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狼と狐のち日常 − 旧・小説投稿所A

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狼と狐のち日常

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「それで、どうして僕を誘ったの?」
「あ、いえ……いつも一人で入っていましたので、寂しかったのでは?」
「寂しかったのでは?」
フラウが誘ったには理由がおかしい。
そこは’寂しかったのでは?’ではなく
’寂しかったから’と言うべきではないのか。
「つい、体が勝手に……」
「あ、なるほど」
それなら理由を理解するのは容易だ。
聞いた話では、フラウは拾い子。
そして、その命にも等しい主人を喰い殺す事になったそうだ。
それから長い間孤独に道や町をふらつき
孤独に慣れ馴染めた頃に、こっちに飛ばされた……と。
生まれてから孤独、主人と言う存在を自らの手で殺めた。
他人からの愛情を受けられた期間は極僅か。
そう癒されないまま、再度孤独に叩き付けられる。
まだ、幼い心には相当な負荷になっていただろう。
「ねぇ、フラウ……今は楽しいの?」
その過去を踏まえ、控えめにそう言葉を投げかけてやる。
答えにくいならそれでいい。
「はい……昔が嘘の様に毎日が充実しています。これも菫さん達やマスターのお陰です」
「そう……なら安心したよ」
それで僕は十分に納得した。
充実した毎日を過ごせているならフラウにはこの上ない幸せだろう。
湯気ではっきりとは分からないが
きっと屈託のない笑みでこちらを向いているのだろう。
しかし、湯船に浸かって結構な時間が経つ……
竜族の中でも、水竜は体温上昇の許容範囲が狭いと聞いている。
「はわぁ……」
何とも気の抜けたフラウの声。
もしやと思い、腰を上げてフラウの様子を窺った。
浴槽の縁に頭を預け、天を仰いでおり
頬を紅潮させ、瞼も重そうになっていた
……完全に出来上がっていた。



<2012/03/19 11:26 セイル>消しゴム
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