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Wolves Heart 真実の心 − 旧・小説投稿所A

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Wolves Heart 真実の心

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「体調は大丈夫なのか?」
「・・ええ・・なんとか・・」

 ー四年・・あと四年だけ待ってくれ・・ー

トーゴは私にそう言った。
心を鬼にし切れなかった私は結局、彼を吐き出した。
それはもう怒られたものだ。
最後は泣いていたけれど。
トーゴは私専属の狼医になった。非公式だが。
「雪・・綺麗・・」
「お前には及ばないさ・・」
それが世辞だとすぐに分かる・・
私は血液の摂取自体を止めたのだ。
人間で言えば絶食状態。
すっかり痩せ細り、銀毛も艶を失い黒ずんでいる。
ゆっくりではあるが確実に死に向かって私は生きているのだ。
体を起こすことも、動くことすら叶わない。
「今回は少し成分を増やしてみたが・・どうだ?」
彼が私に食事を差し出す。
血液の成分を模した液体に浸した野菜や肉などである。
私は差し出された肉を弱々しく咥え、喰らう。
「っ・・ん・・!?がはっ、げほっ・・」
駄目だった。今回も体が受け付けない。
呑んでもすぐに吐き出してしまう。
「駄目か・・大丈夫か?余計な体力を使わせてしまったな・・」
トーゴが背中をさすり目を伏せる。
「もう・・いいの・・食事の事は考えなくても・・」
「お前だから頑張るんだ・・もう少しだから・・頼む・・頼むから・・死ぬなよ・・」
トーゴはキッチンに向かった。食材の処理をするためだ。
「もう・・いいの・・トーゴ・・私はもう十分生きたの・・・」
鈍重な躯を震える痩せ細った足で持ち上げる。
純白の雪が音もなく静かに積もっている。
「・・っ・・・」
だが、数秒もしないうちに私の躯は音を立てて崩れ落ちてしまう。
血液の摂取もないままよくここまで生きられたものだと自分でも思う。
常に空腹感に苛まれ、トーゴを見るだけで喰いたくなるほどだ。
何一つ残さずに噛み砕いて、喰い殺せる自信がある。
だが、そんな事はできない。
良心と理性で意識の奥底に押し込めるから。
仮にそれが出来なかったとしても私にはもうそんな力も残されていない。
もう、何も喰らうことも、呑むことも出来ない。
だから、トーゴには私の為じゃなく、自分のしたい事をして欲しい。
私がいるから彼はやりたい事が出来ないのだ。
こんな老いぼれに人生を削って欲しくなかった。
もう・・十分に外の景色すら見えない私のために・・
彼は体を酷使している。彼の体は限界だ。
私の部屋に機械を持ち込み昼夜構わず、寝る間も惜しんで血の成分を調べて私の食事を作ろうとしている。
目に隈まで作っても、明らかに疲労でフラフラになっても研究を止めようとはしなかった。
私を人間に例えるなら、幾つもの機械を体に繋がれた可哀想な病人だ。
そんな私の為に・・・もう・・辛かった。
もう短い命の私の為に自分を削る彼が・・
彼の方が可哀想で、可哀想で仕方なくて・・
死にたい・・だけど生きたい。
もう少しだけトーゴといたい。


<2011/05/13 23:52 セイル>消しゴム
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