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神々の戯れ〜水神の苦手なもの〜 − 旧・小説投稿所A

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神々の戯れ〜水神の苦手なもの〜

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水神の父はゆっくりと、しかし威圧的に日戸に巻き付いて締め上げ始めた。

「かはっ、くるひぃ……」

「こんなものまだまだ序の口だ」

早くも音を上げる日戸をさらに絶望に突き落とすような答えだった。
ミシッミシッ、という骨の軋むような音も聞こえてくる。
だがその辺りの力加減は絶妙で、骨を折ったり潰さないように配慮しているようだった。

「なあ、水神の親父さん、人間を虐めるの慣れてるように見えるんだけど」

「昔はけっこう人間のことからかってたらしいよ。まああくまでも龍からしたらのからかいだから、人間からしたら冗談にならなかったのも多そうだけどね」

月夜兎と水神は完全に高みの見物を決め込んでいた。
一方の水神の父はすっかり日戸をいたぶることに熱中してしまっていた。

「さあ、お遊びもこれでおしまいだ」

水神の父はほくそ笑みながら日戸へ顔を近づける。

「うわぁーッ!!」

日戸は絶叫したが、数秒後にはほとんど聞こえなくなっていた。
何故なら日戸は完全に水神の父の口の中へと収まってしまったからである。
水神の父は舌を器用に使って日戸の着ていた服をズタズタに裂いてしまった。
余談だがこれは水神がまだ取得出来ていない高度なテクニックである。
生まれたときの姿となってしまった日戸は怯えていた。
生きたまま食われるなんて想像もしたくない。
だが無情にも水神の父の舌は動き始めた。
それは物を飲み込む時の動きであった。

「ヒィーッ!」

日戸は悲鳴を上げるが、突然舌の角度が平坦となった。
ホッとしたのも束の間、また舌の角度が物を飲み込む時の角度になる。
だがまたまた平坦になって、またまたまた角度が変わって……。
その都度日戸は情けない悲鳴を上げる。
そう、水神の父は遊んでいたのだ。
絶対的な力の差があるからこそ出来る遊びである。
しかしやがて飽きたのか、水神の父は何の予告もなしに呑み込んでしまった。

「あっぷ、わーッ!」

食堂を経て胃へ辿り着いた日戸。
中はもちろん真っ暗で、どことなく酸っぱい臭いがする。
だが呑み込まれたら胃にたどり着くのは常識なので、日戸は発狂したように泣きわめき始めた。

「あーらら、せっかく胃壁の気持ちよさを堪能出来るチャンスだってのに」

「食われてそんな風に考えるのは月夜兎だけだよ、まったく」

水神はふと所長がまだ放置されていることに気付いた。

「そういえばその人間どうするの?」

「あっ、すっかり忘れてたわ」

月夜兎は足でげしげしと所長を蹴る。

「そうだ。ねえ、月夜兎もたまには捕食者になってみない?」

「えっ?」

水神の提案に月夜兎は驚いた。

「お父さーん、私たち先に帰るねー!」

そう伝えると水神は月夜兎と所長を背に乗せて空へと飛び立った。

「水綺と月夜兎くんがいないなら、もう少し遊んでもよさそうだな」

水神の父は少しだけ膨れるお腹を触りながらニヤリと笑みを浮かべた。


1ヶ月以上も放置していてスミマセンでした。あらためましてよろしくお願い申し上げます。
<2011/12/20 21:56 とんこつ>
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