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表裏一体 光の頂 − 旧・小説投稿所A

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表裏一体 光の頂
− 巫女 ー花梨ー −
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粘液が弾け、地面に広がる。
葵の胃袋から吐き出された花梨。
エネルギーの大半を奪われ、衰弱していた。
胃液も分泌されていたらしく衣服が溶けていた。
「ククク・・・」
葵さえも花梨の高純度のエネルギーに酔っていた。
神らしからぬ邪悪な笑みを絶やさない。
「お前を殺していいか? 聞こえているなら喚いてみろ?」
戦神の記憶が蘇っていた。
体が、狼の本能が花梨を殺したいと吼えている。
激しい唸りを漏らし、牙を剥き、爪を鈍く輝かせる。
「私に殺される事を誇りに思え。」
前脚が鋭く、真上に振り上げられる。
振り下ろされれば小さな花梨の命は二度目の死を迎える事になる。
「父上!?」
間一髪。振り下ろされる直前に楓が神窟に舞い戻った。
特に慌てる様子もなく、冷静のまま前脚はゆっくりと下ろされた。
一方、楓は真っ青の形相のまま粘液まみれの花梨を抱え上げる。
「・・・すまん・・」
酔いの醒めた葵は静かに言葉を紡いだ。
「母上っ! 母上っ!!」
狂ったように椿を楓が呼ぶ。
ところが椿はまだ酔ったままで頬が紅い。
神獣は酔ったままでは力を使うことができない。
現状において花梨を回復させる手段は・・ない。
「花梨っ・・花梨っ!!」
声を荒げながら花梨を揺する。
すると微弱ではあるが反応を示した。
「か・・楓さま・・体が・・」
「花梨・・・」
やっとの反応に楓は安堵の息を漏らした。
表情も柔らかくなり、笑みをこぼす。
「っ!?ぁぁぁぁぁっ!!」
つかの間の安息。それさえも長くは続かなかった。
花梨の悲鳴。その体内で響く鈍い音。
神獣のエネルギーに触れ続けた結果だった。
神のエネルギーは人間にとっては高い負荷。
二体ものの神獣の体内に納められてしまった花梨への負荷は言葉では表現できないほど酷い。
それらのエネルギーは人体組織を破壊してしまう。
「かぁ・・・楓・・・さ・・ま・・・」
命の灯火が消えていく。
ブルブルと痙攣を止めない手が頬に伝う。
「花梨っ!しっかりしろ!」
その細腕をぐっと握り、懸命に声を荒げる。
この状況はいつ来てもおかしくはなかった。
今まで現状を回避出来ていたのは楓が堕ちていたからだった。
堕ちていなければこの現状はもっと早期に発生していたはずだ。
「花梨っ!」
悲鳴をあげ、身を捩りながら目が見開かれた。
ぐったりと楓の腕に体重が預けられる。
そうして花梨からの反応は・・・無くなった。
「花梨っ?・・・花梨!?」
いくら声をかけようとも、体を揺すろうとも、
反応は無かった。
しかし、不意に反応が戻る。
「もういい。大丈夫だ。」
低く威厳のある女性の声。花梨のものではない。
花梨の目が開いた。
闇夜の黒。新緑の如き碧。
色の違う双眸。それが花梨以外の存在を感じさせた。
「お前が楓・・・柊の子孫か?」
「は、はっ・・よくご存じで・・」
楓は花梨を降ろし、膝を折る。
その動作は無意識下に行われた。
癖ではない。その存在にそうさせられた。
「葵に椿・・この巫女のエネルギーに負けたのか?ククッ・・脆弱な奴め。」
「口を開くことをお許しください」
「何だ?」
「貴方様のお名前は・・・?」
膝を折ったままいっさい動かず口だけを開く。
「天竜様・・楓は存じておりません・・貴方様が天に召されてから椿が生みましたので・・」
微かに揺らめく体を必死に支えながら葵が酔いから覚醒した。
葵も楓と同じように、膝を折り頭を垂れる。
「みっともない姿・・・どうかお許しください」
「お前たちとて苦労しているようだな・・・」
花梨だった存在が神獣に。
楓は焦っていた。



<2011/07/01 22:31 セイル>消しゴム
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