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消えた理性03 〜幼き過去よ、眠れ〜 − 旧・小説投稿所A

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消えた理性03 〜幼き過去よ、眠れ〜

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「えぐっ!…うぐっ!…うわあああん!」

豊かな緑に包まれた場所に幼い泣き声が響き渡る。

「うっせえんだよガキ!死にたく無かったら黙ってろ!」
ドガッ!

幼き顔を殴る、無情な拳。その持ち主は
凶悪な顔つきをしたポケモン、ニドキング
だった。

「ううっ!いたい…いたいよぉ…」

すすり泣いているのはカイオーガ。まだ体が小さく、顔にも無邪気さが残る。
「けっ!幾ら子供とはいえこれが伝説のポケモンの様かよ…なあ?」
「全くだな…こいつの友達とかいう奴も
全然歯ごたえねえし…」

その言うとニドキングの悪友、ヘルガーは、カイオーガの隣に倒れているポケモンを見つめた。リオルとキモリである。
2人とも傷だらけで、ぐったりとしている。

キモリが弱々しく言う。

「カイ…オーガに…触る…な。」

しかし2人は気にも留めない。
…ぐうううう…
「あ、やべ、腹減っちまった。」
「俺もだよ。何か喰い物は…」

一瞬の沈黙…そして…

「「あった。」」

ニドキングはリオルを、ヘルガーはキモリに向かって大口を開け、一気にくわえこんだ!

「ぎゃ…ぎゃあああ…!」
「ぐえええええ…!」

2人は食い込む牙の痛みに、叫び声を上げた。

「へへっ!結構美味いじゃねえか…」
「癖になりそうだぜ…」

その様子を見ていたカイオーガは、

「やめて!やめてよぉ!食べないで!
ねえ!」
必死に助けを乞う。だが…

…ジュル、ジュプリ
二人は瞬く間に口内に引き込まれ、
くぐもった悲鳴が聞こえる。舐めまわされているようだ。

「ウアア…ムワア…ムムウ…」
「ヤ、ヤメ…助けてぇ…」

「へへへ、そろそろ呑み込むか?」
「ああ、おもしれえ」

「お願い!やめてよお!エグッ!2人を出してぇ!」

カイオーガの願いも虚しく…

ゴクリ!
2人の喉が大きく膨らみ、ズルズルと落ちていった。

「あ、あああ…うそ…」

「嘘じゃねえぜ?二人は死んだんだよ!」
「ククク…」

ヘルガーがカイオーガの喉を軽く噛み、
無理やりニドキングの腹を見させた。

胃の中でまだ抵抗しているようだが、
だんだん膨らみが小さくなっていくと、
動かなくなった。

「や、やめてぇ…!こんなの見せないでよぉ…ヒグッ!」

「ま、食物連鎖だからしょうがないよなぁ〜?」
嫌みったらしく言われたその言葉は、
カイオーガの心を槍のように貫いた。

「僕の…エグッ!…初めての…友達だったのに…ウグッ!」

気弱で優しすぎるカイオーガは、この森有数のいじめられっ子だった。友達はおらず、ずっと親だけに育てられてきた。
しかし親が亡くなった後、
優しく声を掛けてきてくれたのが、リオルとキモリ……だった。


「さーて?こいつはお前にやるよ。
ヘルガー。俺もうさっきから喰いすぎた。」

「俺もだ。もう食べられねぇよ。」

…チッ…
舌打ちの後、ニドキングは言う。

「おいガキ。今回は見逃してやるよ。
せいぜい感謝するんだなぁ!ハハハハ!」
「フハハハハ!」


2人は去ろうと後ろを向く。



<2011/05/15 13:37 ロンギヌス>消しゴム
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