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ごくん……

二匹目の獲物が右より丸呑みにされた。
深紅の唾液を滴らせながら地獄獣の喉を膨らませた。
口や口腔が三つあるとは言え、喉や食道は一つのようだ。
ベルが通った喉に今度はラッシュが呑み込まれ、再度膨らんだ。
先刻呑み込まれたベルは消化される事無く、胃袋に収まっている為に
後続のラッシュの分を加え、２体分その腹部は膨れ上がった。

「お前も入りたいようだな？」

生物が織り成す弱肉強食の世界の一部を至近距離で目の当たりにした
ライルは　’早く、自分も’　といった様子でまじまじと見つめていたのだった。
それに気付いたフローラは鼻面を寸前まで、寄せ口角を弛ませた。

「う、うん////」

ライルはすっかり興奮しきってしまい、紅潮し声の調子も良い。
捕食を心から望み、はしゃぎそうな子供のようだった。

「姐さんに仕込まれているのか♪　随分と重度な子供だ」

そのままライルの鼻先に自らの鼻先を密着させ、頬を優しく舐め上げた。
味見。というよりも　’今から、捕食してやる’　といったような挨拶の意味合いが強い。
それにてライルはより破顔させ、頬を紅くした。
まるで、フローラに発情しているかの様に。
フローラはその鋭牙を服の襟に滑り込ませ、引っ掛け
衣服を無惨に引き千切った。
流石にライルもそれには驚いたようで、短かな悲鳴を零し
抵抗も無しに上半身を曝け出されていく。

「ふふ、柔らかい肉付きだな♪　ほらっ」

慣れた様子で胸板に舌を這わせた。
柔らかい肉にまだ薄さを感じさせるその肌に
獣の唾液が塗り込まれていく。
舌の道には這う分だけ、粘つき光明を反射する唾液が残されていく。
時折ぐじゅぐじゅ、と舌と肌間で生々しい音が爆ぜ
見るからにねばねばしい厚い膜の気泡が残される時もあった。
舌は全身を味わう様に蹂躙し、脇に潜り込んだ。
舌上に広がる味蕾がそこをくすぐる様に何度も舐め上げた。

「ひゃぅう//// あぅ……」
「可愛い奴め♪　姐さんにもそうやって調教されたのか？」

脇のほうに身を捩り、幼さの感じさせる高めの声を漏らすライル。
その表情には満面の笑みで、かなり嬉しそうな印象を受ける。

「ほら、反対もやってやる♪」

舌を引っ込めて反対側……と言う訳ではなく
性感帯に舌、舌裏にじっとりと唾液を塗り込む様に這わせ舐めながら
フローラの舌は反対側の脇に向かう。

くちゅくちゅ……ぬぷ、ぬぷ……

「あっ//// ひゃぁぁ//// くす、くすぐったいよぉ////」

反対側の脇間も余す事無く、入念に舐めていく。
唾液でコーティングされた脇では唾液や舌、皮膚や味蕾が擦れ合い
淫らな水音を発生させていた。

「もっと、気持ち良くさせてやろう♪」

すっかり喘がされたライルが休息を貪る事は赦されなかった。
フローラはその舌を休ませる事無く、今度は首筋を責め始めた。
脇よりも感じ易く、ライルは体を弓なりに震わせた。
悪寒にも似た快楽の波がゾクゾクっ、とライルに襲いかかり
その結果が今のライルの状態だった。

ぬちゃぁ……ぬちゅぅ……くちっ、くちっ

異なる卑猥な水音を生む舌の舞踊は、ただひたすたにライルの性感帯を弄び
何度もライルを喘がせた。

「随分と喘いだな……解れたようだし、そろそろメインディッシュだ♪」

軽い荒息を続けるライルをしっかりと正面に見据え
フローラは異次元の門を開いた。
外気とは１８０度、雰囲気の異なる世界。
生物さを感じさせる生々しい明度の低い紅い世界。
所々に血管が走り、その世界のリアルさを醸している。
そこから零れる生暖かい空気は体に纏わりつき、じっとりとした質量を感じさせた。
上下左右に広がる鋭牙は随分、過去の血液が酸化し赤黒くこびりつき
生物の生臭さを感じさせた。
そんな、他者の体内という別世界の入り口がライルの目前に展開されている。
その狂気の門は獲物を今か今かと待ち侘びて、休息を忘れた様に激しく蠢いている。
鋭牙には唾液がコーティングされ、下顎や床上にねっとりと滴り落ち
舌は止まる事無く分泌された新鮮な唾液をぐちゃぐちゃ、と掻き混ぜている。

「//////」

喰われる獲物であるライルは両手を拳に、頬に添え
声を上げられない程、歓喜していた。
今まさに、この鋭牙や溢れんばかりの唾液に塗れた舌
掻き混ぜられ、生々しい音を奏でる口腔内が呑み込んでくれるのに



ライルはこの上ない至福を感じていたーーーー

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