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【保】神々の戯れ〜散々な海外旅行〜 − 旧・小説投稿所A

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【保】神々の戯れ〜散々な海外旅行〜

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「ふーんだ!もう月夜兎なんか知らない!この森で野垂れ死んじゃえ!」

水神は竜の姿となると、月夜兎のことを置いて飛び立ってしまった。
去り際に強烈な尻尾ビンタを食らわすのを忘れずに。

「うぼぁッ!!ほ、方向音痴のナビなんざいらねぇよ!」

月夜兎も捨て台詞を吐いてそこから立ち去った。

「さてと」

月夜兎は頭にかぶっていたニット帽を脱ぐ。
すると兎特有の長い耳がピョコンと姿を現した。
耳を動かして辺りを探り始める。

「あっちの方が賑やかだな。あっちが人間の集落っぽいな」

音で人間の集落の方向を察知した月夜兎は、そちらに向かって歩き出した。
しばらくトボトボと歩いていた月夜兎だったが、急にハッとしたような顔になって立ち止まった。

「誰だ!?」

月夜兎は後ろを振り返るが誰もいない。
だが月夜兎は確信していた。
誰かが自分を尾行しているということを。
でも一体誰が?
水神、ではなさそうだ。
ひょっとして人間か?
世の中には人ならず者たちを追い求める風変わりな連中がいる。
面倒だから逃げるか。
そう思った月夜兎が駆け出そうとしたまさにその瞬間であった。
何かが月夜兎めがけて飛びついてきた。

「どわぁーッ!!」

静かな森に月夜兎の悲鳴が響き渡った。


「どわぁーッ!!」

「月夜兎?」

悲鳴は水神の耳にもハッキリと聞こえた。
どうせ熊とかに襲われたのだろう。
まあ月夜兎は不死身だし、大丈夫か。
一度はそう思った水神だったが、空中でホバリングして悲鳴がした方向に顔を向ける。

「な、何あれ!?」

黒い塊がこちらに向かってくるのが見えた。
それはカラスの群れだった。

「うわッ!」

さすがの水神も思わず声を上げて手で顔の辺りをガードする。
カラスたちは水神を無視するかのように通過していった。

「ビックリしたな、もう」

水神はソッと顔から手を外す。
今のカラスたち、何かから逃げてるみたいだった。
ひょっとして私が考えてることとは違う事態が起きたのかもしれない。

「月夜兎!」

先ほどまで喧嘩していたことなど忘れて水神は一気に月夜兎の悲鳴が聞こえた方角へと羽ばたいた。
水神は目をこらしながら月夜兎を探す。
それから数分後。

「あれは……!」

水神は急降下して地面に降り立った。
そこには見覚えのあるニット帽があった。
間違いない、これは月夜兎の物だ。
人間の姿に化けても何故だか耳だけ元のままの月夜兎のために自分が作ってプレゼントしてあげた物だからハッキリ分かる。

「月夜兎!どこにいるのー?」

水神は大きな声で月夜兎のことを呼ぶ。

「あれ?これ何だろ?」

何気なく地面に目をやった水神は不自然な痕跡を見つけた。
それは足跡だった。
だが非常に大きなもので、水神のものよりも大きい。
ただドラゴンの足跡とは異なっていた。

「私たちよりも大きな生き物だなんて−−」

突然後ろから何かの気配がした。
水神は慌てて回避しようとするも間に合わず、あろうことか組み伏されてしまった。



<2011/12/05 23:11 とんこつ>消しゴム
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