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孤高の雷帝 − 旧・小説投稿所A

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孤高の雷帝

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「ど、どうして・・?」
洞窟に帰り、僕の前に展開された光景。
ボロボロの満身創痍になったミリュイが横たわっていた。
無数の切創を身体に負い、胸には大きな咬み痕が。
紫電の顔には僅かな笑みが。
「私の庭にいた女だ。どうした?知り合いだったか?」
あの時は気配を感じなかったが、確かに紫電はあの場面を目撃していたのだ。
その証拠に、紫電の声には確信を含んでその言葉を発している。
「・・そいつを殺せ。トドメを刺してやれ。」
絶対の紫電の命令が下った。
僕には反抗できない。反抗すれば僕は“餌”になる。
だが、僕にはできない。
ミリュイを殺すことなど僕にはできない。
「紫電っ!!」
瞬時に身体を緊張状態に引き上げ、牙を剥いて紫電に襲いかかる。
「矮小な人間め。」
片腕一本で僕は弾かれ、背中を岩盤に激しく打ちつける。
・・・敵わない。
呪人の力を持っても紫電には敵わない。
「そんなに飯になりたいのか?」
手も足もでない僕を見下して喉で笑う。
悔しいけれど、それは事実。
素直に紫電の命令に従うしかないのだ。
自分の非力に歪む顔を紫電に見せないように横たわるミリュイに寄り添う。
自然と涙が頬を伝う。
「・・泣い・・てるの・・?」
「ミリュイ・・ごめん・・ごめんね・・」
謝罪の言葉しか吐けなかった。
彼女は僕のせいでこんな事になったのだ。
僕に関わらなければ、苦しむ事もなかったのに。
「貴方を・・救えなかった罰よ・・私は・・その罰を・・甘んじて・・うける・・から・・」
僕はその細首を優しく咥えた。
彼女が僕を助けた為に僕と同じような扱いをあの村で受けた。
そんな彼女を救おうと、冷たく当たり彼女を僕から離そうともした。
だが、彼女は決して見捨てなかった。
僕と同じように苦しんで。
そして、その僕に殺されるー
もう・・十分に苦しんだ。
楽に殺してやりたい。
喉笛を掻っ切るか。
心臓を貫くか。
窒息死させるか。
もう、どうしていいか分からなかった。
「アルザ・・」
その蒼空の瞳が僕を見つめ、意識は遠退いた。



<2011/05/13 23:25 セイル>消しゴム
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