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狼と狐のち日常 − 旧・小説投稿所A

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狼と狐のち日常
− 『久々にソルを構ってあげようかな』 −
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「なにさ、ソル?」
「黙ってついてこい」

小さな舌打ちを交えながら、ソルが鬱陶しそうに答えた。
リビングから庭へ、向かう先は風呂か。
そこ以外に目的地の候補は無い。
ソルの足取りもそこで間違いない。
しかし、今の時間はお湯は抜いており
入浴するには少々、時間が必要になる。
一体、何が目的か……ソル……

「服を脱げ」
「えっ? どうして……?」
「ちっ、いちいち口答えするな」

脱衣所で強引に押し倒されると
身ぐるみを剥がされるかの様に、脱がされてしまう。

「あまり五月蝿いと、噛み砕くぞ」
「はいはい」

付き合ってるのはこっちだ。
なんて言うと、ソルの事だ。
次の瞬間には肉塊と化してしまいそうだ。
仕方ないな、と言うような態度を隠す事無く、返事を返した。
ガララッ、と扉をスライドさせ、浴室へと身を入れる。
湯の入っていない浴槽が二つ。
蒸気も湯気もない、浴室の視界は澄みきっている。

「あれ……?」

小さい浴槽ー
湯の入っていない筈のそこには液体で満たされていた。

「俺からのもてなし。入ってくれるだろう?」
「え? どうしたのいきなり……」
「べつに良いだろ」

まぁ、折角入れてくれたんだし。
入らないのも悪いだろうし……
あのソルがねぇ……
どこか信じ切れない思いを心の隅に留め
とりあえず、足先を湯船につけた。

「んっ……?」

生暖かい……それに何故かこの液体は皮膚に纏わりつく。
立った泡はいつまでたっても割れない。どことなく粘っこいー
まさか……

「唾液風呂……上がるなんて言わないよな?」

ソルの口角がこれでもかと釣り上がった。邪悪な笑みまで貼付けて。
これはソルの唾液……
この小浴槽を前もって、唾液で満たしていたのか……
そして、僕はまんまと入れられた訳か。
嵌められた……
しかも、相手はソル。反論は……出来ない。

「うぅ……」

唾液に自ら入浴する。
こんな怪奇な行為を行うのは、恐らく人類で僕が初めてだろう。
腿、腹部と粘っこい唾液が体に纏わりつき、妙な生暖かさを与えてくる。
ソルを見上げてみれば……にたり、と満面の笑み。

「日頃の疲れを癒してくれ……なっ!」
「げふっ!?」

正面からソルの前肢が胸を強襲。
抵抗さえ出来ずボジャッ、と唾液風呂に沈められてしまう。
耳、鼻、口を通じて喉、ありとあらゆる穴に
ソルの唾液が侵入し、僕を苦しめる。
呼吸器が一瞬で封じられ、当然の事ながら呼吸が苦しくなる。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

しかし、残虐狼はすぐに唾液風呂の深海から解放してくれなかった。
呼吸困難に陥り、四肢をバタバタさせる僕を
前肢で底に押し付けたまま、離そうとはしなかった。
ゴボゴボと暴れる度に粘る唾液。
厚い膜の泡が上へ、上へと昇っていく。

「っ! げほげほっ!」

酸素が尽き、気絶……寸前にソルは僕を解放した。
すぐさま、水面に顔を出し
唾液を拭い、酸素を貪った。

「殺す気かっ!?」
「そのつもりだったが、気分が乗らなかった」

相変わらず、冗談の欠片も無い。
肩の力を抜く、小さな息を零し体を見渡す。
すっかりソル唾液の粘液鎧を纏い、無数の糸を引いている。

ちっ、前脚が汚れたな、お前に舐め取ってもらおうと思ったが……それじゃあな……」
「それじゃあな……って、お前がやったんだろ!」
「今回は俺が綺麗にしてやるよっ♪」

はくっ……ばくん♪

それは突然だった。
頭から一気に咥え込まれ、口腔に引き込まれる。
引き込まれると……舌の洗礼を喰らう。
ぐちゃぐちゃと何度も舐め回される。
執拗に余す所無く、舐めしだかれる。
唾液を舐め取るどころか、口腔内での唾液分泌は
より過剰になり、染み込ませるかの様に
舌は唾液を纏い、蠢いた。

「唾液まみれでも美味いんだな、お前、くくっ」
「う、五月蝿いっ」

大量の唾液と共に、喉に送られていく。
先に唾液が飲み下され、ごくり……と喉が鳴る。

「あ、そうそう……3日ぐらいは出さねぇからな?」
「えっ……」

 ごくん♪

視界が暗闇に包まれ、柔らかい肉が足を包み込む。

呑み込まれた……
そう気付くのに、数秒を要した……



<2012/04/01 21:40 セイル>消しゴム
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