都会の空。珍しく小さな光の空が見える事がある。でも、誰も気付かない。空なんて誰も見ないから。
そんな雲のない空から白く小さなものが降ってきた。
「あれ?雪かな?」
僕の小さな呟きは、本当なら誰にも拾われる事なく落ちるはずだった。
だけど今日は違ったようだ。
「違うよ。それは光の欠片だよ」
後ろから聞こえた声に振り返る。けど、そこにはもう誰もいなかった。いや、居たとしても、顔を知らないんだから気付くはずない。
僕はもう一度空を見上げた。相変わらず空には雲ひとつない。もしかしたら、見えないだけかもしれない。
空から降ってくる光の欠片は、僕の肩に乗り、音もなく消えた。
2008/03/10 著:彼岸刹那