テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル


バベルの塔 − 旧・小説投稿所A
RSS | 感想 | TOP
バベルの塔
− 繋がらない方程式 −
|<< < 8 / 33 >>|


バビロンの滑らかな黒の肢体が、ガクンと膝を折って倒れる。その口元から滴っていたのは、勝者の涎などではなく、紛れもない敗者の鮮血だった。


「ハハハ…そもそも単独犯で我が社を打ち倒そうとすること自体が間違いだ。君は単なる、前世紀の遺物にすぎない。そろそろそれを自覚したまえ」

「…ッ……フフ…随分と好き放題言ってくれるじゃないか……赤字すら乗り越えられない間抜けが…」

「黙りたまえ」


四人の戦闘員を背後に従えて、幹部男はキッとした視線を向ける。満身創痍のバビロンの身体には、百を超える傷が生々しく光っていた。胸元にあるもっとも重い傷口に唾を塗りながら、自分を見下ろしてくる男にほくそ笑む。


「少なくともここを廃墟にするまでは….私は黙らない」

「…まあその野望が潰えるのも時間の問題だと思いたまえ。おい! 連れていけ!」


裏カイオーガとアルセウスが動き、サッとバビロンの両側へと移動した。もちろん肩を貸す、などといった温厚な対応はしてくれない。ただ逃げ出せないよう目を光らせ、必要とあらばムチ打って歩かせるだけだ。


「さぁご案内しよう……新社長の御前へ」





=============





上層階でバビロンが敗北を遂げた頃・・・・
未だに社内への侵入すらままならないロンギヌス達と、ギラティナは合流を果たしていた。青リンゴのように明るい緑の眼と、いつもと何かが違うギラティナの様子に、カイオーガも目を丸くするばかりだった。


「ギ、ギラティナ…..だよね?」

「うん」

「いや、その時点でおかしいだろw」


頭をぶつけて性格が180度反転してしまったのか、何かに取り憑かれてしまったのか(正解)。
とにかく、あれほど闘いを嫌っていたギラティナが来てくれた。カイオーガと伯仲した戦闘力と、何より彼は巨大な「翼」まで持っている。立ち往生を強いられていた彼らにとって、願ってもないことだった。


「じ…じゃあギラティナ、俺らを上まで運んでほしいんだけど…」

「ふぅん……お安い御用さ」


はたから見れば薄気味悪い6本の触手が、翼となってその真価を発揮する。
ギラティナは空中でクルリと背中を向けると、乗りやすいように高度を低くした。ロンギヌスとカイオーガは彼の背中に張りつき、振り落とされないようしっかりとしがみ付く。



「よし……それじゃあ出発進行!」

「…その前にひとつ聞いてもいいかい? なんで入れないんだ?」

「いやぁ〜、バビロンがコンピュータウィルスを拡散させたらしくて….俺らまで汚染されちゃ困るからな」

「…なるほどね。つまり触ったら伝染してしまう、みたいな?」

「頭いいな、お前って」

「え….ちょ、ちょっと待ってください!!?」


素っ頓狂な声を上げたのは、柄にもなくラティオスだった。指先を顎に押しつけながら、深刻そうな表情で空気を見つめている。





「……せ、接触するだけで汚染してしまうんですよね。それじゃ…..バビロンさん本人は?」

「「………あッ…!!!」」


状況がピンと来ないギラティナ以外、その場にいた全員が凍りついた。
もしこれから助太刀に向かう仲間が、ウィルスという名の泥に塗れていたら?
そしてその害が自分にも及び、発狂することとなったら?



「ウィルス作成者は、万が一の事態のためにワクチンも造るのが普通です。そしてそれをあらかじめ自分に打っておき、自分の安全を確保してから行動を始める……ですよね?」

「そ、そうだけど…」

「でもあの落ちてた設計図には、ワクチンについては一言も書かれていませんでした。だからもしかして……」












「だ、大丈夫だろ! 設計図は別の紙に書いてたのかもしれないし….それに、自分が撒いたウィルスの海に飛び込んだら自分も汚染されることぐらい、あいつなら計算できるだろ!?」

「そ、それは….そうですけど……でも絶対とは…」

「いいから早く出発しよう。ここで時間を潰してちゃ、バビロンがどうこう以前の問題だろ」


ガチャン!!!! バラバラバラ…


ギラティナの驚きと、ロンギヌスの落胆のため息が交差した。ギラティナの背中にしがみ付くはずが、勢い余ってメモリケースをぶち撒けてしまったのだ。色とりどりのメモリが、アスファルトの地面に降り注ぎ転がる。



「あれ….マスター、メモリ全部持ってきたんですか?」

「あ、当たり前だろ! 何が起こるか分からないし…」

「ちょっとそれ、拾わないでください!」









「足りないや…….」

「何が?」

「マスターのメモリは26本。でもマスターが今転がしたのは25本。明らかに一本足りませんよね」

「いーち、にーい、さーん………あッ、本当だ!」


カイオーガもそれを数え直し、ラティオスの発言が間違いではないことを証明する。つまり考えられるのは、来る途中で落としたか、出発前に無くしたかだ。


「ちっくしょう….もう拾っていいか?」

「え? ええ……」

「もうこれ拾ったら出発しよう。流石にそろそろバビロンに追いつかないと」



手早くメモリを回収すると、ロンギヌスは再びギラティナの背中に乗り込んだ。その後、彼の指示でギラティナは舞い上がり、上層階への近道をまっしぐらに飛んでいった。

ラティオスも沈黙したまま思慮深い顔を浮かべていたが、諦めたように首を振ると、翼を広げ後に続いた。






<2011/10/25 23:49 ロンギヌス>消しゴム
|<< < 8 / 33 >>|

TOP | 感想 | RSS
まろやか投稿小説すまーと Ver1.00b