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狼と狐のち日常 − 旧・小説投稿所A

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狼と狐のち日常
− 『皆のお母さん、菫と飲む』 −
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「菫〜、飲も♪」
「どこかの子供みたいじゃの……」

菫は器用に酒瓶を咥え、自分の土鍋にお酒を注いでいる。
足下に転がる酒瓶……16本。

「もうこんなに飲んだの!? 酔ってるんじゃ……」
「ん? まだまだ素面じゃぞ?」

頬等は全く赤くない。
呂律もしっかりしているし、焦点も問題ない。
16本も飲んでおきながら酔っている形跡は見られなかった。
ソルも椛も6本程でほろ酔いだと言うのに。
菫は蟒蛇(うわばみ)か。

「儂と飲むのかえ? まぁ、良いが……無理はいかんぞ?」
「分かってるよ」

土鍋に注ぎ終わり、余った酒が僕の湯のみに注がれる。
およそ七分目まで注がれた所で酒瓶が空になり
地面に落とされる……17本目として。

「儂と飲めたのは天竜くらいじゃったかのぅ」
「天竜?」
「あっちの世界での知り合いじゃ、馬鹿みたいにでこうての」

こう思うと菫は知人が多いようだ。
椛とは旧友で、ソルとは今件で知人に。
ガレイドも同じだ。
それにこうやって話しているとよく、あっちの世界での
知人について話す事がある。
楽しそうだったり、懐かしんでいたり
悲しそうだったり。

「それがのぅ〜、奴は大事な所におりながら、間抜けな所があってのぅ!」
「そうなんだ♪」

今回は楽しそうだった。何度も思い出しては喉を鳴らしている。
僕は相槌をつきながら、お酒を口に運ぶ。
菫と居るのはやっぱり楽しい。

「今頃は何をしておるかの……」
「……逢いたいの?」
「どちらでも構わぬ。まぁ、逢ったらまた飲み交わそうかえ……」
「そっか……」

考えてみれば’、突然菫達はこっちにやってきた。
今こそこうして、僕が面倒を見る事になって
現状に至る訳だが、菫達は元の世界に戻る気があるのだろうか?
もし、そうならば僕はそれに協力しなければならない。
協力してやりたいのは山々だが……
まるで検討もつかない。
異次元……何が何だか……

「今は……ここにおる事を望むかえ」
「え……?」
「お主は美味いからの♪」

くっ、と菫が土鍋の酒を一気に飲み干す。

「ほれ、飲め。酔い潰してやるからの♪」

次の瞬間、笑顔の菫。
口に突っ込まれる酒瓶。


<2012/03/28 12:19 セイル>消しゴム
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