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意識が変わるとき - 旧・小説投稿所A
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意識が変わるとき
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今、この王国では、全ての大陸を巻き込む戦争が起こっている
ある者は武器を用いて戦い、またある者は自らの身体に備えられた牙や、爪で戦う者もいた
来る日も来る日も、彼らは互いに激しくいがみ合い、そして大規模な戦闘を繰り返していた
――首都から遠く離れた町、『カナール』――
人口は、都市と比べるとさほど多くはないが、近くに鉱山があるため、刃物等の武器を数多く作っている
そのためか、その物品を求めて、大勢の兵士や旅人がやって来る。結果的には、町はほぼ毎日賑やかだった
その町に、『パッション』と呼ばれる旅人たちに愛されている酒場に、先月入ってきたばかりの新人がいた
「おーい、リオル! これ、あそこの客に届けてきて!」
「はい! 分かりました!」
そう、その新人こそが彼、『リオル』なのである
リオルは、木のトレイに乗せられた小麦粉の真っ白なパンと、透き通った紫色をしたぶどう酒に、ゴクリと唾を飲み込んだ
無理もなかった。彼は一日に一回食事が出来るか出来ないかというほど、お金に余裕がなかったのである
今月はまだ先月分の給料があるため、少し余裕ができたが、苦しい生活には変わりはない
よだれがこぼれそうになるのをグッと堪えながら、リオルは指示された事をやり遂げた
「兄ちゃん、腹空いてるのか?」
食べ物を届けた客に突然聞かれ、リオルは思わず『えっ?』と、声を出した
「ほら、少しこのパンやるから頑張りな」
そう言うと、その客は少しと言いながらも、パンを半分以上に千切り、その大きい方の塊をリオルに差し出した
「で、でも……」
「いいから、いいから」
ニカッと明るい歯を見せながら、客は笑った
「あ、ありがとうございます」
そう言って、リオルは席を後にした
パンからは、大地の恵みが作り上げた、小麦粉の芳醇な香りが放たれ、リオルの鼻をくすぐった
たまらずにリオルは、店の中にあるスタッフルームに戻り、その真っ白なパンにかぶりついた
口の中に、麦の香ばしさと、ほんのりと甘い味が広がる
こんなにも、真っ白なパンは、買ったことがないし、食べたことも滅多にない
しばらくは、その幸せな気持ちに包まれていたリオルだったが、先輩の大きな声のお陰で、まるで泡のようにパチンッと弾けてしまった
<2011/07/27 20:59 ルカ>
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