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【保】ポケモン捕食短編集 − 旧・小説投稿所A

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【保】ポケモン捕食短編集

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『5人の捕食者と1人の傍観者』


有名な実力派の救助隊、FLB。
ランクはまだブロンズながら、高い実力と知名度を誇るハイドロズ。
今回、この2チームが合同で救助を行うこととなった。
これはFLBのリーダー・フーディンによって決められた事だ。

依頼主は、かのキュウコン伝説に登場するキュウコン本人。
FLBとは氷雪の霊峰で面識がある彼が何を依頼してきたのかというと、
薬草を摘むためにとある洞窟の最奥まで潜った彼を地上まで送ってほしいとのことだ。
行きの戦いで疲弊したので、自力で戻る力がないらしい。

仲間を連れていなかったとはいえ、人間をポケモンに変えてしまう程の強い力を持つ
キュウコンが疲弊する程の洞窟だ。一筋縄ではいかないだろう。
そう思い、フーディンはハイドロズにも協力を要請したのだ。

「ここがその洞窟だ。皆、気を引き締めてかかってほしい」
「ワシらハイドロズもいるのだ、大船に乗ったつもりでいろよ!」
「へっ、お前らだけにいいカッコさせるかよ!」

六人は洞窟の中へと入っていった…。


…それから数時間、だいぶ奥まで進んだ。
洞窟は長く、襲いかかってくるポケモンも多かった…のだが。

「…ここに来るまで、一人も強いポケモンが出て来なかったのだが、どう思う?」

フーディンはポツリと呟く。問いかけるような言葉だが、返答は期待していない。
…襲いかかってくるポケモン達は、言っては悪いがどれもこれもLVが低かったのだ。
見た目だけなら強そうな進化形のポケモンも沢山いたのだが、いずれも
念力一発で「やな感じー」とでも言いながら飛んで行きそうな弱さであった。

…間違いない。キュウコンの疲弊というのは、
自分が想像していたような深刻な疲弊ではない。
ただ、長い道のりを戻るのが面倒臭くなったという、それだけなのだろう。
勝手な解釈で他の救助隊まで呼んできて真剣に救助しようとしていた自分に呆れる。
…そしてそれ以上に呆れるのが…

「お前達は一体何をしているんだ!!」

リザードン、バンギラス、カメックス、オーダイル、ラグラージの五人は、
みな満足そうな顔をしながらパンパンに膨らんだ大きなお腹を抱えていた。

「いやだってよぉ、ここのポケモン達ってすげぇ美味い奴ばっかなんだぜ!
 そりゃあ食べずにはいられねぇよ!」

リザードンが笑いながら答える。
そう、彼等は襲いかかってきたポケモンを片っ端から呑み込んでいったのだ。
フーディンが念力でポケモンを吹っ飛ばすと「勿体ない!」と言われるくらい
彼等はここのポケモンの味を気に入っていた。

「そもそも、救助隊である我等がそのように
 多くのポケモンの命を奪うような事をしていいのか!?」
「食物連鎖なのだから仕方あるまい。襲いかかったのは向こうの方だしな。
 …それに美味そうだからな」

バンギラスがさらりと言う。彼は平静を装っているが、
やたら撫で回している大きなお腹と口元についている涎が平静ではないことを物語る。

フーディンも、リザードンとバンギラスが時々ポケモンを食べているのは知っていた。
だが、普段は多くても二匹という程度で、食べない時も多かった。
そのくらいならまぁフーディンも許容できる。
二人とも肉食性の強いポケモンなので、植物だけでは物足りないのだろう。
それが今日は軽く五匹を超える量を無理矢理詰め込んでいる。
ルカリオの優しさと正義感に憧れて救助隊を始めたフーディンにとって、
敵といえど沢山のポケモン達が捕食されるのは勘弁してほしかった。

「ワシもこんなに沢山の美味いポケモンを食べたのは初めてだ!
 礼を言うぞ、フーディン!」
「ありがとな、俺達を呼んでくれて!
 こんなに御馳走になって、感謝しきれないぜ! ゲップ!」
「しかしフーディンさんは捕食者ではないので、
 僕達のように嬉しい思いができないんですよね…。いいお礼はないでしょうか…」

上からカメックス、オーダイル、ラグラージの言葉だ。
正直、フーディンは感謝されても複雑だった。
というかお前達はさっきの言葉を聞いていなかったのか。
自分は大量捕食には反対なんだ。

フーディンは早く最奥に行ってキュウコンと共に引き上げたいと思った。


そして一行は最奥に辿り着いた。
大きな湖があり周囲に草や花が生え、
天井には大穴が開いていて空が見え、日光の差し込む綺麗な場所だった。
…ってちょっと待て。天井に穴があるなら
そこからリザードンに飛んでいってもらえばすぐだったじゃないか。
何故キュウコンは教えてくれなかったんだ。面倒臭かったのか?

「おお、来たなフーディン」

キュウコンが軽いノリで話しかける。やはり傷付いた様子などは全くなく、
それどころか元気そうに見える。疲れたような素振りさえないのだ。

「キュウコン……自力で戻れるならそうしてくれ……」
「めんどい」

その言葉を聞き、正直フーディンはキュウコンを殴り飛ばしたくなったが
ぐっとこらえて救助隊バッジを取り出した。

「…では、これを使って地上へ帰すぞ。これで我々も戻れるな、リザー…」

リザードン達の方を振り向いたフーディンは硬直した。
五人は口から涎を大量に垂らして、キュウコンの方を凝視していたのだ。

「う…美味そう…」

こいつら正気を失っているのか!? フーディンは焦って叫ぶ。

「ま、待て! 彼はこれから救助する相手だぞ!
 そもそもリザードンとバンギラスは面識あるだろう!?」

しかし五人は聞く耳をもたずにキュウコンの方へ突撃した。
大量の涎がこぼれ落ちていく。

「うおおお、美味そうな狐ちゃん、俺の腹の中へおいで!!」
「馬鹿を言うなリザードン、俺の腹の中だ!!」
「この獲物はハイドロズのリーダーであるワシにこそ相応しい!!」
「カメックス、こればかりは譲らねぇぞ! あれは俺のメシだぁ!!」
「貴方達のように乱暴な方には務まりません! 彼は僕が食べます!!」

「「「「「いただきまぁぁぁぁぁぁす!!」」」」」

キュウコンの眼前に、大口を開けた五人が迫る!

「おのれらええ加減にせんかぁぁぁぁぁぁ!!」

…フーディンの怒りを込めたサイコキネシスが直撃し、
五人はそれこそ「やな感じー」と言いそうな勢いで空の彼方へと飛んでいった。
キュウコンは焦りながらフーディンに近付いて言う。

「……なんというか……すまん」
「…頼むから、次からは面倒臭がらず自分で帰ってくれ…」


後日、捕食者五人はフーディンにより部分的に記憶を消され、
洞窟の前には「関係者以外立入禁止」の看板がたてられたという。


<2011/06/16 22:50 Lupus>消しゴム
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