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捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜 − 旧・小説投稿所A

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捕食旅館へようこそ 〜 ご主人様は肉の味 〜
− 進撃!! 女湯 −
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グチュッ….ぬちゃ…...ぶにゅゥ…

高熱の胃壁が、たっぷり含んだ粘液を惜しげなく擦り付けてくる。
しかも地肌に直接触れるため、毛穴という毛穴にリオレウスの体臭が染み込んでいくような気がした。

「もうここに住もうかなぁ….ハハ….」

広大な肉袋の中で、自嘲的な笑い声が反響する。
しかし再び胃壁の奥に潜り込もうとしたとき、視界が今までよりさらに真っ暗になった。

顔面が押し潰されそうなこの感覚からして、どうやら吐き戻されているらしい。

自分が本当の獲物なら、決して開かないであろう噴門が広がり、着々と食道から喉へ逆流していった。


「(もうちょっと居たかったな……)」





==============



ゴルルルゥ…..グバッ…バッシャァァァン!!

「うわぁぁぁ!!」

ロンギヌスは、9割の唾液と1割の後悔と一緒に吐き出された。
湯舟に頭から真っ逆さまにダイブし、巨大な水柱が星空に散る。幸い、浴槽はモンスター用なので底は深かった。もし普通の深さだったならば、頭からの出血で一泊もしないうちに病院行きとなっただろう。

頭を湯舟から突き出すと、冷えた空気に顔面が凍りつきそうだった。
手でバシャバシャと顔をこすり、馬鹿のようにキョロキョロと辺りを見回す。




「キ…きゃっ、マスター何やってるの!!?」

「あら、じゃあさっき話してくれたマスターってこの方? ふふ….元気ね」

レムリアの声が聴こえる時点で、ロンギヌスはここが女湯だと認識した。
彼女の顔も見ずに大慌てで戻ろうとしたが、男女を分けている竹柵は異様に高く、とても登れそうにない。
振り返ると、獰猛そうな印象のリオレイアがレムリアの横に浸かっていた。


「え、えっと….もしかしてリオレイアさん?」

「ごめんなさいね、主人が悪戯しちゃって…..でも嬉しいんでしょ?」

「えっ…..」

「あらら、そんな恥じることじゃないのよ? ここは『捕食旅館』なんだから」


むしろ一番気恥ずかしそうなのはレムリアだった。
林檎のように顔を赤らめ、ブクブクと顔の下半分を水中に沈めている。


「……いいからマスター…..出てってッ!! ここ女湯よ!!?」

「あら、別にいいじゃない。それとも、見られたら困るものでもあるの〜?」

「そ、そうじゃないけど…...」


こうまでプイとそっぽを向かれると、何だか自分に自信が持てない気がする。
しかし、打って変わってリオレイアは嬉しそうだった。
(大変失礼だが)雌とは思えない強面な顔に、凄まじい引力を持った笑顔を浮かべている。


「ふふ….せっかくだから私も♪」

ギラティナより遥かに巨大な翼で抱き寄せられ、鉤爪で首筋を顎の辺りまで掻き上げられる。
ーーーー愛撫のように優しく、カリカリと。


「ん…..も、もうちょい上で…」

「ふふ…レムリアさん、後ろ向いててくださらない?」

「あ…..もう、だから戻ってって言ったのに!!!」


男湯に腰巻きタオルを忘れたのを思い出した頃には、既に彼女の巨口の中に押し込められていた。
綺麗に生え整った牙が、まるで乳白色の岩々に見える。


「さぁ…..そこに寝転んでもらえる?」

「あ…は、はい…..」

誘い込むような言葉どおり、舌の中央に沿った窪みに横たわる。
背中に触れる温かい肉の感触に、思わず身震いが起こった。
目を瞑りその心地良さを堪能しようとしたとき、鼻の上にベチョッとお湯のような唾液が落ちてくる。


「ふふ…それじゃ試食と行きますか」

「うっ….ぉおッ…!!」

急に舌がゴニュンと持ち上がり、内臓が背中の方へと置いていかれる気がした。
生々しい口蓋にグリグリと押しつけられるが、痛いはずなのに口から飛び出すのは歓喜の呻き。
レウスのときもそうだったが、こうまで巨大な竜の舌で弄ばれると、人間がどんなに小さな存在か思い知らされる。

ンジュッ…とぷっ….

しばらくしてその圧迫感から解放されると、一旦レイアの舌に振り落とされたが、すぐに上から肉布団として被せられる。
世界一大きなゴムまりに潰されているような感覚だ。いやそれも大きさだけでは無い。
程良い力加減、柔らかさ、溺れない程度の唾液・・どれを取っても最高峰だった。

そんな理想郷のような空間で過ごし、リオレイアの唾液にまみれた後は、恥ずかしながら女湯のシャワーで体を洗い流す。

奇跡的に人間の女性客はいなかったが、雌のモンスター達のクスクス笑いの中で垢を落とすのも、充分すぎるほど赤っ恥だった。
レムリアはあくまで他人を装うとしているのか、ロンギヌスとは離れた席で静かにお湯をかぶっていた。




「あ、あの〜リオレイアさん、ちょっと相談が….」

「あらなぁに?」


男子高校生が女湯の暖簾(のれん)をくぐって出てくるのを見られたら大問題。
おまけに服は男湯の脱衣所にある。
その旨をリオレイアに伝えると、彼女はニコッと笑って翼を差し出した。

「ふふ…どうぞ」

「い、いろいろとありがとう…」

赤い保護色の翼に乗っかると、レイアは湯舟に浸かったままで俺を竹柵の向こうへと下ろしてくれた。
今更だが、こんな男女区別の柵を設けても、彼らには何の意味もない気がする。



「あっ、マスター帰ってきましたね」

「きゃ♪ それも真っ裸で♪」

「やっ、喧しい!! もうさっさと出るぞ、湯冷めしちまう!!!!」


念願のタオルケットを腰に巻いて、ガラガラと水滴に覆われた戸を引いた。
湯気に満ちた屋内に入りたいのは山々だったが、レウス夫婦に礼のひとつも言うため、カイオーガ達を先に行かせる。


…..クチュッ….ぬぷ….♪

突如として、背後から熱烈なサウンドが耳に飛び込んでくる。
ロンギヌスが反射的に振り返ると、レイアとレウスが竹柵を乗り越え、唇を糊づけしたように重ね合わせていた。


「んっ……ふふ…♪」

レイアの空色の瞳が数秒だけこちらを向き、パチリとウィンクしたように見えた。


「あ、どうも…..」

それ以上彼らの時間を邪魔したくはないので、一礼するとすぐに戸をぴしゃりと閉めた。





<2012/03/12 03:44 ロンギヌス>消しゴム
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