない。
幼い頃はよく怒られたのだが・・
と、唐突に何かがくぅ、と鳴った。
「・・そんな時間か。」
「・・・恥ずかしい・・」
銀狼は頬を赤らめ、身を捩りながら上目づかいでこちらを見つめている。
それに応えるように右腕の包帯を取り、銀狼の前に痛々しい無数の歯形の残る右腕を差し出す。
この歯形はこいつの牙の痕・・食事の痕だ。
「ほら・・あんま吸うなよ?」
「分かってますよ・・こんな事で貴方を殺したくありませんし・・頂きます。」
彼女から見れば細腕に牙が突き立てられる。
一瞬で皮膚が破られ、出血が始まる。
その血液を銀狼の舌が唾液を纏って舐め取り、唾液を塗っていく。
さらには、血液を吸い出し飲む始末。
「っ・・」
数年もこの食事に付き合ってはいるが、まだこの痛みには慣れない。困ったことに、彼女が成長するにつれ血の摂取量が増加し俺は大変な思いをした。
「頂きました。」
十分もの間、彼女は俺から食事を捕る。
毎度の事ながら俺は血を流したままよく倒れる。血を吸われて極度の貧血に陥るためだ。
この狼の食事は最早、吸血鬼なみの吸血行為に等しい。
今回も包帯を拾おうとして視界がぐらり、と来た。
「わ、悪ぃ・・」
俺の体を彼女の前脚が受け止める。
これも毎度おなじみの光景。
「いえ・・いつもの事でしょう・・」
が、日常とは違った。
俺の頬に暖かい雫が滴っていたのだ。
そう・・銀狼は泣いていた。
「私の・・名前・・」
「名前・・そうだな・・もう付き合って十何年なのに名前・・聞いてなかったな・・」
今更聞いても名前で呼ぶかは分からない。俺はもう銀狼のことは”お前”で定着してしまっている。
「・・・フェンリル・・」
「・・そうか・・お前が・・・か。」
「驚かないのですか・?」
「幾分かは・・分かってたからな。」
狼が特珍しくないこの地域では狼専門の狼医がいるくらいだ。調査すればすぐに引っかかる。

フェンリル。
非常に美しい銀毛を身に纏い、人間のみを狙い喰らう。
幼少時は血しか摂取することができない。
そのほかに留意するべきはその巨躯である。
さらには、人間を喰い続ける事で転生するという仮定も存在して・・・



<2011/05/13 23:51 セイル>消しゴム
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