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【保】ヤマタノオロチ − 旧・小説投稿所A
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【保】ヤマタノオロチ

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「知っていたとしても、それが真実かどうかはわかりませんよ?」


「…どういう、意味ですか?」


そう聞くとカイリューは顎に手をあて、少し考え込んでしまった。
しかしすぐに顔を上げてこう言ってきた。


「少し長くなりますが、聞きますか?」


「……はい。聞いてみたいです」


長くなるかどうかは関係ない。何故真実かどうかわからないのか、それを聞きたかったから。
言われた時、何故か自分を否定された気もしたから少しムキになっちゃって…。


「では…まず歴史と言うのは、すべてがすべて事実ではないのです。いきなり難しいことを言うかもしれませんが、それは本当のことなのです。
 歴史というのはほとんどが書物で記されてることがあります。昔を知るにはそれを頼るしかありませんが、そこに嘘を書きこまれていたら…」


「けどそれを頼るしかないのなら、結局手掛かりはそれしかないんじゃ…」


「だから、あなたのように真実を求める人は「調べる」ということをするんです。もし私が言う言葉の中に嘘が紛れていたら、どうですか?
 それをそのまま鵜呑みにすることは出来ないはずです。今回もその噂話を聞いて、興味が湧いたから調べるために来たんですものね」


「…………」


「…少し難しすぎましたね。ではこの話はまた次の機会にでも。今日はもう遅いですからね」


言われて目が自然と部屋にかかっている壁時計に目が行く。
見ればもう深夜の域に達しそうな時間帯だった。いつの間にこんな時間になってたんだろう。
そう言われたからか、はたまた疲れからか、眠気が出てきた。我慢できずあくびを1つしてしまう。


「流石に疲れたでしょう。こんな町に来るだけでも大変ですから。今日はここに泊っていってください」


「えっ。でも失礼じゃ…」


「いえいえ。久しぶりの来客ですし、何より面白い話も聞けました。出来たら明日もここで気の行くまで調べてほしいので」


「そうですか…では、お言葉に甘えて」






























すっかり夜が更けた時間。月の光も窓から差し込んでる私室に、僕は一人寝ていた。
カイリューさんに「客室がないので私の部屋を使ってください」と半ば強引に言われ私室にあるベッドを遣わさせてもらってる。
悪いかったな…とは思いつつも、多分他のところで寝かせてはくれないし、宿屋みたいなのがあるわけでもないから、仕方ないかな。
けど、僕は寝れなかった。寝ようと目を瞑っても一向に眠れる気がしない。さっきはあんなに眠かったのに…。
このまま横になってても寝れる気がしないので、とりあえずカイリューさんの様子でも見てこようかな。
そう思ってベッドから下りて、私室の出口に向かう。部屋はダイニングしかないからそっちで寝てるだろうから。


「カイリューさんいます…あれ?いない?」


ダイニングを覗いてみると、カイリューさんの姿が見当たらない。他にどこか部屋があるわけでもないから、どこかに行ったのかも。
危険だろうけど、外に探しに行ってみないと。
玄関を開けて外に出ると、街灯なんてものはないし、家の光もないから頼りになるのは月明かりだけ。
空を見れば月が真上にある。綺麗な満月だ。視線を落として周りを見れば、森しかない。見える範囲だけだとカイリューの姿は見えない。
離れたところにいるのかな…少しぐらいなら散策してもいいだろう。そう思って森の中を覗いてみる。
かなり暗い。月明かりが所々差し込んでるものの、数歩先ぐらいまでしかはっきりと見えない。一寸先は闇ってこういうものなのかな。
とりあえず…行ってみるかな。一応自分ほのおタイプだし、明かりぐらいは何とかなるだろう。










「…随分この中にいるけど、何か…肌寒い感じがするのは気のせいかな…」


あれからどれくらい経ったかはわからないけど、僕はまだ森の中にいた。時期があっても、こんなに寒くなるかな…。
でも、最初はカイリューさんを探すはずだったのに…僕はいつの間にか、何かに引き込まれていた。
何かとはなんだよ、と言われたら説明は出来ないけど、この森には何かある。そんな感じがしてるんだ。
事実を言えば…途中迷ったりしたけど。それでも探してる最中に引き込まれていったんだ。


「カイリューさんを見つけるのもいいけど、やっぱり探ってみたいな…」


好奇心が僕を駆り立てる。本当はそんなことしてる場合じゃないけど、本能には逆らえないんだ。
開けたらいけないって言われたら開けたくなるのと同じさ。わかるだろ?
それはそうと…やっぱり暗いから危ないな。ちょっとよそ見してたら木の根に足を取られちゃう。
あと気になることが1つ。これも気のせいなのかもしれないけど…音がするんだ。後ろから。
少し前から、葉が擦れる音がしてる。歩いても歩いても、音が離れない。何か…いるの、かな。



「…走ってみようかな…」


足元に注意しながら歩くペースを速くする。それでも音はしっかりとついてくる。
怖くなって軽く走り出す。足を取られないように走るが、後ろもさらに速くなる。
好奇心よりも、恐怖が強くなってくる。何で追ってくるんだ?あれは何なんだ?疑問と同時に逃げなきゃと体が自然に動く。
余裕がない。逃げたい。ただ逃げたい。速く逃げたい。振り返ったら捕まる。止まったら捕まる。何をされるかわかんない。
それ以前に何がいるのかもわからない。

怖い! 怖い!! 怖い!!!


「はぁ…はぁ…いたっ!」


全力で逃げてる最中で、足が木の根に引っ掛かり、そのまま転んでしまった。
怪我はないものの、走り過ぎて足が…。
立ち上がろうとするが先に、ガサガサと音がする。ビクッと体が跳ねて、そのまま後ずさりで逃げようとするも、運悪く木にぶつかる。
どうにも出来ず、ただ音が近づいてくるのを聞いて、ビクビクしてることしか出来ない。
自分では気付いてないけど、涙も出そうになってる。



音が、すぐそこまで来た。
















「……ん?なんだ君か…」


「カ、カイリュー…さん?」


「少し散歩を兼ねてこの辺を見て回ってたんだが、まさか君がいるとは」


よ、よかった…カイリューさんだったのか。逃げる必要なかったんじゃ…待てよ?


「あの…カイリューさん、1つ聞いてもいいですか?」


「ん?何かな?答えられることなら何でも答えるよ」


「さっき…僕のこと、追いかけてきたんですか?」


「追いかけて…どういうことかな?話が見えないんだが」


「僕…さっきまで、何かに追いかけられてたんです。走っても走っても追いかけてきて…必死に逃げて、ここに来たんです。
 そしたらカイリューさんが来てくれたんです。でも…そんなことがあった後に、ここでカイリューさんと会うって…。
 さらに言うと…僕を追いかけたのが…カイリューさん、だったら…どうして、僕を追いかけたのか。それがわからなくて…」


「だから、私がここに来た経緯を知りたい…と?」


「はい…」


カイリューさんだったら逃げる必要は確かになかった。でもそこで生まれる疑問。
『何故追いかけてきた?』
僕が何かした?それなら明日にでも言えば済むし、夜中でも家の中で済む話。なのに、今こうして話してる場所は森の中。
ここまで来る必要は何?僕を追いかけてきた理由は?
考えれば考えるほど疑問が湧き出てくる。けど、そんなことを考えても無駄。
だって…カイリューさんからそれを聞けばすべてわかるから。


「…………」


「カイリューさん…どうして、僕を追いかけたんですか?」


「……1つ、話をしてみないか?君が私の家に来てから、疑問に思ってるであろう話だ」


「話…?それは、どういう…」


「あの本さ。私が君を見つけた時、君が手にしていたあの本に関する話を、今ここでしようと…ね」


少し短めですが、この後の部分は会話が主となるので、一旦区切らせてもらいました

展開の仕方が速かったりして目まぐるしく感じるかもしれませんね、改めて読むと
次の話は最初の時に読んだ本のことについていよいよ語られます。そしてカイリューが取った行動についても

<2011/07/06 22:38 ヴェラル>
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