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夢幻と無限 − 旧・小説投稿所A

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夢幻と無限

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「うぅ・・こ、ここは・・・」

一筋の光も射してくれない暗闇・・・廃墟の屋内だろう。んでもってまさか死んでるとかいうパターン・・


ギュウウッ

息をのみ、頬を思いっきり摘む。ありえないくらい痛かった。

「つまり・・まだ生きてるというわk・・」
「あら、起きちゃったの?」

突然耳に、『白』を連想させる艶のある声が響いてくる。乱馬のように立ち上がり、キョロキョロと辺りを見探る。

しかしそんな必要は全くなかった。彼女は自分のすぐ後ろにいた。


「食べようかと思ったのに・・・残念ね。」

「な・・・・な・・」


純白・・というより少しクリーム色の肢体。
マシュマロのようなお腹・・・巨大な両翼。
そして明緑に輝く瞳・・・


「ふ・・Who are you?」

「なぜ英語なの?わたし日本語喋ってるでしょう?」

「そ・・あ、あなたはな・・誰?」

一瞬、『あなたはなに?』と言いそうになったが、流石にそれは失礼だろうと思い、路線変更。


「わたし・・?知りたいの?」

「はい。」

「本当に?」

「は・・はい。」

「食べさせてくれる?」

「い・・いやだ・・」

実際そう語りかけられる事よりも、バクバクと肋骨に打ち付けるような心臓の鼓動のほうが気になっていた。

実は俺・・無類のドラゴン好きだ。毎晩画像を見てハアハアしているし、4ギガメモリにも溢れんばかりに詰まっている。


「お、お願いします・・あなたの事・・し、知りたいんです。」

こういう頼み方は俺のやり方じゃないけど・・・えーい直球勝負!



「そうね・・・まあ困る事もないし・・いいわ、教えてあげる☆」

心の中で、キューピッドが祝いの歓声をあげた。




「・・わたしはレムリア。ムゲン竜よ。」

「ムゲン・・・?ムゲンって・・無限?」

「・・分からないわ・・親もいないから・・誰も教えてくれないの。」

レムリアはもの言いたそうに、というか悲しそうに爪をいじる。しかし声をかける前に、強制して話は変わった。

「仕事は・・夢をつくること。」

「ユメ・・・寝るときの?」

「そう・・・この辺りの人間の夢・・あなたのもよ?全部わたしが作っているの。」

つ、つまり・・昨日見たドラゴンに出会う夢は正夢ってことか。


「わたしは・・その務めを果たす事によって対価を得て生きているわ。」

「た・・対価になにを・・?」

「ふふ・・人間は物や体力や知識をつかって、働く事によってお金を得るのでしょう?私たちムゲン竜の場合・・」



ゴロゴロ・・遠くで雷が鳴った






「人間なの♪・・月に一度・・人間を喰らう事を許されているわ。」

「へ・・へえ・・」

じりじりと後ずさる。いくら勘の悪い俺でも、この後の展開は予想はついた。

「ふふふ・・気づいちゃった?」

「ああ・・・ごめんだよ!!」

正面の出入り口めがけて、俺は死ぬ気で爆走した。いくら裏通りとはいえ、外に出れば誰かが助けてくれるはず・・!!


ガチャガチャ・・・ギイぃ・・バタン!!

勢い良くドアをこじ開け、廃墟から飛び出る。いくら竜は大好きでも・・・それに食べられるなんて断る!

裏通りはしーんとしていて、人の声すら聞こえなかった。しかし・・・人影はあった。


「お、おーい!!助けt・・竜が・・竜がいるんだぁ!」

今まで出した事もないスピードで、その人影に飛びつく。







ぐにゃ・・ドタリ。

「え・・・えぇ!?」

飛びついた男の人は膝をつき、俺にもたれかかったかと思うと、すぐに地面に倒れ込んだ。

『スー・・スー・・』

「ね・・寝てる・・?そうだ、に、逃げないと・・」

「ムダよ。」

後方から聞こえる白い声・・・振り向くとレムリアが、にやけながら近づいてきている。


しかし俺の視線は、レムリアの向こうにあるものを見ていた。


「な、なんで・・信号とまってるんだ・・?」

大事故につながるはずなのに、大通りの信号はどれも光っておらず、暗くなっていた。


「ふふ・・・もう分かるでしょう。この街は全て、眠っているのよ?」

「ねむ・・な、なんで・・」

「わたしがやったもの。あなたが逃げちゃうんだもの・・・悪い子♪」

レムリアは俺の前へとたどり着き、俺の額をつんと押した。


じゃあ・・今この街で、目が開いているのは俺だけ?
信号が止まってしまったのも、電力を送る所の人が眠ったから?今俺の親も、テレビの前で眠っているのか?


「そう・・みーんなわたしの夢の中・・ここにはあなただけよ?」

ジュル・・

はっと目を上げると、できたてネバネバの生暖かい涎が、俺の頬を伝っていった。



「さあ・・・たっぷりいい夢見せてあげるわね。」


<2011/05/15 15:24 ロンギヌス>消しゴム
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