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SPEC−甲〜召の回− − 旧・小説投稿所A
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SPEC−甲〜召の回−

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「うーん」
未詳のデスクに座って悩んでいた当麻は、キャリーバックから習字道具を取り出した。

「何やってんだよ」
いちいち意味不明な女である。

「あー気が散る。ホント声が大きいんだけど」
当麻はサラサラと筆を走らせた。

『毒殺』

と半紙に大書する。

『ガスクロマトグラフィー』

『心臓麻』

まで書いて、一瞬、筆が止まる。
「・・・・・・」
再び筆を走らせる。

『心臓麻ひ』

「書けないなら書くな」
傍で見ていた瀬文がつっこむ。

『脇先生』

『レモン』

『2億円』

『注射器』

当麻はそれらの書をガッとひとつかみにし、ビリビリに破いて上に放った。
紙吹雪がハラハラと落ちてくる中に、凛として立つ。
紙片の文字が量子学理論上の電子のように多重に重なる。
やがて波動関数上の解を導き出すように、真実が徐々に形作られていく。
アルファベットの渦、渦、渦――。
なぜか元素周期表が当麻の目に認識された瞬間、閃きが走った。
「いただきました!」

   *

『中部日本餃子のCBC』の親父は震撼した。
「あの変な女が言った通りだ...」
完成した巨大餃子のジグソーパズルは、すみっこに1ピース分の穴が空いていた。

   *

スイートルームのテレビに、五木谷急死のニュースが流れている。
脇がソファに座って大画面に映る五木谷の映像を眺めていると、携帯が鳴った。
「はい、脇です...」

「上野です。脇さん、幹事長から補欠選挙に出馬して欲しいとの要請が。正式には葬儀の後になると思いますが」
議員会館からだろうか、上野秘書は声を潜めている。

「私に、ですか?」

「正直なところ、五木谷さんは、人気があまりありませんでしたが、脇さんの人柄は皆知っています。あなたなら、大丈夫、勝てますよ」

「そんな、急なお話で...」

「準備は我々も協力します。では」
電話は切れた。

「・・・・・・」
ややあって、脇はリモコンでテレビを消して立ち上がり、部屋を出た。


<2012/04/30 00:46 mt>消しゴム
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