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君と見た空 − 旧・小説投稿所A
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君と見た空

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〜プロローグ〜

サァァァッ……

風にゆらゆらと揺れる、リーグを取り囲む桜の大木。
もう満開が近づいているためか、所々膨らんだつぼみが目立っている。

しかしいつも轟くようなリーグの住人達の声が、今日はひっそりと聞こえない。
桜のなびく音と風の音が、今日は一段と大きく騒いでいた。


   〜


「ちぇっ…なんで僕だけ…」

木々のピンクに溢れる窓の前を、カイオーガはつまならそうに素通りする。
滑らかな海色のヒレはだるそうに床をこすり、
いつも楽観的な口はため息ばかりを吐き出していた。

「ひとりでお留守番なんて・・いやだよ・・」

実は彼以外の住人は、みんな朝早くからお花見に出かけていた。
何故彼だけ取り残されているのかというと、予定の時間を過ぎ
てから起きてしまったのだ。つまり寝坊だ。


「暇だなぁ〜・・」

自分が寝過ごしたとはいえ、やはり起こしてくれなかった不満はある。
そのもやもやした感情を抱えながら、カイオーガは地下牢へと
続く階段を下りようとしていた。

「(誰もいないし・・探検したっていいよね♪)」

未だこのリーグの全容は、主であるロンギヌスも把握していない。
素早く暗い階段を下りきると、最も手前のドアノブを捻った。


ガチャ・・バタン

虚しさを激増させる音とともに、カイオーガは倉庫らしき部屋
への侵入を果たす。全く使われていないのか埃まみれで、今で
は骨董品扱いの物がそこら中に散らばっていた。

「ケホ…ケホ…だれも掃除しないんだ…」

あてにならない電灯とぶつかりながら、部屋の奥へと進んでいく。
幽霊は恐れるタイプのカイオーガだが、昼ともなれば話は別のようだ。


ガチャッ…フニュ…

「(あれ・・何か踏んだかな・・)」

違和感を感じ、レロッと舌を伸ばして足下を探る。すると舌先に
固いガラクタのような感触があり、丸め込んで目の前へと持っていった。


「うっ…な、なにこのメモリ…」

暗い中でもある程度は見渡せる彼の目に、錆びだらけの壊れか
けたメモリが映る。舌を使ったことに後悔しながら、ポイと投
げ捨てた・・その時。


ガチャン…『MEMORY(記憶)』

「えっ・・うぁ・・!!」

ボロメモリから太陽のように眩い閃光が走り、カイオーガを怯
ませる。目が焼けるような痛みに悶えながら、彼の姿は薄れるように消えていった。


<2011/05/15 16:02 ロンギヌス>消しゴム
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