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無知 − 旧・小説投稿所A

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無知

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 細長い尻尾、灰色の体、チャームポイントの前歯。僕は鼠、キュートな鼠。そして今とーても大変な悩みを抱えている。



 「迷っちゃった」

 ママや兄弟たちと草むらを歩いていたら、気が付いたら僕の周りには誰もいなくなっていた。迷子だ。迷子になっちゃった。

 「どうしよう・・・困ったなぁ」

 辺りは草の背が高くて見晴らしが悪い。それに、僕はこの辺りの事をよく知らない。

 でも、自分でなんとかしなきゃ。そうやっていかないとダメだってママが言ってたから。





 しばらくは歩き回ってみたけど、僕の家族は見当たらない。それどころか仲間のねずみ達にも兎やリスにも出合わない。どんどん心細くなってくる。

 そのうちに日も傾いてきた。辺りがじんわりと肌寒くなってくる。

 助けてママ。泣きたいけど、怖くて涙も出ないや。

 お腹が空いちゃったし、寒いよぅ・・・もう歩けないよぅ・・・誰か助けて・・・・・・

 とうとう僕はわんわんと泣きだした。



 ぺロリ・・・・・・



 僕のほっぺを優しく舐めてくれる相手がいた。僕はびっくりして、顔を上げた。

 すると、オレンジ色のきれいな毛並みをした大きな動物さんが僕を見下ろしていた。



 「誰?」



 不安そうな上目使いで僕は聞いてみる。

 「ん? ただのきつねだ」

 無愛想にその動物さんは答えた。僕が住んでる森では見かけない動物さんだ。だけど、涙を舐めとってくれたし、きっと優しいんだろうな。

 「ねぇねぇきつねさん。僕の家族を見なかった?」

 「家族? ああ、さっきく・・・・・」

 何かを言いかけたけど、途中でやめちゃった。どうしてだろう?

 「もし見かけてたら、僕もそこに連れてって! おねがいおねがい!」

 このチャンスを逃したらもうだめかも知れない。僕はあわててお願いした。すると、きつねさんはにっこりと笑った。

 良かった。知っているんだ。でもどうしてだろう? なぜかきつねさんの笑顔を見ていたら、急に背中がぞわぞわしてきたよ。



 しばらく黙っていると、きつねさんが口を開いた。

 「それじゃあ、会わしてやろう」

 「ほんとに? ありがとう!」

 やったあ。ママに会えるよ。僕はほっとして、その場に座り込んだ。



 「それじゃあ・・・再会の時間といこうか」

 きつねさんはそう言うと、僕の首根っこを咥えた。



 そして



 僕はその大きな口の中に放りこまれた。




<2012/12/05 16:50 ぶちマーブル模様>消しゴム
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