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お勧めBGM:『おめでとう BGM』






ギラティナが、最後に選んだ場所。
それはアリーナ中央にそびえ立つ、仰向けに倒れ
そうな程の大観覧車だった。


「もうすぐ閉園だから空いてるね」
「あっ、まあ…そうだろうな…」


係員に誘導され、ゴンドラの中に入り込む二匹。半分の高さ
に昇るまで、お互いに押し黙ったままだった。



「それで? 話し合いたい事って?」
「いや…その、なんというか…」


カイオーガに問われ、ギラティナは頭を掻く。
話を切り出そう
としても、喉から言葉が出てこない。




「…そうだ、これ…お前にやる…」
「えっ…?」


ギラティナは異次元空間から…
ではなく、ずっと握り締めていたそれを渡した。
彼と同じく黄金色に輝く、小さな王冠。「おうじゃのしるし」だった。



「た、誕生日….おめでとう…」


八年ぶりに口にしたその言葉、それだけで顔が赤くなる。しかし
頬を明るいピンクに染めていたのは、ギラティナだけではなかった。


「覚えてて…くれたの?」


ーーーー8月6日。
海の化身が生まれ、世に産声を上げたその日。
ギラティナは
祝福の言葉を、狭いゴンドラの中で言い渡した。



「えへへ…ありがとっ♪」
「…ぁ…!!!」

一瞬の隙をつかれ、頬にカイオーガの柔らかい唇が触れる。
何をされたのか判断できず、気がつけば彼は窓から外を眺め
ていた。どうやら数分間に渡って、ぼーっと気絶していたらしい。



「カ、カイオーガ…ッ」

「ん〜なぁに? もう一回してくれって?」

「違う…その、お前は私のこと、どう思ってる…?」

「ど…どうって…」


シンプルながらも難しい質問のようだ。カイオーガは
う〜〜んとしばらく頭を抱え、ポンと手を打って答えた。


「大好き♪」

「・・・・」


ギラティナの何度したかも分からない決心は、ここでようやく
終末を迎えた。この言葉を言うために海を渡り….こっそり練習して…
ずっと閉じ込めていた想いから、彼はとうとう鎖を外した。



「カイオーガ….私は、お前が好きだ」
「…えっ…」


手遊び中だったカイオーガの顔が、何かに駆られたように上を向く。
ギラティナは爆発寸前の思いで、返ってくるはずの答えを待った。






「僕のセリフ…勝手に取らないでよ…」
「えっ…!?」


その意味を理解するのに五秒。
カイオーガが笑顔で抱きついて来るのに五秒。
二匹の唇が重なりあうのに、三秒だった。


「ん……ッ」
「大好きだから…付き合ってくれるよね?」
「あ、ああ…ッ」


そっと口を離せば銀の糸がひく。
お互いにの体はもう、余裕など残されていない。


「カ…カイオー…っむ!」
「今日から僕のこと…エターナルって呼んでね」


「種族」で呼ぼうとしたギラティナの口は、
またしても彼の餌食になった。

そしてそれ以降・・・
ギラティナが「カイオーガ」と呼ぶ日は、死ぬまで訪れなかったとさ。




<2011/08/06 20:31 ロンギヌス>消しゴム
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