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時は遡って朝方、バンギラスは仲良くなったばかりのゾロアと朝露の輝く森の中を歩いていた。

「オイラ、もう助からないと思ってたんだ」

ざくざくと枯れ葉の落ちた地面を踏みしめながらぼそりとゾロアは呟いた。

「そのことはイーブイに感謝するんだな。あいつほどお人好しなやつは他に見たことがない」

「……バンギラスは最初からそんなにイーブイと親しかったの？」

「いや、初めて会ったときは木の実を目に喰らわされたけどな」

クククと苦笑いしながらバンギラスは答えた。
今思えば、あれはホントにおかしな話だ。獲物が捕食者に勝つなんて、そうそうある話じゃない。

「おかげでオレは果物が苦手になっちまったよ」

「くふふ、そうなんだ」

昨日もそうだったが、こいつの笑い顔は見てるとなぜか清々しい気持ちにさせる。
そんなやつが、なんで森の中で倒れていたのだろう。

「なぁ、ゾロア……」

「なに？」

あまり過去の事を聞くのはよろしくないのかもしれないが、今ここで聞いておかないともう二度と聞けないと思った。

バンギラスは重苦しい表情を隠せず、そのまま深呼吸をして続けた。

「なんで、ここで倒れていたんだ？」

「…………」

さっきまでの笑顔が一瞬にして消える。
やはりまずかったか。
そう思ったバンギラスは顔を手で覆った。

「オイラ、実は……」

ゾロアの声にバンギラスは少し驚いた。

「実は――」

次の瞬間、ゾロアの姿が視界から消えた。
何が起きたのか分からず、バンギラスはその場に立ち尽くす。

「なっ……ゾロア？」

「バン――っ！」

声がする方を見れば、ゾロアは木の枝に乗っていた。黒いマントを羽織っただれかに口を押さえられながら。

「ゾロア！」

状況をようやく飲み込んだバンギラスは、友の名を叫んだ。

「んんっ！」

必死に暴れて、拘束から逃れようとするがそれは無意味だった。

「てめぇ、誰だ！」

「お前がよく知る者だ」

「ワケわかんねぇ事言ってんじゃねぇ！」

口をカッと開き、エネルギーを一点に集中させる。
莫大なエネルギーがバンギラスに集まる。

“破壊光線”

凄まじい爆音と共に高密度のエネルギー砲が飛び出す。
それは丁度黒マントの立つ枝に命中し、木々の砕ける音と共に、奴は地面に叩きつけられる。
すかさずバンギラスはそいつに近づき、鋭い爪を喉元に突きつけた。

「こいつ……顔を見せろ！」

顔を隠している布をひっ掴み、一気にめくる。
現れたのは、見慣れたやつの顔だった。

「お、まえは――」

驚きのあまり、バンギラスの動きが止まる。
その隙をついて、黒マントのやつは素早く拳をバンギラスの腹に押し込んだ。

鈍い音がバンギラスの体内に反響する。

「うぐっ！」

唯一柔らかい腹部をつかれ、バンギラスは体をくの字に曲げた。
口から涎と混じって淡い血の色が溢れ出る。

「な、なぜだ…………」

その言葉を最後に、バンギラスは頭を蹴られた。
ピシッという嫌な音を聞いて、バンギラスはここで一旦記憶が途切れる。

急速に闇に吸い込まれるなか、ゾロアが呼ぶ声が聞こえた気がした。

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