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エンペラーフェスティバル − 旧・小説投稿所A
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エンペラーフェスティバル
− 終戦 死を呼ぶ酒には要注意 −
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ズガガガガァァァァアアアアアアアンッ!!!!!!


サカキの体から噴出していたもの、それは高濃度のガスだっ
た。ギラティナがそれに気付いたのは、大爆発が起こった後
だった。いや…「起こした」の方が正確だろう。何しろ、
ガスが充満している中で火を吐いたのだ。彼自身も壁を粉々
にするレベルの、凄まじい爆風に吹き飛ばされていた。



「・・・・・」


コンクリの壁にはあちこち穴が開き、ほぼ大破した倉庫。
それでも頑丈な造りのため、一応その形は保っている。ギ
ラティナも傷痕、骨折した肉体に鞭打って浮いており、今
にも力尽きそうだった。



「…耐久力だけはあるようだな。あの爆発に生きていられるとは…」

「・・・・・」

まだ新しい血が、黒い頬を頭からタラ〜ッと滴り落ちる。
貧血を起こした彼の身体は、不気味にガクガク震えていた。
それでも・・倒れない。


「なぜ堪えるのだ? 今ここで息絶えれば…楽に逝けるというのに」

「……ブ、がはあっ!!」

黒っぽい吐血。さらに顔色が悪くなっていく。
コンクリの床に真紅の染みをいくつも作りながら、
ギラティナは重い口を開いた。



「まぼれ…ないがら…」

「…ん?」

「やっと出逢っだ仲間を、護れないがら!!!」


はぁはぁと命を削って繰り返される呼吸。
口に溜まった血を呑み込み、ギラティナは続けた。


「ごんな姿でも…認めでくれる奴がいた!!」
その恩に報いないど…私は…!!」

「…もう結構だ。それ以上は聴くに値しない」

サカキは非情にもメモリを再起動して、ギラティナに最期の
一撃を与えようとしていた。マキシマムドライブを二回喰らっ
て、生き延びられる者はいない。ギラティナは意識を失い、床に
倒れようとしていた。




「「団長ぉ!!! 今の爆発は・・」」

「チッ…」

サカキを呼ぶ、二人のロケット団員の声。ギラティナはサカ
キの意識がそちらに逸れるのを見逃さなかった。残りわず
かな体力を振り絞って、その団員達に襲いかかる。


「なっ…貴様、は離せ…!!」
「サカキ様ぁっ!!」

六本の触手を器用に操り、複雑に絡めて彼らを捕らえる。
サカキが急いで攻撃したが、その時にはもう、ギラティナ
は団員を連れて消え去っていた。残った埃が虚しく、辺り
を飛び回っている。


=============


「ややめろ…!! 俺達をいったいどうす…」

「それを今…考えている所だ」

一瞬のシャドーダイブで、彼は122号倉庫から遠く離れた
ところまで移動していた。触手を振り払おうと躍起になっ
ている団員らを横目に、打開策を練りなおす。



「(…まてよ…奴は気体そのもの…なのか?)」

黄金の槍で突き刺したとき、彼には効果がなかった。
だが彼がメモリを変えたときには、何の問題もなく体当
たりできた。つまりサカキがアトム(ATOM)メモリを
使っている間….物理攻撃は無効ということだ。


「(気体が鍵だな…なにかいい薬でも…)」

薬品庫でもあればいいが、この広大な敷地内でそれを見つ
けるのは不可能だ。ならば手近に持っているもので、解決策
に到達するしかない。そして持ち物と言えば・・・



「お、おい!! 苦しい、緩めてくれ!!」
「この冥獣が…サカキ様に八つ裂きにされちまえ!!」

触手を巻きつけ締め上げている、この団員二人。
残念ながら、ギラティナにレムリアのような洗脳能力はない。
そもそもこんな下級兵士を洗脳して味方につけたところで、
サカキの相手はできないだろう。

しかし暴れ狂う彼らを観察すること十分間・・
ギラティナの頭に、とっておきの秘策が閃いた。



ぽたっ…ジュルリ….

「そうか…この手があったか…」

少し舌舐めずりを見せただけで、団員達はギャーギャー
と喚き散らす。特に暴れようの強い若い兵士を、ギラティ
ナは優先して口に放り投げた。舌の上に着地したのを感じ取る
と、顔色ひとつ変えずに舐め回す。飴玉と同じような扱いをさ
れ、団員はしばらく抵抗を見せていた。だが流石に巨大ポケモン
の舌遣いに降参したのか、ぐったりと大人しくなってしまった。



ゴキュ・・

「ご苦労…お前の命、きっと活用してみせるぞ…」

無力化した団員をぶよぶよした喉肉に押しこみ、柔らかい
肉質が待つ胃袋へと送り込む。
もう一人の団員は、彼の胸あたりを落ちていく膨らみに、
声にならない悲鳴を上げるだけだった。


「嘘だ…ポケモンが人を…人間様を食うだなんて…」

この世界でそんな戯言は通用しない。だいたい人間の方が
偉いと決めたのは、言うまでもなく人間なのだ。この男
に対する嫌悪感を隠しきれないまま、ギラティナは不機嫌
そうに彼を口に入れた。味わう価値がないとみなし、ゴクリ
と喉を鳴らす。



「問題はここからだな….」

別に体力を回復するために喰らった訳じゃない。ギラテ
ィナは胃壁から、特殊効果のある液体を分泌させた。その
まま五分程度、胃壁でパンをこねるように揉み揉み・・
ある液体と唾液をたっぷりと獲物に塗り込む。



そしてーーーー



「ハァアアアッ……よし…完璧だ」

口臭を気にしているのか、触手に自分の息を吐いて臭いを
調べる。そして勝ち誇った表情でうなずくと、意を決して
シャドーダイブをした。
最期の敵に、ある方法で挑むために・・・






ーーーーーーその頃サカキは。

アトムメモリを万全の態勢で装備し、いつでも応戦できる
ような状況を作っていた。まさに「死角は全て取りのぞけた」
的な顔で、ホコリ臭い倉庫をコツコツと歩き回る。


「いつでも戻って来たまえギラティナ君….
さもなくば君の『仲間』とやらを始末しよう….」

今もこのリーグの何処かで、ギラティナの帰りを待っている
者達。そこに彼の遺体を持っていけば、彼らはどんな顔で逆襲
してくるだろうか・・




「むっ….何だ…これは…」

鼻を刺すような臭いが、さりげなく倉庫に漂っていた。
サカキは危険を直感して、メモリでいつでも起爆でき
るよう構える。

「むうっ…これは…ひどい…」

ガスの臭いを塗りつぶす程の、強烈な臭気。
ガスとは違い、生臭いとも、甘ったるいとも言えない。
そう、一番近いもので例えるならば….




「酒…くさい…」

サカキ自身、酒に弱くはない。だがこの強すぎる臭気には、
流石の彼も酔いそうだった。鼻を押さえ、フラフラと木箱の
上に腰を下ろす。しかし無呼吸で耐えるのも、時間の問題だった。


「出てこい…ギラティナ君、君の仕業なのは明白だぞ…!!」

「だろうと思ったよ」

倉庫の闇を切り裂いて、ギラティナは突如姿を現した。彼の
たぷんと太ったお腹に目を付け、サカキはこの臭気の原因を
突きとめた。


「大方…食ったものを胃の中で発酵させたのだろう? でなければこんな臭い…」

「ああ…大正解だ」

口内に充満させたアルコール臭を、ハアァと煙草をふかす
ように吐き続けるギラティナ。倉庫中に広まったその臭い
は、狙いどおりサカキを酔わせた。


「ウー….ヒック! やめろ…これ以上は…」

「…やめない」

ギラティナは今度は酔いつぶれるサカキに忍び寄り、
口を彼の頭にかぶせて臭いを嗅がせた。
あむっと肩まで咥えたその口の端から、酒気を帯びた唾液が
床にこぼれ落ちる。


「ハァ…がふっ!! や、やめろ…やぇろ…」

サカキは無理やり立とうとしたが、ギラティナの顎の力で
床に押さえつけられる。どうせ立ち上がろうとも、千鳥足で
倉庫の出口までたどり着けないはずだ。肩まですっぽり咥え
込む巨口を振り払えず、サカキはいつしか人形のように静か
になっていた。ギラティナの口臭を、ひたすらスースーと
吸い込んでいる。



「……………zzz…」

「もう…動かないよな…」

もし意識があって、口蓋を切りつけられでもしたら、今度
こそギラティナは出血多量で死ぬだろう。だがサカキは….
今日の疲れを癒したいのか熟睡していた。ギラティナは動か
ない彼の肋骨あたりまで、一気に咥えて上を向いた。



ぬぷッ…はグッ…ゴクッ…ズッチュ…

丁寧に、呑み込みやすいように唾液を擦りつける。血のよう
に赤い舌肉で、サカキの四肢を押しつぶして味を絞り出す。
染み出したヒトの味はチューッと唾液もろとも吸い込み、
それが終わると口内には、味の抜き取られた無力なロケッ
ト団長の姿があった。



「これで終わるのか…この闘いは…」

舌先を彼の首にあてがい、ゆっくり喉の方へと引き込む。
ギラティナは獲物を頭から呑み込んでいく、この瞬間が
たまらなく好きだった。特に理由は・・・ないが。



ゴクン….

「・・・・・」

無表情だったが、獲物が喉を通りぬける余韻を楽しむギラ
ティナ。しばらく天井を向いたまま、サカキが胃袋に収まる
のを待っていた。そしてその瞬間を示す、「とぷんっ」と
いう粘着質な音が耳に入る。









「カイオーガ….褒めてくれるかな…」

少し子供じみた願いごとを、思わず呟いてしまった。




<2011/07/28 09:33 ロンギヌス>消しゴム
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