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忌々しき存在 − 旧・小説投稿所A

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忌々しき存在

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トントントントン…トン

「なあ…

ふと一人の男が貧乏ゆすりを止めてもう一人の本を読んでいた男に声をかけた
「どうした?」

「やっばりやばくないか…?」

「やばいって何が?」

「何って…ほら見ろよ」

一人が指差した小窓の奥に壮大に晴れ渡った空が映る
その下、もくもくと暗雲が立ち込み黒々と森に覆われた妙な島が一つ在り、そこだけ太陽の光を遮られてどんよりとしている
あんな島に行くのかと思うと不安になって仕方がない

ふと伝氏はめくる手を止め窓に目をそっとやると

「何だ、ちょっと雲がかかっているだけじゃないか…」

と、大した事でもないとでも言うような口振りでさっと目線を戻し手を続ける

俺はまた退屈げに腕組みをしながら貧乏ゆすりを始めた

いま、俺、依穏は伝氏とフルム島に向かっている…
このフルム島にはある噂が立っている
フルム島を覆う巨大な森に人喰い竜が古くから棲んでいるという恐ろしげな噂である
どうせ言い伝えか何かが派生したものだろうと思ったが、よくよく調べてみると毎年五千人位の行方不明者数が確認されしかもその9割が観光客なのだそうだ…
オカルト好きの伝氏は勿論一緒に行こうなどと言い出して強引に説得されついてきてしまったのだが…
やっばりついてこない方が良かった気がする
噂が本当だったとしても
そうでなかったとしても
絶対に…何かある


ブオオオーー

ひたすらフェリーは汽笛を上げながら荒れ狂う海原で波を切り開いて を乗せて進んでいくのだった








******

フルム島に到着した直ぐに宿は見つかった
部屋に荷物を置きそれぞれ分かれた
案外村の方は賑やかで活気もあり、そこまでに背負っていた不安や怖さみたいなものはすっかり何処かに消えた

興味津々な伝氏を放っておいて町をぶらぶら散歩していたら何やら村の隅に小道を見つけた。ふと好奇心が芽生えそそくさと小道の中に入っていってしまった。一本道は不気味な森の中へと通じていたが尚探求心がそそられてずんずん進んでしまっていた。途中、道が分かれ一方は真っ直ぐ、一方は右曲がりで手前に『いけ ニ _の広場』と書かれた看板があった。
「池の広場…かな?」
好奇心のままに右曲がりの道を進んでいった。
広場まではそこまで遠くもなく、すぐに道は開けて明るい場所に出た
三方を岩山に囲まれ、岩山の影がくっきりと端から真ん中まで浮かび上がっている
地面には草木が一本も生い茂らず荒れ地となっている
?…池なんて…どこにも…

「おい、そこの人間」

…!!?

何の予兆もなしに重苦しいような声が耳に響き
びくっと驚いて体ごと後ろを振り返った。
・・・あれ?誰もいな…と向き返そうとした刹那
「むぐっ!?」
巨大な何かに視界…いや体全体を覆い尽くされ
「Nnnnooo〜〜!!」
あ、足が浮く…!
恐怖のあまり空に晒された足を無駄にばたばたさせて押さえ込まれた口で必死に呻く
ククッと嘲るような笑い声が耳に恐ろしく響いて硬直する
ぐにゃりと掌が開かれてしまうと俺は言葉が出なくなってしまった

黄色い二つの眼が俺を見下していた
唾液にまみれて輝く蛇のような肉厚な舌を下顎から上顎までぐるりと一周させると 更に縦に割れた瞳孔を細くしてニヤリとする

「どうした?怯えて声も出ないか?」

「ぁ…ぁ…」

い、ぃや…だ
まだ…まだ死にたくない…!
けど、けど体が…
動かない…うごかない…!あぁ…あぁ …!
死にたく…ない・・のに…心の中でさえ言葉が出なくなってしまった…

ククッとまた竜は俺を嘲笑って表情を楽しんでいるのか…口角を吊り上げて…

「では…

グアアァァ

口内を見せつけるかの如くその大口を開いた
光が反射しギラリと輝いた牙の間から透明な唾液の糸がネチャネチャと音を立てて引いていく

ポタポタと顔の上に空気に冷やされたつめたい涎がこぼれ落ちてくる

__もう助からない


__どうあがいても






________無駄



そう悟ってしまうと自然と力が抜けた

飛び込んでくる赤黒い地獄
___いただきます

そう聞こえたような気がして__


バクッ





自分から始めて長引さんと交代交代で書いていきますw


<2013/01/14 21:43 イオン×長引>
消しゴム
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