テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル


バベルの塔 − 旧・小説投稿所A
RSS | 感想 | TOP
バベルの塔
− 笑いは涙へ、希望は塵へ −
|<< < 3 / 33 >>|

ー 第二話:笑いは涙に、希望は塵に ー



「ねぇギラティナ、『緊急』ってどう書くんだっけ?」

「え….こ、こうだが…」


ギラティナは「何だいきなり」の表情で、翼の先で宙に「緊急」
の文字を描いた。その直後、思わず耳を押さえてしまうような大
音量で、ブザーが鳴り響いた。


ブーッ!! ブーッ!! ブーッ!!

『全隔壁を緊急閉鎖します。全職員は直ちに退避してください。』


「ねぇねぇギラティナ、『退避』ってどう書くの?」

「・・・・・・」


するとロンギヌスが恐ろしい形相でリビングに飛び込んできた。数秒
遅れてラティオスも入って来る。ゼェゼェと息を切らしているにも関
わらず、ロンギヌスは今起こっている事態、そしてバビロンの意向を
みんなに告げるのだった。






ーーーーーーー






「ええっ!? じゃあバビロンが迷子なのって…」

「あ〜、厳密には迷子じゃなくて行方不明です。一応、大人ですしね」

「結局は復讐なのね…..バイオリック社に対する」

「なんという事だ……...」


リビングを一斉に包み込む感傷。争い嫌いのレムリアを除いては、
皆バビロンの気持ちを肯定しているようだった。



「やっぱりクシャルダオラの子はクシャルダオラなんだよね〜」
「長ったらしいですね、それ」

「よし! じゃあ今度はバビロンの応援に…」

「待って!」
「ちょっと待った!!」


ロンギヌスが戦意の炎を燃えあがらせた瞬間、レムリアとギラティナ
が同時に声を張りあげた。






「……また、闘うのか?」

「え?」

「またこのリーグを離れ、幾人もの敵と闘うのか?」

「だ、だってバビロンは……俺らの大事な…」

「それでも!!! …..それでも、もう嫌なのだ….…もう…戦闘は…」


黒い折り紙が破れたような翼を、シュンと力なく垂らすギラティナ。
床に目を落とした彼の頬に、レムリアはそっと指を添えた。


「レムリア……」

「私も同じ意見よ。今まで誰も傷つかずに、戦況を越えてきたこと
が一度でもあった? あなた達はみんな強い、でも今度は……今度は
レベルが違う。バビロン以上の強さを持った人工竜を、彼らは何百
匹も備えているのよ!? 私達がバビロンにすら大苦戦したの、忘れ
たの!!?」


珍しく大きな声を出した為か、レムリアは小さく「ごめんなさい」
と呟いた。喋る隙を見つけたロンギヌスが、重い口をここぞとばかり
に開く。


「で、でも…!! このままじゃバビロンが危険だし、放っておくなんて…」

「私は前々から気になっていた….マスターは死を恐れないのか、
それとも死を知らないのか。何千人もの死者を見てきたが…....
チャンピオンとはいえ、普通の高校生が取るような行動じゃない」


ギラティナの言葉に貫かれ、ロンギヌスは凍りついた。「変人」を
指摘されるのは日常茶飯事だが、彼の口から言われるとまた違って
聞こえる。ギラティナは続けた。


「だから、私はマスターやカイオーガに惹かれたよ。自由奔放で、
喜怒哀楽で、マイペースで。二人とも私の宝物なんだ、だから….失
いたくない….」

「じゃあバビロンは失ってもい…!!」

「そうは言ってない! ただ一つ言わせてもらう、私の生来の仕事は、
死者を悼みあの世に送るであって、死者を増やすことじゃない!」



吐き捨てるようにそう言うと、ギラティナは深い溜め息とともに涙
を拭った。普段は冷静な彼の熱弁だけあって、その場にいた全員が
ゴクッと生唾を飲んだ。





・・・・・・・・






「…そっか。じゃあ居ていいよ」

「「…え?」」

「俺は命令も強制も、嫌いだからね」


病人のような声でそう言い放ち、ドアをぴしゃりと閉めて出て行くロ
ンギヌス。ラティオスは一瞬だけレムリアを見遣った後、同じくロン
ギヌスに続いた。カイオーガだけが、扉とギラティナ達の間にポツン
と立ち尽くしている。



「ぁぁん….えっと….ボクは…」

「カイオーガ….血が観たいのなら私を引き裂いていい!!!
私はお前を….失いたくない…」


歯を食い縛っても、涙を抑えることは出来ない。




「頼む、分かってくれ! 昔話で笑い合えるのは….もう、お前だけなんだ…」




・・・え?




「…ど、どういう意味……」

「今まで黙っていたが…お前を捜している間に風の噂で聞いた。
ルギアもゼクロムも、五年前にバイオリックに殺されて死んだと!!!」






ーー二人の間に流れていた時間が、電池の取れた時計のように止まった。
カイオーガは目を見開き、ギラティナは涙を呑んでいる。レムリアは会話
の内容が理解できないものの、幸福な報せではないのは勘づいていた。


ーーーーーーーそして・・・











「またまたぁw 冗談上手いんだからギラティナは」

「…!? いや、本当なんd…」

「どっちにしても僕は行くよ。バビロンを、ゼッタイ助けるんだ♪」


ニッと笑顔でそう宣言すると、踵を返してロンギヌス達と同じく部屋
を後にした。ギラティナは世界が崩壊すると知ったかのような、唖然
とした表情を浮かべていた。勿論、哀惜と悔しさに埋もれながら。



「あの、ルギアとゼクロムが誰なのかは知らないけど….あくま
で風の噂なんでしょう?だったら間違いって事も…」

「ハハ…..バイオリックの名は出さなかった方が良かったか…」

「えっ?」


限界を突破した悲しみが、ヒクヒクと頬を吊り上げる。何故か止め
ようもない笑いに、ギラティナは涙を滝のように溢れさせていた。








「私なのだ。あいつらの遺体を引きずって、冥界に連れていったのは…」







ーーーーーーー







「まったくギラティナもネタ考えてよねぇ〜? 旧友を勝手に殺し
ちゃダメだよ♪」


陽気なスキップ調子で廊下を進んでいるカイオーガ。ギラティナ
の冗談を嘲笑しながら、らんらんとロビーから外に出ようとした。
だが自動ドアが彼を感知する直前・・・・・・



ポロッ…

「えぁッ……」


ロビーの床にこぼれ落ちたのは、一滴の雫。
舐めればしょっぱいであろう、一滴の雫。
カイオーガの眼から漏れた、一滴の涙だった。



「だ、だって嘘だもん。証拠ないしね。バッカみたいだ…」


気を取り直してリーグを出ようとするが、再び視界がぼやける。


「目…目が痒いんだ….そうに決まってる….埃でも入ったんだよ….」


それでも涙は止まらない。ヒレでゴシゴシと擦っても、後から後
から染み出してくる。


「…う、嘘だよ♪ 嘘だ….大嘘……嘘っぱちだ…」




・・・・・・



出来る限りの現実否定はした。
出来る限りの我慢はした。
出来る限り、リビングからは離れた。よし、準備完了。

あとは・・・









「う……えぇぇぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁaaaaaaaaaaaaahhhhhhhh!!!!!!!」



ーーーーーあらん限りの、慟哭を。





<2011/10/13 20:15 ロンギヌス>消しゴム
|<< < 3 / 33 >>|

TOP | 感想 | RSS
まろやか投稿小説すまーと Ver1.00b