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草の根かきわけてU − 旧・小説投稿所A

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草の根かきわけてU
− オオカミの計画 −
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 どろどろと重い暗闇の中、遠くから誰かが呼んでいる。俺の名前を呼んでいる。

 「ル・・・・」

 その声に、深い沼の底から俺は引き上げられていく。

 「・・・・バ」

 俺は・・・

 「こらー! ルンバ! 起きなさいよ!」

 「ひゃっ!?」

 すぐ目の前に、鬼の形相をしたルウがいた。





 「な、なんでおめーが巣穴まで入ってきてんだよ?」

 少しは落ち着かせてくれってのに。

 「仕方ないじゃない。外からずっと呼んでいたのに、ぜんっぜん起きないんだもの」

 なんて勝手なんだよ。勘弁してくれっての。

 「んで? 俺に何の用だよ」

 まあこいつの事だから、それなりの用ではあるんだろうけどよ。

 「あんた、うちのボスに呼ばれているわ。狩りの手伝いをして欲しいんだって」

 「え? なしてまた」



 俺はあいつらからしたらよそ者。いつも毛嫌いされてルウ以外からは追っ払われていたのに、一体どういう風の吹きまわしなんだ?



 「さあね。でも、もしかしたらあんたがみんなから認めてもらえるチャンスかも知れないわよ。魅力的じゃないかしら?」

 「そりゃ、まあな」



 正直、寒くなってきたここ最近は獲物の数も減って餌を取るのにも一苦労するようになっていた。そもそもオオカミってのは群れで生きるもんだ。一匹でやっていくのには限界がある。

 このチャンスを逃す選択枝はねえ。



 「よし、今からいくぜ」

 「決まったわね」

 言うが早いか、ルウは群れの縄張りのほうへ向けて走り出した。

 「お、おい待てよ」

 俺もあわてて後を追う。



 それにしても、狩りについての話か。俺で大丈夫なのか? そしてオオカミのボス。一体どんな筋骨隆々の野郎が待ち構えているんだろう。こえええ・・・・・





 ルウの縄張りを越えて、さらに薄暗い森を俺達は奥へと進んでいく。こんなところまで来るのは初めてだ。それにしても、一向に他のオオカミに出会わねえな。いつもはどこからともなく現れて、やいやい言い出すのによ。

 それとも、他の連中もボスとやらの元へ集まっているのか?

 「あ、ルウ!」

 っと。考えていた矢先にお出ましだな。仔オオカミ・・・か? ずいぶんと小さなオオカミだ。結構かわいいな、おい。

 「あら、ボスこんな所にいたの」

 そうそう、なんてかわいいボス・・・・・ってはぁ!!?



 「えーーー!? えーーー!? えーーー!? こいつがボスーーー!!?」

 いやいや、ちょっと待った。どう見てもちびっこじゃねえか。遊びたい盛りの。こいつがボスって一体どういう事だよ! こんなんでオオカミの群れは大丈夫なのか?

 「何を驚いているのよ?」

 「えっと・・・はい、僕がボスですけど」

 そんな当たり前みたいに言われてもだな。

 「いや、どう見たって子供じゃねえか」

 うん。俺の目がおかしくなっていない限りは間違えようがねえよ。体は俺達の半分くらいしかねえし、何より顔が幼い。まだ生後1年にも満たないように見える。

 「そ、その言い方は失礼じゃないですか。一応僕は君と同じ位の歳ですよ?」

 「んなあほうな!?」

 それはねえよ。

 「ちょっと」

 パニックになりかけている俺にルウが耳打ちする。

 「ボスも気にしているんだから、言っちゃダメだってば」

 「え? そうなのか?」

 いや、童顔にしたって限度があるだろ。これはなあ・・・さすがに・・・

 一体全体どうやってボスにまで上り詰めたんだよ。体格は明らかに不利そうに見えるし、性格も優男って感じにしか見えねえぜ? とてもじゃないけど、ボスとしての風格は感じられねえ。というか俺の発言に落ち込んじまってるしよ。

 「と、とにかく。気を取り直して、いつもの場所へ行きましょ」

 「そうですね」

 うん、完全に姉と弟って感じだな。





 「みなさん、揃いましたね」

 俺は岩場のような場所で座らされた。周りのオオカミがこっちを睨んできているのは、俺の気のせいだという事にしておこうか。正直、ちびりそうなくらいこええ。

 そういや、あいつも前に立ってちゃんとボスやってんだな。童顔だけど。

 「今日みなさんを呼びだしたのは他でもない。近日行う予定の大々的な狩りの打ち合わせです」

 その一言に若いオオカミ達が吠えて、年配のオオカミ達がなだめた。

 「しかし大きな狩りには大変な動力を要します。狼員はいくらあっても足りません。そこでです」

 岩の上から話していたボスが俺の目の前にすっと降りてきた。つぶらな茶色い瞳で俺を見つめる。

 「ルンバ君、君にも手伝ってほしいのです。もちろん、ただでとは言いません。もしこの狩りが成功すれば、君は晴れて僕達の仲間入りです」

 そりゃ、もちろん断る訳ねえけどよ・・・

 周りのオオカミが口々に文句を言い始める。とても穏やかとは言えねえ。



 「お黙りなさい!」



 その一言で、一瞬にして静かになった。なるほど、確かにボスとしての器はあるみてえだな。

 「それで、その狩りってのは具体的にいつどこで何を狩るんだ?」

 「そうだ、その事についてでしたね。今から説明します」

 ひょいっと身軽に大岩に乗り直した。

 「まず、決行は次の満月の夜です。場所は、向こうに見えている山にします」

 昨夜は半月だったから、あと数日といったところか。ん、待てよ? あの山は確か。

 「そして、狩りの対象は・・・・・鹿です」

 俺は、目の前が真っ暗になった。





 いくらかのやり取りがあった後、解散して俺とルウはまた森の中を帰り始めた。夜になると冷えるな。この暗い森の空気は慣れないぜ。

 「ルンバ、元気ないわね」

 「あ、ああ。狩りが本当に成功するかどうか不安でな」

 心配そうにしてくれるルウを俺は適当に誤魔化す。

 「ほら、不安になってちゃできるものもできなくなるわ。準備万端に体調を整えて、狩りに備える事ね」

 「お、おう・・・」

 何を言われようと、俺は上の空だ。

 「それじゃ、私の巣はこっちだからもう行くわね」

 「・・・・・」





 俺は月が嫌いだ。寂しそうな光を眺めていると、一匹世界の真ん中に取り残されたように感じる。





<2013/02/18 18:03 ぶちマーブル模様>消しゴム
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