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Wolves Heart 真実の心 − 旧・小説投稿所A

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Wolves Heart 真実の心

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ー食べなければ死ぬー

これはどんな生物がいかなる手段を以てしても逃げること叶わぬ自然の摂理。
無理矢理でも食べさせなければこの仔の命が危険に晒される。
が、無理強いは出来ない。そうすれば重度のストレスを与え結果その命を縮めてしまう。
「そっか・・またお腹減ったら言ってね。」
「ぅ、ぅん・・」
笑顔で安心させようと言葉も柔らかくしても仔狼は浮かない表情を変えようとはしなかった。
”いずれ捨てられる”その恐怖と不安が仔狼の脳裏に焼き付いて離れないのだろうか。
「そんな顔をしないの。ちゃんと面倒看るよ。」
小さなその頭に優しく手を乗せ、撫でる。
すっかり乾いたその銀毛は絹のようで撫でているこっちのほうが気持ちよかった。
「・・で・・んで・・なんで・・?」
「ん?」
「なんでお兄ちゃんはそんなに優しいの・・?」
嬉しい表情すら浮かべずに仔狼は疑問をぶつける。
幾度と拾われ、捨てられ。
恐らく簡単には信じられなくなっているのだろう。
「お兄ちゃんも・・いつかは僕を・・捨てるんでしょ・・・気味が悪いから・・不吉だから・・血の面倒をみれなくなってっ・・・」
仔狼の瞳が潤む。だから僕は仔狼を優しく胸に抱き上げる。
胸にすがりつく仔狼は震えている。
「そんなことないよ・・・」
「違うよ・・もぅ・・嫌だ・・誰か・・助けてよぉ・・」
「最初は・・傷の手当てをするだけだったよ。」
そう・・最初は傷の手当てをするだけ・・面倒など看るつもりはなかった。
ただの会話を交わす間に仔狼の心・・酷く傷ついた孤独の心に触れてしまい、手当てどころではなくなったしまった。
これ以上・・この仔を傷つけてはいけない。
解放させてあげなければならない。
「でも・・拾ったことに代わりはない・・最後まで面倒を看るのが飼い主の責任だからね。」
「・・ほんと・・僕のこと・・看てくれるの・・?」
「うん・・最後まで。」
「お・・お兄・・ちゃん・・う、うわぁぁぁぁぁん!」
大粒の涙を無数にこぼしながら心の声を張り上げる。
僕はその銀狼をそっと抱きしめてあげた。




<2011/05/13 23:50 セイル>消しゴム
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