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【保】深い森の奥で − 旧・小説投稿所A

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【保】深い森の奥で

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一時間が経過した。



ミロカロスから逃げ出しバクフーンは今も森の中を駆けていた。
さすがにバクフーンも一時間もの間、森の中を駆け抜けたせいで息が上がっている。

「はあ、はあ……くっそ! この森はなんて広いんだ。
 しかも、霧まで出てきやがるとはついて……な、い…ぜ……」

あることに気が付いて、バクフーンの言葉が掠れるように消えていく。
初めは走り疲れたせいだと思っていた……
それが休むために立ち止まっている今でも、
力が吸い取られるように体力が消耗していく事を……

「うう……いったい、どうしたんだ俺の体は……
 ち、力がはいらねぇ……おぐっ、うぐぐぐっ。」

バクフーンは膝を折り、地面に手をつきながら倒れ込んだ。
ゼーゼーと段々と息をすることさえ辛くなって、額から汗がにじみ出す。

そこへ、どこからかミロカロスの声が聞こえ始める。

「そろそろ、動けなくなってきたみたいね、バクフーンちゃん。
 この森で私から逃げ出そうなんて……甘い考えは捨てなさい。」
「ぐぅ……もう、追いついて来やがった……か、化け物……くっそ! どこだ!」

無理をして起きあがり、半狂乱で暴れるバクフーン。
口から炎を噴き出し無差別に一面をミロカロスごと焼き尽くそうとした……が、


ポチャ、ポチャ


水滴がいくつも落ちてきて突然雨になり炎の勢いが弱まっていく。
それを唖然とした表情で見つめるバクフーン……

「これでもう、その炎は封じたわよ無駄な抵抗は止めなさい。」
「だれが、あきらめ……がはぁ! なんだ体が……うごか、せね……え。」

先ほどまで、無理をすれば何とか動かせていた体が、
何かに押さえつけられているかのように、
ピクリとも動かせなくなった事に動揺するバクフーン……

そして、自分の意志に関係なく勝手に背中の炎が消え失せてしまった。

「お、俺の体は一体どうしたんだよ……」

目尻涙を浮かべて混乱するバクフーン……その声に答えるものはいなかった。
変わりに、誰かがの足を払い、バクフーンはどうすることも出来ずに顔面から地面に倒れ込んだ。

「ごは!」

受け身もとれず仰向けにひっくり返され、
倒れ込んだバクフーンが苦痛で悲鳴をあげる。

無防備な姿をさらしているバクフーン。
その両足が突然、何かヌルヌルとしていて、暖かなモノに包まれる感触を感じとった。


「あぐぅぅ……な、何だこの…この足の感触は!」

正体を確認しようにも顔を動かすことも出来ず、抗うことも出来ない。
その間にも暖かな何かは間断なくグニャグニャと動き続け、
その度にピチャ……クチャ……と生々しい何かをする音がバクフーンの耳に届く。
そして、ゆっくりとだが体の上へと登っていき、バクフーンを腰まで包み込んでしまった。

「ああぅ……うっぅぅ……何なんだ? 何がいるんだ……」

暖かな何かが蠢くたびにバクフーンの体に得体の知れない悪寒が走り、
上げたくもない喘ぎ声を上げてしまう。
それが何度も繰り返され、
ある時にバクフーンが僅かに指に力を入れると……ピクリと指が動いた。
おもわず、自分の手を動かし目の前に持ってきて改めて指を手を動かした。

「体が……動く。 体の自由が戻った!」

恐怖に歪み涙を流していたバクフーンの眼に光がもどる。
すかさず暖かな何かに手を当て抜け出そうとしたその瞬間に、
バクフーンの体が高く持ち上がる。

「ぬあっ! こ、今度はいったい何だ!」

悲鳴をあげ、不安そうに呻くバクフーン。
乱暴に空高く持ち上げられ、その衝撃でバクフーンの体が、
ズルズルと一気に胴回りまで暖かい何かに引きずり込まれ包まれる。

その時、バクフーンは見た……見てはいけない物を

すぐ目の前で赤く光っているミロカロスの眼を見て、
何故その事に気が付かなかったのかと後悔し……
そして、この暖かいモノは……ミロカロスの口と肉壁の体温だと理解した。

「ま、またお前なのか……」

あの時の悪夢の再来……

バクフーンの心があの時の光景を……
目つきの悪いマグマラシが目の前でゆっくりと飲まれていった光景を思い出してしまった。

カタカタと恐怖で体が震えだしてし、再び視界が暗くなり始めて……

「ぐあぁああああ! もう嫌だー! 吐き出せッ!
 この化け物吐き出しやがれー!!」

限界を超えた恐怖の反動……
気絶するのではなくバクフーンは、下半身の殆どをくわえ込まれたまま、
メチャクチャに暴れ回って必死に足掻き、最後の抵抗をしてみせた。

それでも……

(んふ……もう、手遅れなのよ。もうすぐあなたは私の一部に……)
「ああっ! くそ! くそー!!」


抵抗も空しく、ミロカロスはせわしく顎と舌を動かしていく。
その度に……


クチュチュ……ジュリ……ジュルル


ミロカロスが口の奥にバクフーンを引きずり
込む生々しい音共に……

だんだんと飲み込まれていく……

バクフーンは何とか抵抗しようと
ミロカロスの舌に手をかけるが……
そのまま舌が残ったバクフーンの頭に絡みついてきて
ついに頭まで口の奥に引きずり込まれる……

「あああっ!! うわあぁあああ!!!」

ジュルルルル……ゴクリ……


最後に壮絶な絶叫と共にバクフーンは……
ミロカロスの体内へと飲み込まれていった。


ズブズブ……ジュル、ジュル……


ミロカロスの喉を大きく膨らませてバクフーンが落ちていく、
必死にまだ抵抗して、グニャリ、グニャリと喉が大きく歪む。

「グエップ……さすがにバクフーンちゃんは食べ応えがあったわ♪」

妖艶な笑みと表情を浮かべて、
頭の触手を使い、まだ抵抗しているバクフーンがいるあたりをなで回した。

そして……


ジュルジュル……ズリュ!


とうとうバクフーンもミロカロスの胃袋に落ち込み
ボーンと大きくはち切れんばかりに胃袋を膨らませた。

「うふふふ……お仕置き完了♪
 それにこれなら、しばらく何も食べなくても大丈夫ね。」

満腹感とお仕置きが出来て満足するミロカロス
そこに意外にもミロカロスに話しかけるものが現れた。
その生き物は、たびたび出現していたあの臆病者のマグマラシだった。

「ミロカロス。 どうだった俺の演技は?」
「ええ。 とっても素晴らしかったわ。
 おかげで、こんなにお腹がパンパンになっちゃったわ♪」

楽しそうに会話する2匹……
ゆっくりとマグマラシの姿が霧のように散り始めて姿を現したのは……

霧の姿をしたガス状ポケモンと言われるゴースだった。
それからも楽しそうに話しながら泉に帰っていくミロカロスとゴース。

後に残ったものは……何もなかった。






次の日町は騒然とする

1匹の子供に続いて2匹も子供が消え失せたのだから当たり前だった。

ついに子供達も黙っていることが出来ずに、
3匹が森の中に入って出てこなくなったことを話してしまった。

それを聞いた大人が何人か森へ入っていくが誰も出てこない……
それが何日おきかで繰り返されたことで……ついに誰も探しに行かなくなってしまった。


そして、しばらくたった村に不思議なことが起こり始めた。
ごくまれに、夜中の間に村人が誰かいなくなってしまうのだ。

1月に一人……1週間で1人…一日で1人……
日かけるごとに誰かがいなくなってしまい……そして、

『町には誰もいなくなる』


そして、かろうじて村から逃げ延びたポケモンが語る怖いお話。

入ったら必ず森に食べられたかのように誰も出てこない、
恐怖の森……捕食の森の話を皆から笑われようとも話し続けて言った。


そして、その森の噂を聞いた愚かなもの達が森を訪れる。

それをあの2匹が……

「うふ……また来たわ♪ ゴースちゃん頼んだわよ。」
「任せてくれミロカロス。 それじゃあ行ってくる。」

舌なめずりをしてまちかまえているのでした。


そして、また一人、もしくは一匹が……彼女の一部になっていくのであった。

もし、あなたがこの森の噂を聞いても確かめに行こうとは思わないでください。
でないと……大変なことになっても知りませんよ。


【深い森の中で】 The End ? OR  To BE Continue ?



<2011/06/10 21:36 F>消しゴム
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