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友達以上、それ未満。 − 旧・小説投稿所A

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友達以上、それ未満。
− May be −
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男は食い殺されるというショックで頭の中が真っ白になった。
もちろんカイオーガは殺す気も、SMプレイで洗脳する気もない。
だが男がそれに気づくのは、処刑されて吐き出された頃だろう。


「できる事ならなんでもする….た、食べるのだけは…やめてくれ…」

「やーだね。君を見逃してもいいことないし…何よりつまんないからねぇ♪」


カイオーガの広いヒレに抱かれながら、男は狂ったように
もがく。カイオーガは呆れたように溜め息をつくと、圧倒的な力の差で男の肩までをはむっと咥えた。男は
それでもなお、ギラティナの噛み跡が残っている脚を限界まで暴れさせる。


「はぁ….少し静かにしてくれる!?」

カイオーガが大声で叫んだ。一瞬だけ怯んだように動きが止まっ
たが、数秒ともたずに狂気乱舞を再開する。カイオーガは愛想を
尽かし(元々ないが)、男を咥えている口の隙間から舌をにゅる
にゅると這い出させた。太く長いそれを、男の腰辺りまでぴっちり
隙間なく巻きつける。


ギュッ…ギュッ….むぎゅぅ…

「あ、あぅ…締め…ないで…」


舌特有の柔らかさに締め付けられ、流石に怖がっていた男の顔にもニヤけが生じる。カイオーガはそれをチャンスと見たのか、舌先を男の頬にグイグイと押し込んだ。


「あっれれ〜? できる事ならなんでも……じゃないの?」

「あ…も、もう少し強く…はぅ…」

「……マスターより変態だね♪」


まさに、朝令暮改とはこの事だ。カイオーガの加虐心はさらに
ヒートアップし、男は早くも口内に収まり、舌の上に寝そべる形
となった。ぶ厚い舌と口蓋の間は狭いので、固い肉と柔らかすぎる肉に
ぎゅうぎゅうと押し潰される。


「あっ…ぁぁ…んぶぎゃぁ…!!」

「クスッ…なに今の声。
君面白いけど、急いでるからもう呑み込んでいいかな?」


当然、答えを口にする間もなく、舌袋へと続く穴がグパァと開い
た。男の体は食道よりも窮屈なそこに押し込まれ、グイっと押せば
沈むような肉壁に揉まれながら運ばれていった。衰えきった力を
振り絞って這い上がろうとするが、粘液質な壁に爪を立てるなど、
雲を手で掴むようなものだ。


ブッチゅ…どちゃっ!

「う…ん….ここは…?」


軟らかいチューブのような肉管を抜け、落とされた先は舌袋。
てらてら光るピンク色の舌が、その80mもの長さを収納している。
そして何より・・男の恐怖心を掻き立てたのは、今自分が寝転ば
されている場所だった。


ズププッ…ぷにゅ…どちゅっ…

「う、うわあああっ!!!」


まるで無数の大蛇を踏んづけているような状況に、奇声を
上げて飛び上がる。まあ実際には、肉の天井が低すぎて中腰
までが限界なのだが。


「ぐぅ…狭い….い、入口は…?」


胃袋ならば噴門にあたる、唯一の出入口である穴を探す。だが
そんな大層な時間など、舌は与えてくれなかった。獲物が落ちて
きたのを認識し、太さが巨漢の太もも程もある蛇体をにゅるにゅる
と巻きつける。男は舌肉のプールに引き込まれまいと、舌の別の
部分に手を伸ばした。


ぬるっ…ぐちゃっ…

「あぅ…す、滑る…」


案の定、何の意味も成さない。おまけに舌海の上に寝ている体勢
のため、素早く逃げる事もできない。慌てふためいている間にも、
舌は彼の腰をしっかり締め付けていた。


「えへへ…どう? 変態さん」

舌海に下半身がずぷんと埋まったとき、ケラケラ笑うカイオーガ
の声が、舌袋の中に大きく響いた。まるでマイクで聞いているようだ。


「僕の胃袋でとろとろにしてあげても良いんだけどね、殺す
のは可哀想だからこっちにしたよ。帰り際に出してあげるね?」

「ふっ…ふざける…なぁあっ!!!!」


それ以上の文句は許されなかった。脇の下にまで舌がぐるりと
巻き付き、人間には及ばない力で海の中へと引っ張るのだ。


ぬぶっ…ジュプゥ…!

「ひ、ひぃ…もう…力が….あああっ!!?」


たった二十分程度の抵抗で、男の体力は底を尽きようとして
いた。その力が抜けた隙をつかれ、男は急激に引きずり込ま
れた。もうぷにゅぷにゅと蠢く舌の海からは、細い腕が虚しく
空を掻いているだけだ。


「・・・・ぅぁ・・ぷ・・」

「苦しい? 苦しいよねぇ….吐き出したら警察につき出してあげるよ♪」


舌肉に口を塞がれているのか、くぐもった呻き声が微かに
聞こえる。最後まで助けを求め暴れていた腕も、もう諦め
てぐったりしていた。あと三十秒もすれば、完全に舌海の中
に沈んでしまうだろう。

カイオーガは肉の監獄に閉じ込めたのを確認すると、
満足そうな笑顔でギラティナの方を向いた。


「じゃあ行こっか。ごめんね? 手間暇かけちゃって…」

「い、いや…お前が楽しめるんなら…それで…」

「……ありがと♪」


にひっと歯を見せて笑うその姿は、ギラティナの心を捉えて
離さない。カイオーガはそのまま彼の隣へと移動し、漆黒の
破れたような翼により添った。体と体がまたもや密着し、
顔から火が出る思いのギラティナ。


「お、おい….ちょっと近過ぎるんじゃ…」

「ねぇレックウザ? 今日はボク達のデートなんだ。二人きりにしてくれるよね♪」

「えっ……」


デートに行こうだなんて一回も口に出してない。それなのに
本人は、デートだと思い込んでくれてる。ギラティナは高鳴る
心臓の音が、すぐ横にいる彼に聞こえないかとヒヤヒヤした。


「ええ、もちろん構わないわ」

レックウザには嫉妬どころか、一緒にいたいという願望さえ
感じられない。冷たくそう言い放つと、あっさり緑色の身体を
くねらせながら去っていった。やはり元彼女という関係は、
そういうものなのだろうか・・


「ねぇギラティナ、そろそろアトラクション行こう?」

「ああ…そうだな….」


駄々をこねるカイオーガに手を引っ張られながら、ギラティナ
は遠ざかっていくレックウザの背中に目をやった。カイオーガ
同様、赤いラインがすらりと駆け巡っている。その人目を寄せる
ような彼女からは、直感的にそう簡単に離れられない気がした。




<2011/08/02 21:54 ロンギヌス>消しゴム
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