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白き悪魔 − 旧・小説投稿所A

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白き悪魔

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「ひっ…!」
獣人は小さく悲鳴を漏らす。
人を殺す巨大な生き物が目と鼻の先に居るのだ。怯えない方がおかしい。
震えは止まらず、体は硬直し、もはや立ち上がって逃げることすら叶わない。
先ほども言ったが、恐怖とはこれほどまでに人の自由を奪ってしまうものなのだ。
逃げようにも逃げられない目の前に居る獲物に、エグゾセは口を少し開けると、はぁっ…と、生暖かい息を吹きかけた。
こうやって獲物の恐怖心をあおっているのだろう。
しかし獣人は、意を決したように顔を上げると、抱いていた布にくるまったものを、エグゾゼに見せた。
「この子だけは…この子だけはどうか見逃してください…!」
それは赤ん坊だった。
生後1〜2ヶ月と言ったところだろうか、母親である獣人に良く似た顔で、体毛は彼女と同じ紺色だった。
綺麗に澄んだその二つの瞳で、興味深そうにエグゾセの事を見ている。
幼いあまり、それがどういう生き物だか分からないのだろう。
母親の懇願に、エグゾセは眉間にしわを作って少し考えているようだった。
だが、エグゾセは返事をせずに大口を開け、迫った。
獣人はとっさに我が子を地面に寝かせたが、すぐに上半身をエグゾセは鋭いくちばしで銜え込む。
足は外に出ており、一度子供を救うために覚悟を決めたとはいえ、生きたまま喰われる恐ろしさに足を精一杯振り、できる限りの抵抗をしてしまう。
「く…ぅ…!」
エグゾセのくちばしに腹を挟まれ、苦しくてうめき声混じりの息を漏らす。
だが、当のエグゾセからしてみれば、これでも十分に加減しているのだ。
もしエグゾセが今すぐにでも殺そうと思ったのならば、彼女の体はあっというまに挟み切られてしまうだろう。
エグゾセは上を向き、はくっ、はくっ、と、くちばしを揺らしながらタイミング良く開き、獣人の体を完全に口内に納める。
口内は湿った空気で満ち、それがエグゾセの体温で温くなっていた。
獣人は舌の上にうつ伏せになる形で横たわっていたが、暗く湿った口内に、口からの光が差し込んでいる。
それはまだ口が開いていることを示していた。
それに気が付いた彼女は、エグゾセが上を向いたままで傾斜がきつい口内を、何とか登って外に出ようとと舌を掴む。
しかし、舌はヌルヌルネバネバの唾液で塗れており、いくら手や足をかけようとしても、全く意味をなさない。
それでも諦めずに手足を動かしていると、突然体の下にあった舌が獣人の体を上に弾いた。
「がっ!」
口内の高さは獣人の腰ぐらいしかなく、決して高いとは言えない。
獣人は上顎の硬口蓋に叩きつけられ、反動と重力ですぐに落ちるが、柔らかい肉の塊である舌が、クッションのように優しく受け止める。
名前の通り、硬口蓋は口の中の硬い部分だ。
そこに彼女は叩きつけられたのだから、痛みは相当なものだろう。
しかし、痛みで悶えている暇は無かった。
エグゾセの口内は傾斜したままだったために、舌に落ちた勢いで、獣人の体が喉の奥に向かって滑り始めたのである。
「あっ…!」
とっさに彼女は舌にしがみつこうとしたが、やはり先ほどと同じく滑ってしまう。
だが今は、勢いがついてしまっているためにさらに止まりにくい。
そのまま彼女は抵抗空しく喉の奥に滑っていき――







ごくっ…





嚥下された。



このシーン要らなかったような……まぁ、折角書いたので載せました。もったいないですもんねw

今回は挿絵無しです
今小説のストックを増やす方に力を注いでいるのですが、出来るだけ挿絵を載せられるように頑張ります!



7話更新時点で1163。231の増です。
皆様ありがとうございます!
今後も、精進していきますw
私は、小説を皆様に見てもらえて幸せです♪
<2012/07/13 19:06 雪風>
消しゴム
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