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【保】誰という姿 − 旧・小説投稿所A

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【保】誰という姿

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はっきり言って不味い。だけど食べれない訳じゃない。
「うん・・そう・・ゆっくり・・」
健や軟骨などの硬い部分はガルルモンが噛み砕いており、肉自体も細かい。
十分に噛み解されて、衰弱した状態でも咀嚼は簡単だった
ゴクリ・・
「いい仔ね・・でも・・ごめんね・・本当はもっと美味しい物を食べたいでしょう・・・?」
どうしてか分からない。僕は泣いていた。
大粒の涙をポロポロと流していた。
「・・どうしたの・・?」
戸惑うことなくガルルモンは笑顔で僕を覗き込む。
「・・何・・でも・・ないっ・・・」
「ねぇ・・ぼうや・・名前は・・?」
僕は声を上げずに黙って首を横に振った。
「・・親は?はぐれたの?」
両親なんていない。僕はもう、一人だ。
首を横に振る。
「そう・・・寂しかったね・・辛かったね。
もう、大丈夫・・ぼうやは一人じゃない。」
と、ガルルモンは僕を抱きしめる。
確かな温もりが僕を暖めてくれる。
「お姉さん・・・お肉・・食べたい・・」
僕は頬を赤らめ、控えめな声を上げた。
ガルルモンは背中に回した両前脚を戻し、笑顔で僕の頭を撫でてくれた。
衰弱した見ず知らずの僕の為に死体を貪り、丁寧に血を抜き、硬い部分を噛み砕き、噛み解す。
そして、僕を気遣いながら口移す。
甘く、優しい口づけ・・・

 * * * 

白銀に煌めく月。白銀の月光が深淵の闇夜を照らす。
僕は両膝を腕で抱えて、その月を見上げていた。
早くも姉さんと出会って二ヶ月だ。
だけど、僕の頭の枷は外れない。
ー僕は何者なのだろうか?ー
外見はガブモン。中身はなんなのだろうか。
忘れてなければ、思い出せずにもいた。
溜息を一つ。両膝を寄せ、身を縮ませる。
ぼうっとただ前を見つめる。
「・・眠れないの・・・?」
「うん・・」
姉さんが僕の隣に寄り添う。
何時もなら一人で眠れるのに、今日は何故か眠れなかった
嫌な胸騒ぎがして、恐くて、恐くて。
「姉さん・・一緒に寝てくれる・・?」
「フフッ・・いいよ・・」
横になった姉さんのお腹に頭を預ける。
暖かい・・自然と心が安らぎ、僕は知らない間に眠りに落ちた。

 * * * 

「貴様も強情な奴だ・・懲りずにまだ身寄りのない子供を育てているのか?」
「貴方には関係ないっ!ここから去れ!ガイアっ!」
僕と姉さんの前に現れたのはエアロブイドラモン・・・ガイアだった。
その顔に冷徹な笑みを浮かべ、僕らを見据えている。
「そうはいかぬ。貴様の子供を貰いに北のだからな!」
貰いに来た・・?どういう事・・?
「ぼうや、絶対に出てきてはダメよ!ガイアに捕まったら最後よ・・」
木の陰に隠れた僕は生唾を飲んだ。
不安と恐怖の入り交じった姉さんの声に捕まれば最後・・その言葉はそうさせるに十分だった。
「フォックスファイアー!」
姉さんがガイアに蒼炎を放った。
「己の力の差を知ろうとしない愚か者め。」
その蒼炎は右腕一本でねじ伏せられた。
そして、ガイアはすぐさま姉さんに闘気の鋭利な刃を放つ
「ぐあっ・・・ま、まだっ・・」
その一撃で姉さんは重傷を負う。けれど体を奮い立たせガイアに立ち向かう。
「あ、あなたに・・あの仔は渡さない!」
「・・私の恩恵で生かされているというのに・・・伏せているがいい!」
「あがっ・・」
立ちふさがる姉さんをガイアが腕で地面に叩き伏せた。
悲痛な悲鳴と、土埃が舞う。
「姉・・・」
「ダメ!私の事はいい!逃げなさい!早く!」
「・・・っ!」
拳で空を握り、ギリッと奥歯を噛みしめた。
絶対に捕まるものか。僕は姉さんと日常に帰るんだ。

 * * * 

「はぁ・・はぁ・はぁ・・・」
ここは木や茂みが多く逃走にはもってこいだ。
幸いまだガイアに見つかってはいないが、あっちの気配は感じられる。
ガサッ・・ガサッ・・
と、突然目前の茂みが音を立てて揺れだした。
「まず・・」
足が竦んで身動きが出来ない。
ドクン・・ドクン・・・ドクン・・
体も一瞬に緊張し、心臓が激しく脈打つ。
ガサッ・・・ガサリ・・
ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・
しかし、次の瞬間に僕は安堵した。
胸に手を当て、重い息を吐き出した。
茂みから現れたのは僕にとって無害のデジモンだった。
「よかった・・ガイアじゃなくて・・」
トンッ・・
その時、両肩に何かが触れ、喉元には硬く、鋭い何かが突きつけられた。
そうして・・僕は戦慄を覚えた。酷く恐怖し首すら動かせない。
「見つけたぞ・・私なら此処にいるぞ?」
ガイアが顔のすぐ側で口元を緩ませた。
「あの時、喰わずにいたのは正解だった。こんなに美味そうに成長してくれていたのだからな・・」
ベロリッ・・・
ガイアの舌が僕の頬を舐め上げる。
生暖かい唾液が毛に吸われて、じんわりと伝わり、粘ついた。
「ぅ・・ひぃっ!!」
「下手に動くと爪が喉笛を裂いてしまうぞ?」
上半身は腕一本で押さえられ、下半身、両足には尾が巻かれ、その上、急所を爪で取られていると来た。
僕の力では到底振り解けない。
もし、振り解けたとしても、辺りは木々が少なく、茂みも少ない。さらに見通しがよい広場のようだ。隠れる場所が少なかった。
森に逃げ込んだはずなのにどうしてこんな場所に?
「“ガブモン”か・・確か、私好みの味だったな。」
そうか・・僕はガイアの手中で踊っていたんだ。
追いかける振りをして此処に僕を誘導していたんだ。
ーガイアに捕まったら最後ー
姉さんの声が鮮明に脳裏をよぎった。
もうダメだ・・僕は死ぬ・・



<2011/11/25 21:36 セイル>消しゴム
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